内容説明
行列に並んで観る絶景も悪くないが、そこで生活する人々の呼吸を聞き、その土地と対話する姿勢に感動を覚えた。--又吉直樹
話題作『ドライブイン探訪』の著者が、各地の「観光地」を巡り、日本の近代の歩んできた足跡をたどる傑作ノンフィクション・エッセイ。旅とは、生活とは、歴史とは、世界とは、生きることとは。
絶景のなかに、何を見るか。
わたしたちの目は、絶景を見慣れている。どんなに美しい景色でも、1時間、2時間と見惚れることは稀で、しばらく眺めたあと、写真を撮って立ち去る場合がほとんどだ。わたしたちは、ちゃんと景色を見つめられているだろうか? 絶景を前に立ち止まり、目を凝らすことで、見えてくる姿がある。じっと耳を澄ますことで、聴こえてくる声がある。そんな偶然の出会いに、「ささやかな未知」が詰まっている。ここではないどこかに、わたしとは違う人生を生きている誰かがいる。そんな誰かを想像することは、世界に触れようとすることであり、それこそが「観光」なのではないかと、僕は思う。(「あとがき」より)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nonpono
63
何か聞いたことがあると思ったらドライブインの本の橋本さんなんですね。妹より年下の1982年生まれとは。「観光とは、ひかりをみると書く」は目から鱗。ぶらりではなく綿密な旅行記ですよ。ストリップ劇場が出てくる道後温泉、廃墟の女王、摩耶観光ホテルツアーの神戸の摩耶山、そしてびっくり、わたしが住む街の横手やきそばの横手、わたしも自転車に乗りたくなったしまなみ街道など、静かなトーンで描かれています。路面列車やフェリーの描写もすてきです。旅したくなりますね。わたしにとって、観光とは?無になれる場所かなと考えたりして。2025/05/27
はっせー
57
旅行好きには合う本になっている。本書は著者の橋本さんが観光地へ行く紀行文である。単なる紀行文ではなく、観光地の歴史やその土地に住む人の歴史を織り混ぜながら話が進んでいく。過去と現在。過去がなければ現在はない。そうまじまじと思わしてくれる話であった。旅行へ行くとき、何を食べようとかどこを観光しようとか考えている時間も楽しいだろう。その時間に土地の歴史を調べるのもありだろう。2024/10/08
ホークス
39
2024年刊。『ドライブイン探訪』で受けた誠実な印象は本書でも同じだった。登別、猪苗代、摩耶山、広島、五島列島の教会、竹富島などで、観光に関わる人たちから丁寧に取材する。場所ごとに条件と歴史は違う。今日に至るまでの努力や挑戦が忘れられていくのは寂しいけど、現実にはどこも昔のままではなく変化してきた。もてなす人も来訪者も、一人一人に違う人生と物語があると著者は痛感する。誰もが尊重されたいと願い、それ故の争いとすり合わせで人の歴史は紡がれてきた。私は本書から、続いてゆくこの営みに対する著者なりのエールを感じた2025/02/26
おかむら
23
「ドライブイン探訪」という今では絶滅危惧の昭和の道路沿いの飲食店を全国訪ね歩くルポで知った著者の新刊。道後温泉、竹富島、猪苗代、羅臼、横手、五島列島…。観光地のチョイスが地味目なとこが好ましい。そして「ぶらり」ではなくちゃんとその土地の来歴などの下調べ十分かつ古くからやってそうな店の人にじっくり聞きだすので、なんとも味わい深い紀行文になってます。この人、なんかいいんだよなあ。2025/04/04
Nobu A
19
橋本倫史著書初読。図書館新刊コーナーに鎮座していた本書。道後温泉に始まり、羅臼や五島列島等、10箇所を紹介。タイトルから軽る目の旅紀行かと思いきや、しっかりした筆致で各土地の歴史を丹念に調べている点に驚き且つ好感が持てると感じた。しかし、読む進めると歴史の方に比重が圧倒的に大きくなり、タイトルから完全に逸脱。感想は微妙だな。地元の人達に話を聞き、各町の歴史に触れるのは興味を唆るが、行きたくなるような観光スポットも押さえないのには複雑な心境。いっそのこと表題を変えたらと思った。残念ながら後半流し読み読了。2024/09/19
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