筑摩選書<br> SF少女マンガ全史 ――昭和黄金期を中心に

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筑摩選書
SF少女マンガ全史 ――昭和黄金期を中心に

  • 著者名:長山靖生【著者】
  • 価格 ¥1,980(本体¥1,800)
  • 筑摩書房(2024/03発売)
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  • ISBN:9784480017949

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内容説明

1960年代から少女マンガの時代が始まり、70年代半ばになると優れたSF作品が続出、SF少女マンガ黄金期が到来する。岡田史子、竹宮恵子、萩尾望都、山岸凉子、山田ミネコらが頭角を現し、SF的想像力で少女マンガを大きく変えていった。そこにはどんな創作上の冒険があったのか。70年代半ば~80年代の黄金期を中心に、ファンタジー的作品も含め、揺籃期から現在までのSF少女マンガの歴史を、SF評論の第一人者が語りつくす。読み継がれるべき、おすすめ作品ガイドとしても必読の書。 【目次】はじめに――SF少女マンガ黄金期伝説/第1章 SF少女マンガ概史――分かりやすさと独自な表現のはざまで/1 マンガ表現はどうやって生まれたか/2 少女マンガの揺籃期/3 少女にSFは分からない?/4 SFブームと少女マンガ/5 女性SFは何を描くのか/第2章 挑発する女性状理知結晶体/1 山岸凉子――抑圧と理知の先にあるもの/2 倉多江美――シュールで乾いた宇宙/3 佐藤史生――科学と神秘の背反する魅力/4 水樹和佳――王道SFロマンを求めて/5 「見えない壁」と「見える壁」を超えて/第3章 思考するファンタジー/1 少女マンガSFの詩人・山田ミネコ/2 大島弓子――少女の心象はハラハラと舞い散る/3 共同制作と見せ場主義のエンタメSF・竹宮恵子/4 少女感覚とSFファンタジー/第4章 時を超える普遍を見つめて――萩尾望都の世界/1 SFは自由への目醒めをもたらす/2 萩尾SFの絵画論的・音楽論的宇宙観/3 多様な異世界生命体と性別の揺らぎ/4 危機から目を逸らさず、希望を捨てず/第5章 孤高不滅のマイナーポエットたち/1 岡田史子――その花がどこから来たのか私たちはまだ知らない/2 内田善美――圧倒的画力が創り出すファンタジー世界/3 高野文子――絶対危険神業/あとがき/主要参考文献

