内容説明
1980年、ミシシッピ州。サルベージダイバーのボビーは深海に沈んだ飛行機に潜るが、それ以降、周囲に不穏な影が見え隠れしはじめる。亡き妹への思いを心の奥底に抱えたまま、彼は広大で無情な世界をさまようが……。アメリカ文学の巨匠が描く喪失と受容の物語。『ザ・ロード』の巨匠コーマック・マッカーシー最後の二部作登場
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヘラジカ
44
熱心にコーマック・マッカーシー作品を追ってきた読者なら、これが「白鳥の歌」であることを頭に置かずとも所謂の集大成的な作品であることが意識されるだろう。取り分け特異な兄妹の関係性を見ると、先に邦訳が出版された初期の作品『アウター・ダーク: 外の闇』を思い浮かべずにはいられないはず。筋書きは茫漠としており一読で全貌を掴むのは到底不可能だが、ところどころの対話や描写には最高傑作『ブラッド・メリディアン』を髣髴とさせる気迫を感じた。詳細な感想は『ステラ・マリス』へ。2024/03/17
hikarunoir
8
遺作二部作、兄妹の兄編、舞台は七十~八十年代頭。表題は主役のダイバー仕事と自分も含む数々の去りゆく者の総称か、妹の生々しい妄想と交錯し進む。2024/04/29
ギンテマリン
7
著者の他の作品『アウターダーク』『ブラッドメリディアン』『ノーカントリー〜』では悪が具体的に描かれるので主人公と対比できるが、この作品の悪はどこか抽象的で、主人公が何から逃げているのかわからない。 主人公ボビーのする会話は軽快で、ウィットに富んでいて面白かったが、他のマッカーシー作品とつながるものが、一度読んだだけでは拾えなかった。2024/04/23
shimuratakeda
4
まいったな。よくわかんなくて最高だ。『ステラ・マリス』を読んだらちゃんと感想書くことにする。2024/04/01
funa1g
1
過去作ではホールデン判事やシガーといった形をとっていた運命や悪意は、ここでは政府の形をとって現れる。そして捉えどころがない。探偵が意味を持つところも含めて、ピンチョンのようでもある。しかし、根本的な部分にピンとこないのか、面白くは読んだもののつかみきれない感じが残る。ウェスタンの感じる妹への罪の意識、何度も繰り返される原爆の開発者の罪の意識、どちらもあまり共感できないからだろうか。『ステラ・マリス』も読んだが、あまり感想は変わらず。うーむ。2024/04/23