内容説明
「本をつくり、とどける」ことに真摯に向き合い続けるひとり出版社、夏葉社(なつはしゃ)。従兄の死をきっかけに会社を立ち上げたぼくは、大量生産・大量消費ではないビジネスの在り方を知る。庄野潤三小説撰集を通して出会った家族たち、装丁デザインをお願いした和田誠さん、全国の書店で働く人々。一対一の関係をつないだ先で本は「だれか」の手に届く。その原点と未来を語った、心しみいるエッセイ。(解説・津村記久子)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
小太郎
40
最初は純文学拗らせ人間がしょうがなくて出版社を始める話かなと思って読んでました。作者は勿論そういう気持ちもあったことを正直に語っています。ただ実際に本を作る仕事に打ち込んでいるうちに、自分自身が変わっていく姿が書かれています。その仕事の中での色々な人に出会いそれで自分の本に対する本気度が上がっていく。読んでいて作者がこの仕事に就いて本当に良かったと感じました。根本的な所での作者の本に対する趣味の良さや誠実な気持ちが成功に繋がったんだと思えます。私の好きな作家庄野潤三さんのエピソードも素敵でした。★42024/07/12
新田新一
23
一人で出版社を経営している島田潤一郎さんのエッセイ。2章に分かれており、まず、なぜ出版社を作った経緯が書かれ、次に仕事に対する思いが書かれています。本が好きという熱い想いが伝わってきて、胸が熱くなります。島田さんの仕事は、今の社会の流れに逆行しています。効率や利益よりも信頼と誠実さを重んじたもので、読者一人一人の顔を想像しながら、本が作られます。そうやって出来上がった夏葉社の本は、人の手のぬくもりが感じられるものです。本は人の人生を変え得る力を持っています。その力を信じる島田さんの姿勢に深く共感しました。2024/05/01
Natsuko
20
普段図書館でしか本を読まない自分だが、ふと入ったある町の書店でこの本を見つけ、図書館で読めると分かっているのに買った。最近夏葉社の本を読んで、島田さんの心意気を改めて知ったから買いたくなったのかもしれないが、ちゃんと紙で読みたい、家の本棚に並べたい、たまに読み返したい…そんな気持ちはやっぱりある。 どんなに便利な世の中になっても、本屋さんはなくならないはず。 この本のタイトルが。読み終わってしっくりきた。2024/05/11
海燕
16
本とか本屋について書かれた本を、これまでほとんど読んだことがなかったと思う。著者は15年ほど前に、夏葉社という出版社をひとりで立ち上げる。当初取り扱ったのは、古い本の復刻であったという。それも知る人ぞ知るという類の作品。あえて紙の媒体での出版にこだわり、また顔の見える客のことを考えて本を作る(著者の言い方を借りれば「具体的」な仕事)。安易に商業ベースに乗る仕事をしない。天職なのだろう。タイトルの「古く」は漢字なのに対して「あたらしい」は仮名。表記にこだわりがあるようで、その意図を考えるが分からない。2024/06/14
しばこ
12
一人本屋を立ち上げたきっかけ、求職活動のこと、こだわりを持って仕事をする中での苦労や出会い、そういったことをありのままに綴られている。紹介されている本を読んでみたくなった。2024/05/16
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