内容説明
15年ぶりのクラス会にキツネ面の男が乱入し、散弾銃を発砲した。SATにより射殺された犯人は、なんと恩師だった。幹事の有馬に託されたメッセージは「ごんぎつねの夢を広めてくれ」。次第に見えてくる恩師の過去、名作「ごんぎつね」にまつわる哀しい史実、消えたかつての同級生の秘密……。探索の果て、周到な計画と謎の原稿に隠された真相が明らかになる。切なさと希望に満ちたミステリー。(解説・伊与原新)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
100
はじめての作家さんですが、お気に入りさんの感想が印象に残ったので読んでみました。「ごんぎつね」は小さい時に読んだ覚えがあるのですが明確には覚えていませんでした。この童話を主題に、中学の同窓会で恩師が立てこもり事件を起こし警察に射殺されます。主人公はその理由などを調べていくうちにこの童話には異なる結末が用意されていたのではないかということで調べていきます。すっきりとした結末で読んでいて、北森鴻や連城三紀彦の推理小説を思い出しました。今後もこの小説家の作品を読んでいこうという気になりました。2024/06/08
がらくたどん
54
気になっていた作家さん。「ごんぎつね」とな?初めましての一冊なので「文芸ミステリーなら入りやすいかな」と読み始めまず驚愕。中学卒業から15年目のクラス会にキツネ面の男が乱入し散弾銃を発砲しとる!しかもSATに射殺された犯人は元担任で乱入そのものも自殺劇の可能性が。「ごんぎつねの夢を広めてくれ」と言い遺された有馬にはこの担任の指導で「ごんぎつね」の劇を上演した思い出があった。南吉の生涯と「権狐」が「ごん狐」として『赤い鳥』に掲載された際の逸話を後ろ盾のない若者の渇きと葛藤に重ねて巧み。南吉の苦笑いが浮かぶ。2024/06/17
ムーミン
52
大学時代の卒論テーマは新美南吉でした。自分なりのごんぎつね観も重ねながら、最後まで気持ちが離れることなく読み込まされました。ちなみに私の研究視点からすると、南吉にとって「ごんぎつねの夢」のラストの描き方は作品としてはあり得ないという考えです。でも、南吉自身はそういう終わり方を本当は望んでいたはずです。2024/07/27
優希
50
『ごんぎつね』をベースにしたミステリーでした。『ごんぎつね』は絵本で何度も読んでいますが、その背景はよく知らなかったです。名作にまつわる悲しい過去が刺さりました。謎の原稿に隠された真実にはただ唖然とするばかりです。「ごんぎつねの夢を広めてくれ」。切なさと希望が見えるのが面白かったです。2024/05/19
まこみん
44
「ごんぎつねの夢を広めてくれ」この遺書の言葉の意味を追って話は進んでいく。クラス会に狐の面を付け散弾銃を発砲した男がSATに射殺され、その正体が恩師だった。ごんぎつねの話を紐解く為、作者の新美南吉の短い生涯を辿っていく。ごんぎつねの原稿が雑誌赤い鳥に載ったとき、主宰の鈴木三重吉に三百以上の直しを入れられ、文章は洗練されたが、南吉にとっては納得出来なかったのではないか。あまりにも救いのない終わり方以外に書き直しバージョンがあるのでは。他人に清書を頼んだ転写原稿の存在は。2024/12/12