内容説明
登山で頂上まで行く? 途中で降りられる?
「『あきらめる』って言葉、古語ではいい意味だったんですってね。『明らかにする』が語源らしいんです」
近所の川沿いを散歩するのが日課の早乙女雄大。
入院中の愛する人との残り少ない日々の過ごし方や、
ある告白をきっかけに家を出てしまった家族のこと、
あれこれと思い悩みながら歩いていると、親子風の二人組に出会う。
親に見える人は何やら思い詰めた表情で「自分の人生をあきらめたい」と言う…。
ふとしたきっかけで生まれた縁だったが、
やがて雄大は彼らと火星に移住し、「オリンポス山」に登ることを決意する…!?
「あきらめる」ことで自らを「あきらかにしていく」――
火星移住が身近になった、今よりほんの少し先のミライが舞台の新感覚ゆるSF小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ででんでん
73
「あきらめない!!」ではない。「あきらめる」の語源は「明らかにする」こと。火星に移住が可能になった近未来が舞台で、物語に入っていけるかなと思ったが、舞台いかんにかかわらず、ナオコーラさんの直球メッセージが詰まった本…大事にしたい言葉、共感できる言葉がいっぱいだった。「残りの限られた日々を、『私は、私が大好き』と思って、自分を愛して過ごしたい」「育児という仕事には瞬発力が必要で、じっくり考えている暇がないというシーンも多い」「『評価される姿こそが、より自分らしい姿だ』という思いはどこから来るのだろう」2024/06/06
はっせー
55
主人公は早乙女雄大。日課は散歩をすること。そんな彼は小学校時代からの親友兼愛する人である岩井がいる。岩井は病で余命僅か。そんな彼と過ごすために妻に岩井との関係を話してしまう。妻は家を出て向かった先は火星。火星移住が募集されていたからである。そんな妻と話すために火星に向かうことになるが…こんな感じの作品。本書のイメージを伝えると「あきらめるとは明らかにすること」ではないかなって思う😆「あきらめる」は古語ではいい意味で「明らかにする」が語源。だからこそあきらめることって自分自身や感情を明らかにすることかな。2025/06/16
うわじまお
48
少し未来の物語。シニア夫婦の4人家族と同じ町・マンションで暮らすシングルファザー?シングルマザーとその子供たちが火星に移住する。あきらめる=あきらかにする=自分自身を。人は一人で生まれて、一人で死んでいく。結局人は誰しも孤独な存在で、自分という存在をあきらめる=あきらかにするために、人生はある。だし、自分という個性(心や思考)は宇宙よりも大きい存在だから、コントロールすることなどできない。一つの真理だと思えた。ちょっと気が楽になりました。ナオコーラさんに感謝。ちなみに、輝は女性だったのでしょうか?2024/06/14
Natsuko
42
ナオコーラさん10冊目。年々主張の強さに気圧されてか苦手意識が芽生え始めていたが、この一冊で見事に覆った。あらすじにある通り、正真正銘「新感覚SF」。ジェンダーや、未来の親子・夫婦像、ルッキズム、エイジズムを散りばめたストーリーに、火星移住やロボットによる遠隔散歩などSF要素満載、しかしながら心に訴えかけてくるものは「あきらめること」についてのナオコーラさんのメッセージ、まさに新感覚だった。忘れられない読書体験、今年のマイベスト候補棚に並べる。2025/04/19
ぐうぐう
32
あきらめることで見えてくるものがある。「あきらめる」の語源が「あきらかにする」という意味の古語から来ていると山﨑ナオコーラは本作で明かす。「あきらめる」という否定的なニュアンスの言葉が「あきらかにする」というポジティブな意味を含むことを知る時、言葉の見方が変わったように、世界もまた違った風景として見えてくるのかもしれない。ナオコーラの言う多様性とは、たぶんきっと、そのようなことだ。風景はたくさんあったほうが楽しい。それと同じように、考え方も多様なほうが楽しいはずだ。(つづく)2024/04/30
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