内容説明
創作物を通じて祇園祭に託された「権力に抵抗する民衆の祭」イメージは、はたして実態に合うものなのか。創作物の題材である戦国期の祇園祭にスポットを当て、イメージと史実の比較から中世都市祭礼・祇園祭のリアルに迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nagoyan
16
優。紙芝居「祇園祭」に典型的に見られる「祇園祭は「町衆」のもので、権力に対抗関係にある」という観方の真実性を問う。まず、幕府権力は祇園祭の執行に熱心であった事実が示される。そして、祇園祭を幾たびも中止に追いやった主体として叡山の大衆の存在が示される。本社末社の関係から日吉社祭に先んじて祇園祭を行うことに反対する。祇園祭の経済的主体として馬上役、土倉役を担う富豪の存在があるが、これと大衆とは関係が深い。山鉾巡行は神事から離れて下京の町によって担われていく。ただ、どこか隔靴掻痒な議論。2022/10/13
田中峰和
7
2020年、コロナパンデミックによって、祇園祭の山鉾渡御が行われなかったのは、応仁の乱の影響で33年間中止されて以来のこと。疫病や伝染病に対して、この祭りが当時の人々の取れた対抗策であったことを考えれば皮肉ともいえる。本書では戦国時代の民衆が「権力に抵抗する民衆の祭礼」というイメージを形成した経緯を説く。まず祇園祭の「紙芝居」と「映画」を題材に説明する。前者は室町将軍の横暴に対抗する民衆、後者では細川春元への抵抗が描かれる。いずれも戦後の民主主義と左傾化が生んだ作品と思えば納得できるが、現代ではどうか。2022/04/24
たけとり
2
資料を紐解いて、町衆や戦国の頃の祇園祭がじっくりとわかりやすく解説されていて良かった。映画は全然知らなかったんだけど、言われてみると、その映画や元になった資料のような「祇園は町衆の祭り」というイメージを植え付けられていますな…。しかし資料には常に、信ぴょう性の問題がまとわりついてくるのだなぁ…。 2023/08/01
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