内容説明
日本人の海外「流出」が注目を集めている。ワーキングホリデーの若者、子育て世代、富裕層、技術者や研究者、リタイア世代。日本をなぜ離れるのか。海外移住にはどんなリスクがあるのか。移住研究の第一人者が、当事者へのインタビューやデータをもとに実態に迫る。自由な環境で実力を発揮する人々から、悪徳業者に騙される若者、帰国したくてもできない離婚者まで、海外で暮らす人々の明暗と日本への影響。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mazda
68
サーキングホリデーで海外に行く人も多いが、従事する仕事で圧倒的に多いのが飲食業で、日本食が圧倒的多いとのこと。語学力の問題で仕事を得ることが難しく、日本食レストランのように、日本人が多い環境で働きたいわけではないが、仕方なくそうしているのが実情のようです。そうなったら、海外にわざわざ行かなくても、日本にいて駅前留学するのがいいのに、と思ってしまうのは私だけでしょうか?節税目的で海外に出ていく富裕層が多いことも注目ですが、少子高齢化の日本では、この流れは益々加速すると思います。2024/09/05
まちゃ
56
日本人の海外移住の歴史や実態、そのメリット、デメリット。日本人の流出から見えてくる日本社会の課題とそれに対する提言。多面的に論じられていて分かりやすかった。移住の理由は、大きく4つ。「自己実現」と「生きやすさ(高い賃金、魅力的な研究環境、市場の拡大、子供の個性尊重、女性の働きやすさ、など)」、「リスク回避(自然災害リスク、紛争リスク、保険や年金の破綻リスク)」、「豊かさの追求(富裕層の税金逃れ、投資)」。日本に住み続けるリスクと移住のリスク。最後は「誰もが住み続けたい日本へ」向けた提言2025/07/27
ossan12345
11
均質性の高い閉鎖的な文化環境や低成長・円安で苦しい国力に見切りをつけて、衰退途上国日本を脱しようとする流れと、一方では日増しに状況が悪くなる経済状況により海外で暮らすことが難しくなり、国内に押しとどめられる流れと、相反する2つの流れがあると読んだ。稼げる高度人材は流出するばかりだろう。かつて高度経済成長期には積極的に海外に飛び出し、お上りさん的に批判されてきた日本が、遂に逆に立場になるという見方もある。インバウンド景気に喜ぶ中で相応のトラブルも多発する、それをチャンスに変えないと先行きは厳しい2024/05/26
電羊齋
11
前半部分では日本人の海外移住のさまざまな動機・要因(プッシュ要因)を取り上げ、それらが日本社会が抱えるさまざま課題を反映していることを指摘する。後半部分では海外移住先の要因(プル要因)、および海外移住につきまとうリスクと影の部分を論じている。その上で、海外への流出の要因となっている課題に向き合い、日本人にとっても外国人にとっても「より住み続けたい日本」を作ること、そして海外移住者とその子孫(ディアスポラ)を活かす戦略を説く。海外移住から見た日本社会論として読める。2024/03/20
ぬらりひょん
10
海外移住の目的は英語習得とお金かと思ったら、本当に様々らしい。豪州やカナダの時給の高さを羨ましいと思っていたが、住宅費や物価の高騰や医療体制を知ると移住するのは相当リスクが高そう。ワーキング・ホリデーは日本の特定技能研修制度の裏返しみたいだし、若い人は要注意かもしれない。要するにどこの国もエッセンシャルワーカーか高度人材、超富裕層以外はお断りな感じ?この本で日本は税金がとても高いことを知った。相続税がない国もたくさんあるらしい。日本で3代相続すると資産がなくなる。2024/06/30