ちくま新書<br> 労働法はフリーランスを守れるか ――これからの雇用社会を考える

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ちくま新書
労働法はフリーランスを守れるか ――これからの雇用社会を考える

  • 著者名:橋本陽子【著者】
  • 価格 ¥935(本体¥850)
  • 筑摩書房(2024/03発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480076120

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内容説明

アプリで仕事を請け負い、ウーバーやアマゾンの配達員として働くギグワーカーたち。時間にとらわれず、働きたいときに働くのは、自由に見える。しかし労働法によって保護されない個人事業主には、労災保険が適用されないばかりか、最低賃金や長時間労働の規制も、失業時の補償もない。その勤務実態はときに苛酷で、危険も伴う。労働法は誰のための法なのか。欧米各国の動向も視野に、フリーランスの「労働者性」を問いなおし、多様な働き方を包摂するこれからの雇用社会を考える。

目次

はじめに/第一章 新しい働き方のどこが問題か──フリーランス・ギグワーカーの実態/フリーランス・ギグワーカーとは/何が問題か/フリーランスは増えているのか/フリーランスの就労の実態/自営業者に適用される労働法上の規制/労災保険の特別加入制度/下請代金支払遅延等防止法(下請法)/下請法の内容/対象となる下請取引/フリーランスガイドライン/継続的契約の解消に関する法理/「フリーランス新法」/重層的ではあるが、断片的な保護/第二章 労働法とは何か──成り立ちと考え方/歴史から見る労働法/公法的規制と私法的規制/公法と私法の中間にある労働法/雇用・請負・委任の区別/労働契約のドイツ民法典における位置づけ/労働の従属性/人的従属性と経済的従属性/従属労働は時代遅れか/対等性の欠如の補償/労働法の展開過程/戦後の労働立法/高度経済成長と労働法の発展/経済のサービス化と男女雇用平等の進展/グローバル化と規制緩和/紛争解決制度の整備/正規・非正規の格差の是正と「働き方改革」/メンバーシップ型雇用を支えてきた労働法/第三章 労働者性と使用者性──「労働者」「使用者」とは誰か/「労働者性」とは何か/労基法(労契法)上の労働者性/裁判所による労働者性の判断方法/労組法上の労働者性/コンビニオーナーの労組法上の労働者性/ウーバーイーツの配達員の労組法上の労働者性/雇用契約法理の適用対象者/「使用者性」とは何か/黙示の労働契約/法人格否認の法理/違法派遣の場合の労働契約の申込みみなし義務/アマゾンの宅配便運転手/労組法上の使用者性/ベルコ事件/「労働法の鍵」である労働者概念/第四章 どのような法制度が必要か──EUやドイツの動向から/ヨーロッパの動向からみる今後の労働法/社会的市場経済とドイツの労働法/一九八〇年代以降の規制緩和の動き/コラム ドイツの有期労働契約の規制/「偽装自営業者」問題/EU(EC)の設立と発展/EU労働法の発展/ソーシャル・ヨーロッパ/EU司法裁判所の役割/フレキシキュリティと「ハルツ改革」/コラム ドイツの労働者派遣の法規制/EUの東方拡大とユーロ危機/「欧州社会権の柱」/EU法上の労働者概念/二〇一九年の「労働条件指令」/第五章 「労働者性」を拡大する/デジタル化とギグワーク/アメリカのABCテスト/フランス/イタリア/スペイン/イギリス/ドイツ/二〇二一年一二月のEUプラットフォーム労働指令案/プラットフォーム就労者と労働協約/欧米の動向のまとめ/「第三カテゴリー」の有用性/コラム ゼロ時間契約とシフト制/偽装自営業と社会保険・税法上の問題/ドイツにおける社会保険上の「就業」/社会保険への加入義務を負わない「僅少な就業」/ドイツにおける「闇労働」の規制/コラム 食肉産業における請負・派遣の利用の禁止について/社会保険料不払罪(刑法典二六六a条)/税関による「闇労働」の監督/摘発事例の概要/労働者性の拡張と「闇労働」の取締り/第六章 これからの雇用社会/「新しい資本主義」/リ・スキリングの支援/教育訓練は労働者の義務なのか/ジョブ型雇用への移行/成長分野への労働移動の円滑化/格差是正/「フリーランス新法」/特定受託事業者(特定受託業務従事者)は労働者になりうるのか/今後の雇用社会におけるフリーランスの位置づけ/労働者性の再検討/重視すべきでない判断要素/労働者性をどう判断するか/安衛法の個人事業主への適用拡大/安衛法の省令改正および検討会報告書/おわりに──最低基準の遵守のエンフォースメントの重要性/コラム ビジネスと人権/あとがき/主な労働立法の制定・改正年表/参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

おたま

37
ウーバーイーツの配達員は、実はウーバーの正規労働者ではない。ウーバーの請負を受けたフリーランス、つまり形式的には個人事業者だ。その彼らをはたして現在の労働法で守ることはできるのか?現在、労災認定の決定が出されて、労働者と認められつつある。つまり労基法上の労働者と認められつつある。こうした新しい働き方を巡って書かれたのが本書。これは緊急に解決が求められていることであり、その点では大変タイムリーな本だ。がしかし、著者の専門がドイツの労働法であるためか、EUやドイツでの取り組みについての記述が多い。2024/03/29

よっち

30
アプリで仕事を請け負い配達員として働くギグワーカーたち。欧米各国の動向も踏まえながら個人事業主の「労働者性」を問いなおし、これからの雇用社会を考える一冊。働きたい時に働くのは一見自由に見えるが、労働法によって保護されない個人事業主には、労災保険が適用されないばかりか、最低賃金や長時間労働の規制も失業時の補償もない。個人事業主に労働法は何ができるのか、その歴史的経緯や欧州の状況も比較しながら考える内容になっていて、年内に施行されるフリーランス新法の存在が少しでもその改善に繋がることを願わずにはいられません。2024/04/02

takao

4
ふむ2024/04/25

お抹茶

3
EU,特にドイツの労働法の紹介が詳しい。最高裁では,フリーランスに労働法上の保護を及ぼすための労基法上の労働者性を容易に認めていない。ドイツには社会保険料不払罪があり,適用例も多い。フリーランス新法における労働法上の規制は保護の内容と比べるとかなり限定的。専門書や論文のスタイルとは異なるものの,ある程度法律学や労働法の考え方の仕組みがわかっていないと読み進めにくい。EUの事例はフリーランスの労働者性を俯瞰するにはよいが,日本の問題点の現実を深めても良かったか。2024/04/13

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