内容説明
1960年代から少女マンガの時代が始まり、70年代半ばになると優れたSF作品が続出、SF少女マンガ黄金期が到来する。岡田史子、竹宮恵子、萩尾望都、山岸凉子、山田ミネコらが頭角を現し、SF的想像力で少女マンガを大きく変えていった。そこにはどんな創作上の冒険があったのか。70年代半ば~80年代の黄金期を中心に、ファンタジー的作品も含め、揺籃期から現在までのSF少女マンガの歴史を、SF評論の第一人者が語りつくす。読み継がれるべき、おすすめ作品ガイドとしても必読の書。 【目次】はじめに――SF少女マンガ黄金期伝説/第1章 SF少女マンガ概史――分かりやすさと独自な表現のはざまで/1 マンガ表現はどうやって生まれたか/2 少女マンガの揺籃期/3 少女にSFは分からない?/4 SFブームと少女マンガ/5 女性SFは何を描くのか/第2章 挑発する女性状理知結晶体/1 山岸凉子――抑圧と理知の先にあるもの/2 倉多江美――シュールで乾いた宇宙/3 佐藤史生――科学と神秘の背反する魅力/4 水樹和佳――王道SFロマンを求めて/5 「見えない壁」と「見える壁」を超えて/第3章 思考するファンタジー/1 少女マンガSFの詩人・山田ミネコ/2 大島弓子――少女の心象はハラハラと舞い散る/3 共同制作と見せ場主義のエンタメSF・竹宮恵子/4 少女感覚とSFファンタジー/第4章 時を超える普遍を見つめて――萩尾望都の世界/1 SFは自由への目醒めをもたらす/2 萩尾SFの絵画論的・音楽論的宇宙観/3 多様な異世界生命体と性別の揺らぎ/4 危機から目を逸らさず、希望を捨てず/第5章 孤高不滅のマイナーポエットたち/1 岡田史子――その花がどこから来たのか私たちはまだ知らない/2 内田善美――圧倒的画力が創り出すファンタジー世界/3 高野文子――絶対危険神業/あとがき/主要参考文献
目次
はじめに──SF少女マンガ黄金期伝説/第1章 SF少女マンガ概史──分かりやすさと独自な表現のはざまで/1 マンガ表現はどうやって生まれたか/マンガの起源、SFマンガのはじまり/物語マンガ誕生の周辺──アニメーション、大衆少年雑誌/漫符の発明と物語性の進展/マンガのライバル──口絵、少女小説、投稿欄、絵物語/2 少女マンガの揺籃期/戦後少女マンガ草創期──「悲しい物語」の底にあったジェンダー/ラブロマンスへのクッションとしての異性装ロマンス/少女雑誌から少女マンガ誌へ──SF少女マンガをはじめた男たち/戦前から活躍していた上田トシコ/3 少女にSFは分からない?/水野英子も西谷祥子もSFを描いていた/里中満智子と美内すずえ──王道マンガ家もSF好き/エンタメ性が高すぎて──細川智栄子、西谷祥子/戦後世代のSF・幻想指向/4 SFブームと少女マンガ/SF映画の影響?──短編SFじわじわ浸透/SF隆盛への最初の予兆/潮目が変わった七五年、ブーム到来の七七年/『少年/少女SFマンガ競作大全集』と『マンガ奇想天外』/第二世代の活躍、新雑誌の創刊/5 女性SFは何を描くのか/SFファンタジーの豊穣と拡散/SF技法の普遍化と安定化/清水玲子──研ぎ澄まされた画風と怜悧な情熱/二一世紀SF少女マンガ──多様化する主題とフェミニズム/第2章 挑発する女性状理知結晶体/1 山岸凉子──抑圧と理知の先にあるもの/欲望と恐怖の源泉への探究/山岸ホラーにおける「弱い者」の煉獄/抑圧された欲望が生み出す怪物/狂気という「解放」/人類を飲み込む劫火へのまなざし/『妖精王』から『日出処の天子』へ──神話学を超えて/2 倉多江美──シュールで乾いた宇宙/ラブコメになり損ねてしまう醒めた曲者性/アッケラカンとした宇宙、乾き切った生命/3 佐藤史生──科学と神秘の背反する魅力/デビュー以前からの濃密なマンガ交流/初期の傑作「星の丘より」/自由意志の結果に責任を持つということ/『夢みる惑星』──恐竜のいる超古代人類文明世界/『ワン・ゼロ』──理知と超越への憧憬と不安/4 水樹和佳──王道SFロマンを求めて/受容と浸透の融和的世界観/言霊の助くる国ぞま幸くありこそ/5 「見えない壁」と「見える壁」を超えて/清原なつの──ロマンチックな知性/幻想にとらわれているのは誰か──佐々木淳子が問い続けたもの/樹なつみ──人間の暗黒面を見据えて/第3章 思考するファンタジー/1 少女マンガSFの詩人・山田ミネコ/「花の二四年組」の名付け親・山田ミネコ/カトリック・多岐にわたる読書・三日月会/貸本マンガ時代からのSF指向/山田ワールド──最終戦争と異世界ファンタジー/2 大島弓子──少女の心象はハラハラと舞い散る/ありのままの心象/異化される世界/放射能への危機意識──時にコミカルに、あるいはセンチメンタルに/「ロングロングケーキ」は大島版『ヴァルス』か/3 共同制作と見せ場主義のエンタメSF・竹宮恵子/竹宮恵子──初投稿前後のミステリ/「ハートあげます」──心臓移植か脳移植か?