内容説明
家族も友達もこの国も、みんな演技だろ――元「天才」子役と「炎上系」俳優。高1男子ふたりが、文化祭で演じた本気の舞台は、戦争の惨劇。芥川賞作家による圧巻の最高到達点。
かれはこの場のぜんぶを呪っている。
それを才能といってもいい。
そして演じるちからに変えている。
「最高に読み応えがあり、かつ唯一無二の印象がある。時代のフロンティアに刺さっている。」――古川日出男(朝日新聞文芸時評)
「間違いなく、作家・町屋良平のキーとなる作品」―山﨑修平(週刊読書人文芸時評)
本心を隠した元「天才」子役・生崎(きざき)と、空気の読めない「炎上系」俳優・笹岡(ささおか)。性格は真逆だが、同じように親を憎み、家族を呪い、そして「家族を大事に」というこの国が許せない。互いの本音を演じあうふたりはどこへ向かうのか――?
「今この国の空気」を生きるすべての人へ問う衝撃作!
「デビューから7年のすべてを投じました」――町屋良平
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
173
町屋 良平は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。 最初面白そうな展開だと思っていたのですが、戦争を絡めたせいで、何とも言えない感じになってしましました。 人は生きていく上で、少なからず演技をしているのかも知れません。 https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309031774/2024/03/25
シナモン
93
「ひとのつくった物語のなかに生きているほうが楽で居やすい。人生はキモい。」「そもそも素直な感情というものが消えうせた。いまではそんなものすべてフィクションで、幻と思う。素直な感情、おもったままの言動なんて。」元天才子役木崎と凡人俳優笹岡の物語。この二人がまだ高校一年生だと思うとやるせない気持ちになる。タイトルに惹かれて手にとってみたけど、難しくてしんどくて苦しい読書だった。文藝2023年秋季号で読了。2024/03/17
ででんでん
63
「しき」が好きで、今までに3冊ほど町屋さんの作品を読んだ。「愛が嫌い」の底に流れるものが、この作品にもつながっていると感じた。ごつごつと折れ曲がり、咀嚼しにくい文章を、何とか噛み砕こうとするのは、嫌いなことではなかったが、大変時間がかかった。ちょっと嫌になりつつも、折れ曲がりの角々から顔を出す、瑞々しさの破片のような感触が癖になり、何とか最後まで読めたという感じ。結論として、私にはやっぱり難解だ。2024/05/20
ヘラジカ
42
前作の『ほんのこども』がかなり難解だったので身構えていたが想像していたよりは読みやすくて安心した。しかし、これもまた複雑で力の籠められた作品だ。演技する身体を描きながら社会の中で生かされる人間存在の本質に迫っている。解釈の難しい場面や文章に頻繁に出会い、久しぶりに硬質にして高質な日本文学を読んだという感じがした。しっかりとした感想を書こうと思ったら骨が折れそうなので、簡単に。2024/04/15
yutaro sata
27
小説なのだけれど、良かった部分に線を引く、どこか名言集のように読んだ。結末が良かったとか悪かったとかそんなこととは全く別の場所で、この書物は重たい。 私は似たような境遇ではないが、似たような不信、浮遊感を生きていた。 しかし私は「生きている」とはもう言わない。ちょっと距離が出来ている。 機能していなかった家庭のことを、「それも良かった」などと振り返ることはしないまでも、まあ、ただの人と人が出会っただけの話だから、ミスもある、くらいに今は思っている。2024/04/29
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