内容説明
電子版は本文中の写真をすべてカラー写真に差し替えて掲載。
鎖国時代のチベットに日本人として初めて潜入した僧・河口慧海。謎に満ちたその経路をついに解明する!
30年以上にわたり現地を旅し、土地の人々交流し、調査を重ねてきた第一人者が、その集大成として書き下ろしたノンフィクション。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
岡本 正行
76
昔、中学時代、教科書や社会の偉人伝かで河口慧海を知った。仏教について知識も関心もなかったが、チベットという近くて遠い、同じような人種でありながら、様々な風習で異なっている。近くに寄ってみれば、顔つき、体型ともそっくりらしい。一度見って観たかった、車や汽車で通り過ぎるのではなく、著者のように河口慧海と同じような方向、経路でチベットを歩いてみたい。巡礼とか遍路とか、みなそうであろう。厳しい自然の中を人間の力だけで辿る旅行、偉い坊さんと同じような方法でこそ、その体験を共感できるのだと思う。面白い本だった。2024/04/05
Toshi
23
河口慧海の足跡を辿ったルポと言うよりも、サブタイトルにあるとおり、慧海の足跡を30年に亘って辿った著者根深誠氏のヒマラヤ行、慧海研究の集大成的旅エッセイと言うべきか。著者には申し訳ないが、慧海がどのルートを通ってネパールからチベットに入ったのかには私はあまり興味をそそられず、しかし紀行文としては、時折入る自慢話と過激な中国批判が鼻につく以外は、とても面白く読めた。近代化や中国によるチベット支配を契機に、変貌していく地域の生活や文化を憂う根深氏に深く共感を覚える。2025/06/06
Satoshi
12
明治時代に仏教経典を求めてチベットに渡った河口慧海の足跡とインドからチベットへのルートの研究をライフワークとした著者の集大成。高齢にも関わらず、フィールドワークを中心とした著者の熱意には頭が下がる。チベット旅行記を読み、河口慧海の偉業を知っていることが、前提の作品となっている。ネパールからチベットへの紀行だけでなく、中国共産党により文化的侵略を受けている(河口慧海が訪問した時代、チベットは独立国なので、侵略と呼んでもいいかもしれない)チベットの様子が印象的。チベット旅行記を再読したくなった。2024/11/03
chuji
3
久喜市立中央図書館の本。2024年2月初版。書き下ろし。『河口慧海』の人となりが殆んどなく、著者の三十年にわたる旅行記でした。その執念は凄いものでしたが、ラマ僧に扮し中国奥地を旅した西川一三を描いた沢木耕太郎氏の『天路の旅人』のような著作を期待していたので、チョッと残念でした。2024/04/12