小学館文庫<br> 絞め殺しの樹

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小学館文庫
絞め殺しの樹

  • 著者名:河崎秋子【著】
  • 価格 ¥990(本体¥900)
  • 小学館(2024/04発売)
  • ポイント 9pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784094073492

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内容説明

新・直木賞作家のブレイク作!

 北海道根室で生まれ、新潟で育ったミサエは、両親の顔を知らない。昭和十年、十歳で元屯田兵の吉岡家に引き取られる形で根室に舞い戻ったミサエは、農作業、畜舎の手伝い、家事全般を背負わされボロ雑巾のようにこき使われた。その境遇を見かねた吉岡家出入りの薬売りの紹介で、札幌の薬問屋「仙雲堂」で奉公することに。戦後、ミサエは保健婦となり、再び根室に暮らすようになる。幸せとは言えない結婚生活、早すぎた最愛の家族との別れ。数々の苦難に遭いながら、ひっそりと生を全うしたミサエは幸せだったのか。養子に出された息子の雄介は、ミサエの生きた道のりを辿ろうとする。

「なんで、死んだんですか。母は。癌とはこの間、聞きましたが、どこの癌だったんですか」
 今まで疑問にも思わなかったことが、端的に口をついた。聞いてもどうしようもないことなのに、知りたいという欲が泡のように浮かんでしまった。
「乳癌だったの。発見が遅くて、切除しても間に合わなくてね。ミサエさん、ぎりぎりまで保健婦として仕事して、ぎりぎりまで、普段通りの生活を送りながらあれこれ片付けて、病院に入ってからはすぐ。あの人らしかった」(本文より)

※この作品は単行本版『絞め殺しの樹』として配信されていた作品の文庫本版です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Sam

55
初読みの著者。題名からは島田荘司「暗闇坂の人喰いの木」のようなおどろおどろしい話?などと思ったがそんなはずもなく(人間の悪意や理不尽を余すことなく描いたという意味ではおどろおどろしかったが)、非常に骨太で読み応えのある作品だった。どこまで行っても過酷な運命から逃れられない母と子が描かれるが、カタルシスと再生の予感に溢れた終盤の展開は見事。構成も巧みだと思うし匂い立つような描写がまた素晴らしい。凡百の作家が到底及ばぬ力量の作家であることが本作だけで分かる。(まだ受賞作は未読だが)直木賞も当然か。2024/04/22

カムイ

48
作者の作品ではギリギリと音をたてて歯ぎしりしながら読んだ。登場する人物皆が嫌いだ感情的に共有できずイライラしっぱなしだった、主人公のミサエにすらそう思うが頑張れなんて言葉は逆効果の表現にすら成り果てしまいそうだ。絞め殺しの木か作者の込めた言霊はカムイは確りと受けとりました。ストーリーの中に北海道の方言にそこはちょっとニンマリと[食べらさる]はカムイのところも使う人はいます、標準語だと[いくらでも食べれる]だろうかなぁ2024/12/01

piro

39
親子二代に渡る大河小説。この作品を読むには覚悟が必要でした。それ程に苦しい一冊。冒頭から、幼くして働き手として根室の吉岡家に売られたミサエの境遇に心が痛くなる。しかし河﨑秋子はその程度では容赦しない。第二部の終盤まで、とにかく主人公達は虐げられ、苦難に襲われ、同時に読み手も心を絞め付けられる。まさに『絞め殺しの樹』と言うタイトルの通り、蔓に絞め殺されるかの様な人生が、生々しく語られます。北海道の東の果て・根室という土地に縛られる様に生きる人々。たとえ絞め殺されたとしても、その強さに心打たれます。2024/09/15

remedy

25
「ともぐい」に大きな衝撃を受けたが、本作もテーマは違えど巧みな話運びと端正で重厚な文章が見事だと感じた。 内容は戦前戦後の北海道を生き抜いた女性の辛苦の一代記であるが、その極端ともいえる過酷さに途中で読むのが辛くなった。 ただ冷静に考え、この辛苦は時代によるものというよりは結局の所、主人公(ミサエ)はたまたまクズの一族(吉岡家)の下働きになり、人間のクズ(木田浩司)の嫁になり、最高にヤバイ奴(小山田俊之)の目の敵にされるという不幸の連鎖に見舞われただけでないかと思えてきた。 ラストは希望が見れてよかった。2025/04/03

コーデ21

23
タイトル『絞め殺しの樹』は栄養を奪いながら締め付け、元の木を殺してしまう蔓性の植物なんだそうな? 読めども読めども「もう勘弁してくれ~」と目を覆いたくなるような理不尽の嵐のため、途中で投げ出したくなること度々でした!それでも最終頁まで辿り着いた自分に「エライ」と褒めてあげたい気分😅 真正面から”人間”に迫る河﨑さんの筆力恐るべし~✨ 2025/06/03

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