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内容説明
ソ連に11年抑留された父、女手一つで子供達を守り育てた母。自身の進学、結婚、子育て、介護、そして大切な人達との別れ――人生の経験すべてが、古典の一言一言に血を通わせていった。最初は苦手だったシェイクスピアのこと、蜷川幸雄らとの交流、一語へのこだわりを巡る役者との交感まですべてを明かす宝物のような一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
115
とてもいい本だ。シェイクスピア37作品全てを翻訳した松岡和子さん。生い立ちや家族、シェイクスピアから逃げ回った学生時代、そして編集者や蜷川幸雄先生らとの出会いを経て完全翻訳を完成する28年間などが、見事に描かれている。台詞の多層性などシェイクスピア劇の深さや、一つ一つの言葉を突き詰める翻訳作業の凄さもよく分かった。大学教授、翻訳・執筆、観劇、劇評など精力的な松岡さんの業績とお人柄にすっかり魅了されるが、この充実した読了感は、執筆者である草生亜紀子さんの絶妙の筆捌きの賜物でもある。素晴らしい評伝だと思う。2024/08/15
たまきら
40
お仕事の話というよりは、彼女の人生を追った内容の中にシェイクスピアが登場する…といった内容です。長くソ連に抑留された父のエピソードが、彼女が学生運動が盛んだった東大で運動に興味を持てなかった理由の一つであることに、「そりゃそうだよなあ」としみじみ思いました。シェイクスピアのエピソードではハムレットの有名な「耳に毒を流し込む」セリフがearsとなっていること、誰も明確な答えを出せなかったこと、後日答えが見つかったこと…が面白かった!うんうん、好みですこういう追及。2024/11/11
貧家ピー
9
今年読んだ本の中で題名No.1と言える作品。だが内容もとても面白かった。翻訳家 松岡和子がシェイクスピア新訳集を出版するまで半生を記した。ソ連に抑留された父の帰国までを描いた第1章が、ここだけで1冊の中身がある。大学 英文科の「シェイ研(シェイクスピア研究会)」から、東大 大学院で読みの深さにおののきシェイクスピアか「逃走」したが、縁があったのだろう。シェイクスピアが伝えようとした内容を日本語で伝えようと考えつくす姿勢がにじみ出ていた。2024/09/03
タンタン
7
面白い!波瀾万丈の人生。朝ドラになりそう。松岡訳のシェイクスピアをぜひ読みたい。2024/10/20
ihatov1001
5
シェイクスピア翻訳家の松岡和子さんの生い立ちから、すべての戯作を訳し終えた現在までが綴られた個人史です。まず幼少期からしてドラマチックで、大陸で終戦を迎え母と妹弟とともに命からがら帰国をされています。そして演劇と語学に熱中した学生時代にシェイクスピアに出会います。シェイクスピアの巨大さから何度も遠ざけてはまた出会いを繰り返し、最終的に全戯作を翻訳する決意に至るまでの過程を非常に興味深く読みました。そして訳し終えた現在も追及の手を緩めず、訳に修正を加え続けています。非常に面白かったです。2024/08/04