内容説明
十九世紀末のフランス・パリ。職人ノアは、故人の姿を見ることができる特別な幻燈機の製作を得意としていた。新たな依頼人は、鏡だらけの奇妙な屋敷で暮らすマルグリット。五年前に亡くなった彼女の妹シャルレーヌの過去を読み解くうち、ノアは姉妹の秘密に呑み込まれてゆく……。SFと幻想が融合した世界を紡ぎ続ける著者、待望の第二作品集。/【目次】感傷ファンタスマゴリィ/さよならも言えない/4W/Working With Wounded Women/終景累ヶ辻(しゅうけいかさねがつじ)/ウィッチクラフト≠マレフィキウム/解説=高原英理
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひさか
26
書き下ろし感傷ファンタスマゴリィ、2022年9月東京創元社Genesisこの光が落ちないように刊4W/WokingWithWoundedWomen、2019年10月創元SF文庫時を歩く刊終景累ケ辻、2021年12月紙魚の手帖vol.02(2021年12月)刊ウィッチクラフト≠マレフィキウム、の5つの幻想SF短編集。いずれも意識、無意識、異能、それぞれの認識が何かに作用して起こる現象と社会的な認識の対比と影響が描いてある。アイデアには感心するが展開が難解なわりには着地点に工夫がなく共感できなかった。2024/07/31
あおでん@やさどく管理人
16
「感応グラン=ギニョル」以来の2作目。読み始めはとっつきにくさもあるが、読んでいると少しずつ物語が見えてきて引き込まれる文章が魅力(それでも難しいものもあるが)。前作よりも現実の社会問題を織り込んだ物語が多い印象。2024/10/07
rinakko
16
とてもよかった。まず耽美で残酷かつ甘苦い毒滴る作風が好みで堪らないのだが、人の嗜虐性や暴力、どす黒い憎悪(例えば人々を“魔女狩り”へと駆り立てるものの正体)をきっちり描く筆致にも痺れる。表題作では“幽霊とは思考の産物” という件からの、己が己であることの確かさがぐらぐら揺るがされ、自己確立の脆さを突き付けられる展開が頗る響いた。「4W」はシスターフッドの物語としても読めるしそこが好きでもあり、「ウィッチクラフト≠マレフィキウム」で見据えているものは性別に関係なく誰もが考え続けるべきことなのだろう…とも思う2024/05/17
蒐
15
今一番推しの作家さん。幻想×SF×百合という、読み手を選ぶ作風が私にはとても刺さる。5編からなる短編集であり、どれもバッドエンドではないもののハッピーエンドにはほど遠く、だけど痛みを感じるその余韻が愛おしい。お気に入りは「さよならも言えない」。ファッションが点数化され誰もが自分に最適な装いを身に着けることが良しとされる世界で、衣装文化を管理する側の女性と、独自の「カワイイ」を貫く少女の関係性が描かれている。遅咲きの青春物語かと思いきやラストで心を抉られた。他の作品も全部心に響いたけど、語るには文字数が〜!2024/07/07
花林糖
15
図書館本。幻想・耽美・SF・少し毒のある短篇集5話。表題作「感傷ファンタスマゴリィ」は19世紀仏、故人の姿が見られる幻燈機の制作職人ノアの話。一番好みでとても良かった。「終景累ヶ辻」は前半は良かったけれど後半少しやり過ぎな感じで胸焼けしそうでした。「感傷ファンタスマゴリィ*さよならも言えない*4W/Working With Wounded Women*終景累ヶ辻*ウィッチクラフト≠マレフィキウム」 2024/05/29