目次

はじめに──SF少女マンガ黄金期伝説/第1章 SF少女マンガ概史──分かりやすさと独自な表現のはざまで/1 マンガ表現はどうやって生まれたか/マンガの起源、SFマンガのはじまり/物語マンガ誕生の周辺──アニメーション、大衆少年雑誌/漫符の発明と物語性の進展/マンガのライバル──口絵、少女小説、投稿欄、絵物語/2 少女マンガの揺籃期/戦後少女マンガ草創期──「悲しい物語」の底にあったジェンダー/ラブロマンスへのクッションとしての異性装ロマンス/少女雑誌から少女マンガ誌へ──SF少女マンガをはじめた男たち/戦前から活躍していた上田トシコ/3 少女にSFは分からない?/水野英子も西谷祥子もSFを描いていた/里中満智子と美内すずえ──王道マンガ家もSF好き/エンタメ性が高すぎて──細川智栄子、西谷祥子/戦後世代のSF・幻想指向/4 SFブームと少女マンガ/SF映画の影響?──短編SFじわじわ浸透/SF隆盛への最初の予兆/潮目が変わった七五年、ブーム到来の七七年/『少年/少女SFマンガ競作大全集』と『マンガ奇想天外』/第二世代の活躍、新雑誌の創刊/5 女性SFは何を描くのか/SFファンタジーの豊穣と拡散/SF技法の普遍化と安定化/清水玲子──研ぎ澄まされた画風と怜悧な情熱/二一世紀SF少女マンガ──多様化する主題とフェミニズム/第2章 挑発する女性状理知結晶体/1 山岸凉子──抑圧と理知の先にあるもの/欲望と恐怖の源泉への探究/山岸ホラーにおける「弱い者」の煉獄/抑圧された欲望が生み出す怪物/狂気という「解放」/人類を飲み込む劫火へのまなざし/『妖精王』から『日出処の天子』へ──神話学を超えて/2 倉多江美──シュールで乾いた宇宙/ラブコメになり損ねてしまう醒めた曲者性/アッケラカンとした宇宙、乾き切った生命/3 佐藤史生──科学と神秘の背反する魅力/デビュー以前からの濃密なマンガ交流/初期の傑作「星の丘より」/自由意志の結果に責任を持つということ/『夢みる惑星』──恐竜のいる超古代人類文明世界/『ワン・ゼロ』──理知と超越への憧憬と不安/4 水樹和佳──王道SFロマンを求めて/受容と浸透の融和的世界観/言霊の助くる国ぞま幸くありこそ/5 「見えない壁」と「見える壁」を超えて/清原なつの──ロマンチックな知性/幻想にとらわれているのは誰か──佐々木淳子が問い続けたもの/樹なつみ──人間の暗黒面を見据えて/第3章 思考するファンタジー/1 少女マンガSFの詩人・山田ミネコ/「花の二四年組」の名付け親・山田ミネコ/カトリック・多岐にわたる読書・三日月会/貸本マンガ時代からのSF指向/山田ワールド──最終戦争と異世界ファンタジー/2 大島弓子──少女の心象はハラハラと舞い散る/ありのままの心象/異化される世界/放射能への危機意識──時にコミカルに、あるいはセンチメンタルに/「ロングロングケーキ」は大島版『ヴァルス』か/3 共同制作と見せ場主義のエンタメSF・竹宮恵子/竹宮恵子──初投稿前後のミステリ/「ハートあげます」──心臓移植か脳移植か?/見せ場(シーン)主義と共同制作の成功──『地球へ…』/アニメに向いていた竹宮マンガ/似て非なるマンガ絵とアニメ絵/光瀬龍原作への憧れと齟齬/4 少女感覚とSFファンタジー/坂田靖子──少女マンガを論じた高校生/「やおい」の語源と展開/星・月・ドラゴン──英国ファンタジーと稲垣足穂/前世ブームを巻き起こした日渡早紀──『ぼくの地球を守って』の魅力と危険/のほほんとした表情に隠された強かな理知──川原泉/第4章 時を超える普遍を見つめて──萩尾望都の世界/1 SFは自由への目醒めをもたらす/SF愛読者としての萩尾望都/少女マンガでSFマインドを発揮するための工夫/デビュー以前の幻のSF作品──「闇の中」「星とイモムシ」/デビュー前に完成されていた物語技法と構図マジック──「妖精」「サムが死んでいた」/「爆発会社」と「ポーチで少女が小犬と」──明るい未来と暗い世界/『11人いる!』幻の女性キャラクターとプレ『トーマの心臓』/「あそび玉」──美しい宇宙の孤独な魂/ミュータント──戦後世界の理想と暗部/SFブームに先駆けた『11人いる!』の成功/フロル──性の揺らぎと自己決定権/光瀬龍はなぜ『百億の昼と千億の夜』を萩尾望都に委ねたのか/原作とは異なる独自表現と光瀬の共鳴/2 萩尾SFの絵画論的・音楽論的宇宙観/「左ききのイザン」と「ヘルマロッド殺し」──小説家としての萩尾望都/『スター・レッド』──赤い惑星は人類をどう変えるのか/セイの孤独、宇宙の不穏/宇宙生命進化のふたつの道筋/多元的視覚の持つ絵画論的意味/『銀の三角』──超次元の音楽が響く世界で/宇宙の歪みを修正するということ/『銀の三角』の宇宙の形を想像する/宇宙に音楽が響くということ/時空に挑むタイムループ/3 多様な異世界生命体と性別の揺らぎ/『モザイク・ラセン』──異世界を舞台にしたオカルト・ロマン/一角獣種シリーズ──意思の疎通と愛のカタチ/『ハーバル・ビューティ』──周期的に革命が起きる星で/音楽をめぐる異種生命SF──『海のアリア』/『マージナル』──男だけの地球の衰微と再生/ドタバタで始まりシリアスに至る異色のSF『あぶない丘の家』シリーズ/4 危機から目を逸らさず、希望を捨てず/バルバラの夢はどこにつながっているのか/人肉食と火星生命、記憶の遺伝/「みんないっしょ」の世界には誰もいない/若返り、記憶の遺伝、世界のやり直し/物語構築/世界構造の秘密と秘跡/《ここではない★どこか》から震災後の祈りへ/『AWAY─アウェイ─』──約束のその先に/SFとしての再開『ポーの一族』、地母神が見え隠れする『青のパンドラ』/テラの意味するもの──その神話と史伝/壺に仮託される異世界/第5章 孤高不滅のマイナーポエットたち/1 岡田史子──その花がどこから来たのか私たちはまだ知らない/なぜ米沢嘉博の《戦後マンガ史》三部作に岡田史子がいないのか/なぜ彼女は『COM』を目指したか/岡田史子デビュー秘話/岡田史子と萩尾望都──喫茶店「コボタン」という空間/少年愛の先駆者──岡田史子/ラウラの幻影、花咲く少年/花咲く乙女のようなフラワー・ボーイ/復帰を熱望した萩尾望都、しみじみする江口寿史、私信で批判した竹宮恵子/2 内田善美──圧倒的画力が創り出すファンタジー世界/神話・ノスタルジア・少女マンガ/日常のファンタジーと過ぎ去った時間/夢みるものと、夢みられるもの/3 高野文子──絶対危険神業/機関銃のような言葉と死の軽さ/「田辺のつる」の姿をだれが〝みて〟いるのか/在りし日の戦後日本の「希望」と「健気」/『奥村さんのお茄子』はもうひとつの『20世紀少年』である/あとがき/主要参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

