利他・ケア・傷の倫理学

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利他・ケア・傷の倫理学

  • 著者名:近内悠太【著】
  • 価格 ¥1,980(本体¥1,800)
  • 晶文社(2024/03発売)
  • ポイント 18pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784794974143

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内容説明

「訂正可能性の哲学」がケアの哲学だったことを、本書を読んで知った。
ケアとは、あらゆる関係のたえざる訂正のことなのだ。
──東浩紀


人と出会い直し、つながりを結び直すために。
「大切にしているもの」をめぐる哲学論考。

「僕たちは、ケア抜きには生きていけなくなった種である」
多様性の時代となり、大切にしているものが一人ひとりズレる社会で、善意を空転させることもなく、人を傷つけることもなく、生きていくにはどうしたらいいのか? 人と出会い直し、歩み直し、関係を結び直すための、利他とは何か、ケアの本質とは何かについての哲学的考察。
進化生物学、ウィトゲンシュタインの「言語ゲーム」、スラヴォイ・ジジェクの哲学、宇沢弘文の社会的費用論、さらには遠藤周作、深沢七郎、サン=テグジュペリ、村上春樹などの文学作品をもとに考察する、書きおろしケア論。『楢山節考』はセルフケアの物語だった!

「大切なものはどこにあるのか? と問えば、その人の心の中あるいは記憶の中という、外部の人間からはアクセスできない「箱」の中に入っている、というのが僕らの常識的描像と言えるでしょう。/ですが、これは本当なのでしょうか?/むしろ、僕らが素朴に抱いている「心という描像」あるいは「心のイメージ」のほうが間違っているという可能性は?/この本では哲学者ウィトゲンシュタインが提示した議論、比喩、アナロジーを援用してその方向性を語っていきます。」(まえがきより)

【目次】
まえがき──独りよがりな善意の空回りという問題
第1章 多様性の時代におけるケアの必然性
第2章 利他とケア
第3章 不合理であるからこそ信じる
第4章 心は隠されている?
第5章 大切なものは「箱の中」には入っていない
第6章 言語ゲームと「だったことになる」という形式
第7章 利他とは、相手を変えようとするのではなく、自分が変わること
第8章 有機体と、傷という運命
終章 新しい劇の始まりを待つ、祈る
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

コットン

76
「与える」について論じた本だそうで、難解で有名なウィトゲンシュタインの哲学「言語ゲーム」を平易な例で説明されている。ケアがケアとして成立をしている時、僕らはケアを意識しない。この例としてフランツ・カフカが行った物語によるケアとして、お人形をなくした少女をカフカが、お人形からの手紙として毎日少女に話し、最後にお人形が結婚するため二度と会えなくなる。としてひとりの子供の小さな葛藤を芸術の技法によって解決したのだった。嘘と言えば嘘だけど鮮やかにケアとなっている!。2025/05/13

ta_chanko

22
他者が大切にしているものを大切にする。「あなたのために、あなたが変わってほしい」は善意の押しつけ。自己変容を伴うのが利他やケアの本質。システムは個別の事例に対処できないからこそ、システムの外へと別の物語をつくり出すことが必要。難しかったが、新たな気づきを得られた。2024/06/17

金城 雅大(きんじょう まさひろ)

21
「未来にはなんらかの答えが得られるはずだ」という楽観精神がなければ、ケア/利他という概念は成り立たない2024/07/30

エジー@中小企業診断士

20
私たちの善意はなぜ空回りするのか。多様性=ひとり一人がそれぞれの物語を生きている。ケアとは他者の大切にしているものを共に大切にする営為全体。利他とは自分の大切にしているものよりも他者の大切にしているものを優先すること。傷とは大切にしているものを大切にされなかった時、大切にできなかった時に起こる心の動きおよびその記憶。他者とは異なる言語ゲームを生きてるため、善意は空転するが言語ゲームを続けることで間違いではなくなる。<新しいもの>はそれ自身の可能性、原因を遡及的に創造する。踊れ跳べ。言語ゲームを書き換えよ。2024/11/07

井の中の蛙

14
ウィトゲンシュタインの言語ゲーム論を中心に、音楽、漫画、文学、哲学等から多彩な例を持ち出して利他・ケア・傷について論じていて面白かった。言葉を持たない乳幼児に対するケアや、自然に対するケア(後者についてはあとがきに今後のの議論のテーマとして挙げられているが、自然の本来性のようなものに帰着しようとしていて、本稿がむしろルールからの逸脱に見る可能性を扱っていたことからすると不自然に感じた)については気になるが、そこでは〈言語〉を〈応答としての知覚情報〉として拡張して考えられるのかもしれないと勝手に妄想した。2025/03/21

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