内容説明
老人介護施設のマドンナ・キヌ子は、いまだ枯れずに「女」を振りまいている。夫とのセックスレスに悩む看護師のミサは、介助しながらその言動を複雑な思いで見ているが……。今の大人の女性たちが抱える「ままならなさ」を真っ向から、時にユーモアも交えて描いた「女による女のためのR-18文学賞」大賞作家デビュー作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
489
いきなり介護施設のキヌ子さん・夜這いの話から始まる連作短編集。老いも若きもそれこそ色んな世代を生きる女性の生と性。思春期と呼ばれる時期から灰になるまで、ありそでなさそな話から、いやぁソレはないっしょ(女性風俗で勘違い女)まで。まったく女ってのは面倒な生き物だね。ラストはやっぱりキヌ子さん。その緩やかな繋がりも見事。R18文学賞、しばらく性に囚われない作品続いていたが、今作は原点に帰ってくれてありがとう、と言いたい。日本の文学賞の中で一番信用しとるよ(パイプを吹かして謎に上から)(笑)2025/08/14
starbro
166
女による女のためのR-18文学賞受賞作と言うことで、読みました。連作短編集、おススメは、受賞作『赤い星々は沈まない』&『肉桂のあと味』です。しかしLGBTQの時代に、この賞のタイトルは、いかがなものかと思います。https://www.shinchosha.co.jp/book/359611/2024/08/11
おしゃべりメガネ
100
いい意味でそんなに【R18文学賞】してない作品でした。主人公の女性達はほとんどがまあまあいい年齢になっており、表題作の「キヌ子」さんにおいては80近い方になります。年齢、年代はそれぞれ違えどカラダの奥に潜む「欲」を正面から綴っています。帯にある'歳を重ねても体の奥で灯る底知れぬ疼き'がなんともセクシーですよね。円熟期を迎えつつも、決して諦めてはならない「性」のスタイルにどこかホロリときてしまいます。登場人物の大半が女性達なので、女性読者さんにはぜひ読んでいただきたい作品です。今後も楽しみな作家さんです。2024/08/07
fwhd8325
78
5編からなる、女性の生々しさ。生々しさという表現が間違っていないと思います。面白いです。表題作と「肉桂のあと味」が好きです。「肉桂のあと味」は、泣けます。その後が読みたいと思いました。これも女性じゃなければかけないんだろうな。2025/01/31
Ikutan
77
『女による女のためのR-18文学賞』大賞受賞作品を含む五つの短編。老人介護施設で夜這いを繰り返すキヌ子さん。過剰に関わってくる義母との距離に悩む水織さん。若い男性セラピストに夢中になる還暦間近の弥衣子さん。早く大人の経験をしたい14歳のミクちゃん。10年以上、夫とセックスレスのミサさん。そのミサさんの義姉で男性経験のない明日香さん。老いも若きも女という性に翻弄される人たち。逞しくなったそんな女性の様々な思いをストレートに描いた作品。月吹さん、丁寧な描写でこれからが楽しみ。ゆるく人物が繋がっているのも好み。2024/09/29