111
少女マンガも結構読んできたので、覚えのある作品が次々出てくる。あの作者のこの作品は当時どんな意味があったのかとか、忘れていた絵やストーリーを思い出した。男性編集者が支配する雑誌でSFを描くのに苦労した事情は今では信じられないが、そんな揺籃期の女性たちの奮闘あればこそ夢と想像力に満ちた作品が生まれたのだ。「女はかくあるべき」との思い込みの壁が最初に撤廃された世界で、萩尾望都が最高の形を完成させたと見るのは疑問なしとしないが、膨大な作品群を読み込んで全貌を理解する補助線を提示した著者力量は見事としか言えない。2024/04/10

阿部義彦

17
著者は私と一つ違い、その少女漫画への入り込み様は降参しました。花の24年組と最初に言ったのは山田ミネコで、少女漫画家に限らず1949年生まれは、創作業界の人が多い。(聖悠紀、吾妻ひでお、諸星大二郎、村上春樹、橋本治、山田正紀、鏡明等)団塊の世代でフラワーチルドレンから『花の』の枕詞が着いたそう。大島弓子に触れて、その作品をK・ディックの主要作に例える比喩には舌を巻きました。坂田靖子、佐藤史生(亡くなってたと始めて知った)そしてマイナーポエットとして、岡田史子、内田善美、高野文子にも言及。モー様には1章を2024/03/30

まんだよつお

8
労作。特にまるまる1章を使っての萩尾望都SF少女マンガの分析は圧巻。「人は孤独でなければ真に自由ではあり得ない。そして真に自立していなければ、真に他者と向き合うこともできない。なれ合いと他者への理解は別なのだし、他人と連帯したとしても、自立した人間は孤独な人間でもあるのだ。この過酷で明快な真実を、萩尾はこれから先、繰り返し描いていくことになる」。これって「連帯を求めて孤立を恐れず」に通じるんじゃない? 2024/04/27

Gen Kato

4
黄金期の少女マンガどっぷり世代。いろいろ思い出しつつ楽しく読みました。まず山岸涼子先生ってセレクトがうれしい。萩尾望都先生は圧巻。大島弓子、竹宮恵子、佐藤史生、坂田靖子、川原泉、名前を挙げるだけで恍惚となります。今思うと花ゆめとかプチフラワーってすごい雑誌でしたね。あと、読んだ記憶がないのに物語をばっちり知っている作品があって、不思議にも不安にもなったり(読んでいるのかなあ)2024/03/21

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