/見せ場(シーン)主義と共同制作の成功──『地球へ…』/アニメに向いていた竹宮マンガ/似て非なるマンガ絵とアニメ絵/光瀬龍原作への憧れと齟齬/4 少女感覚とSFファンタジー/坂田靖子──少女マンガを論じた高校生/「やおい」の語源と展開/星・月・ドラゴン──英国ファンタジーと稲垣足穂/前世ブームを巻き起こした日渡早紀──『ぼくの地球を守って』の魅力と危険/のほほんとした表情に隠された強かな理知──川原泉/第4章 時を超える普遍を見つめて──萩尾望都の世界/1 SFは自由への目醒めをもたらす/SF愛読者としての萩尾望都/少女マンガでSFマインドを発揮するための工夫/デビュー以前の幻のSF作品──「闇の中」「星とイモムシ」/デビュー前に完成されていた物語技法と構図マジック──「妖精」「サムが死んでいた」/「爆発会社」と「ポーチで少女が小犬と」──明るい未来と暗い世界/『11人いる!』幻の女性キャラクターとプレ『トーマの心臓』/「あそび玉」──美しい宇宙の孤独な魂/ミュータント──戦後世界の理想と暗部/SFブームに先駆けた『11人いる!』の成功/フロル──性の揺らぎと自己決定権/光瀬龍はなぜ『百億の昼と千億の夜』を萩尾望都に委ねたのか/原作とは異なる独自表現と光瀬の共鳴/2 萩尾SFの絵画論的・音楽論的宇宙観/「左ききのイザン」と「ヘルマロッド殺し」──小説家としての萩尾望都/『スター・レッド』──赤い惑星は人類をどう変えるのか/セイの孤独、宇宙の不穏/宇宙生命進化のふたつの道筋/多元的視覚の持つ絵画論的意味/『銀の三角』──超次元の音楽が響く世界で/宇宙の歪みを修正するということ/『銀の三角』の宇宙の形を想像する/宇宙に音楽が響くということ/時空に挑むタイムループ/3 多様な異世界生命体と性別の揺らぎ/『モザイク・ラセン』──異世界を舞台にしたオカルト・ロマン/一角獣種シリーズ──意思の疎通と愛のカタチ/『ハーバル・ビューティ』──周期的に革命が起きる星で/音楽をめぐる異種生命SF──『海のアリア』/『マージナル』──男だけの地球の衰微と再生/ドタバタで始まりシリアスに至る異色のSF『あぶない丘の家』シリーズ/4 危機から目を逸らさず、希望を捨てず/バルバラの夢はどこにつながっているのか/人肉食と火星生命、記憶の遺伝/「みんないっしょ」の世界には誰もいない/若返り、記憶の遺伝、世界のやり直し/物語構築/世界構造の秘密と秘跡/《ここではない★どこか》から震災後の祈りへ/『AWAY─アウェイ─』──約束のその先に/SFとしての再開『ポーの一族』、地母神が見え隠れする『青のパンドラ』/テラの意味するもの──その神話と史伝/壺に仮託される異世界/第5章 孤高不滅のマイナーポエットたち/1 岡田史子──その花がどこから来たのか私たちはまだ知らない/なぜ米沢嘉博の《戦後マンガ史》三部作に岡田史子がいないのか/なぜ彼女は『COM』を目指したか/岡田史子デビュー秘話/岡田史子と萩尾望都──喫茶店「コボタン」という空間/少年愛の先駆者──岡田史子/ラウラの幻影、花咲く少年/花咲く乙女のようなフラワー・ボーイ/復帰を熱望した萩尾望都、しみじみする江口寿史、私信で批判した竹宮恵子/2 内田善美──圧倒的画力が創り出すファンタジー世界/神話・ノスタルジア・少女マンガ/日常のファンタジーと過ぎ去った時間/夢みるものと、夢みられるもの/3 高野文子──絶対危険神業/機関銃のような言葉と死の軽さ/「田辺のつる」の姿をだれが〝みて〟いるのか/在りし日の戦後日本の「希望」と「健気」/『奥村さんのお茄子』はもうひとつの『20世紀少年』である/あとがき/主要参考文献
感想・レビュー
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パトラッシュ
阿部義彦
まんだよつお
Gen Kato