内容説明
まったく新しい高校野球小説が、開幕する。
秋山菜々子は、神奈川で看護師をしながら一人息子の航太郎を育てていた。湘南のシニアリーグで活躍する航太郎には関東一円からスカウトが来ていたが、選び取ったのはとある大阪の新興校だった。声のかからなかった甲子園常連校を倒すことを夢見て。息子とともに、菜々子もまた大阪に拠点を移すことを決意する。不慣れな土地での暮らし、厳しい父母会の掟、激痩せしていく息子。果たしてふたりの夢は叶うのか!?
補欠球児の青春を描いたデビュー作『ひゃくはち』から15年。主人公は選手から母親に変わっても、描かれるのは生きることの屈託と大いなる人生賛歌! かつて誰も読んだことのない著者渾身の高校野球小説が開幕する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
899
早見和真は初読。いかにも本屋大賞候補作という風情。エンターテイメント小説としては一応の水準にあるだろう。高校野球を描いているのだが、焦点があてられているのは、球児ではなく、タイトルからも明らかなように、その母親である。そこが本書のミソ。中学野球の時代は神奈川の有力チームのエースを張った航太郎は、希望学園高校に進学。したがって、主な舞台となるのは羽曳野市。大阪とはいっても、北大阪(淀川右岸)出身の私もよく知らない町である。まして、神奈川からやって来たのなら、そこはもはや異郷である。高校の野球部とそれを⇒2025/07/03
青乃108号
822
ちょっと思ったのとは違う、と思ったのは高校球児を支える父母会の、人間関係や上下関係やルールなど、これはキツイなあと思わざるを得ない描写が、ほぼ後半までメインとなっていた事。昔マンションの管理組合の理事長と町内会の会長は嫌々引き受けた事はあるが、そんなちっぽけなコミュニティでさえ大変だったのに、父母会って恐怖だ。しかしその父母会の描写があってこそ、クライマックスの試合場面が胸熱になってくるのだなあ。母1人息子1人の甲子園。アルプス席の母に完全に感情移入させられて。そして物語は最高の終わり方をみせてくれて。2025/04/18
佐藤(Sato19601027)
747
高校の3年間は応援団員として、選手の一挙手一投足に声援を送っていた。甲子園は遥か彼方であったが、県大会のスタンドも充実した時間だった。この小説で描かれるのは、甲子園を目指す一人息子を支え続けた母親の目線で描かれた3年間だ。子供を見守る親御さんたちや、監督との人間模様に主軸が置かれる中、親の子離れが裏テーマとして物語が進行する。父親を早くに亡くし、母親の手料理を毎日食べて練習に明け暮れていた息子が高校生となり寮に入り、大人になっていく。離れていく子どもに、戸惑う母親の心の機微が琴線に触れる。感動の一気読み!2024/04/24
ミカママ
691
高校球児の父母会、監督のゴニョゴニョ…やけにリアルだなとググったら、著者さんがガチの球児だったそうだ。これまで高校野球関連のフィクションは数あれど、その母子関係に焦点を当てた、その目のつけどころ。球界に蔓延るしがらみや理不尽な扱いを跳ね除けて成長する母子の姿がいい。泣きどころはわたしはみなさんとは違い、航太郎が入寮するシーン…わかるなぁわかるよ、菜々子(笑)高校野球ファンならずとも、すべての息子を持つ母の必読書であり(惜しくも本屋大賞は逃したが)密度の濃い作品であった。2025/07/24
はにこ
636
スポーツものの本は好き。いつもは選手が主人公なことが多いけど、その母親が主人公っていうのが今まで読んだことない視線で良かった。甲子園児の母親ってきっとすごい大変なんだろうね。特に強豪なら父母会とかもすごそう。慣れない土地で母親ひとりで葛藤している姿は子供は居ないけど同年代として応援したくなった。しっかり見せ場もあって、早見さんは何書かせても最高ね。2024/07/09
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