内容説明
EU離脱、コロナ禍、エリザベス女王逝去。混迷する「五年一昔」の記録
ポスト・ブレグジットの英国もどうなるかわからないが、ポスト・エリザベス女王の英国も同じくらい不透明ーーそう記してから3年。EU離脱、女王逝去を経た「今」を伝える時評を文庫化に際し数多く収録。多様性とともに分断が進み、転換点を迎えつつある英国の姿が日本にも重なる、「地べたの社会学」決定版!
果たしてこれでいいのか、と誰もが思っている。
ではどうすればいいのか、と共に思考する一冊。
武田砂鉄(ライター)
英国の地べたから世界を見つめる傑作時評集、増補決定版!
「何かが壊れている」とみんな思っている。
この国が「ブロークン」の元凶に手をつける方向に動き出すとすれば、2024年はブリテンの修復が始まる年になるかもしれない。
英国だけでなく、世界が「ブロークン」の状態から抜け出すために、この記録が何らかのヒントになればと願っている。(本書より)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
読特
39
単行本の出版が2020年。3年分のエッセイが追加された文庫本。パンデミックはしばし継続し、脱却した。ロシアがウクライナに侵攻、エリザベス女王が逝去された。ボリスジョンソンは退任し、短命のトラスを経由し、スナクが政権を握る。財政再建の表明で支持を失う保守党。政権交代で積極財政転換を期待したいが、労働党も緊縮に傾いている。日常生活を麻痺しかねないキーワーカーのストライキが支持されるほど、壊れてしまっている英国。それでも、GDPはプラス成長。我が国を振り返ると…。ブロークンできる方がまだましなのかもしれない。2024/04/29
踊る猫
30
彼女はもちろん音楽や映画、文学や政治といった領域の話題を果敢に語る。だが、それらに(言い古された指摘だが)スペシャリストとしてガチガチに束縛されることはなく、縦横無尽に彼女の人生哲学も駆使して論理を練り上げる。ゆえにどのコラムも彼女は抽象論を弁ずるのではなく、身近なスタンスで世界を見つめていることをうかがわせる。これは実にポップだ、と思った。ぼくはもう現在ポップとされているアートにはついていけていないのだけれど、彼女はたしかに「いま・ここ」を、絶望することなく生きようとたくましくしなやかに書き続けていると2024/03/31
Akki
16
資本主義の終焉が近いと予測する人が増えてきたように思う。ただ、何を持って終焉に至るのかはよく分からない。富める者が自分の金を手放すはずはなく、そのためには今のシステムを壊さない方策が次々生まれるはずだ。まして今はAI時代。金持ちの専門家が大きな存在感を示し、政治的な力をも持ち始めている状況を見れば、資本主義の強力な毒性を体感しながらも、社会は彼らを切り捨てられないだろう。国民性の違いは多少あるとしても、英国の状況が対岸の火事でないことは明白だ。2024/03/20
スプリント
14
フランクな文体なのでさらっと読めて内容も理解しやすい。 2024/08/18
ゆうすけ
14
久しぶりに著者の本を読んだ。英国はかなり厳しい状況。政治も経済も。日本とはまた違った次元で。コロナ対策とか上手くいっている印象でしたが。数年前に読んだ著作だと、とはいえ良いところもあってそれにひきかえ日本は、、という展開が多かった印象だけど本作は中々絶望感が満載。普通日本でメディア発信する英国に関係がある人は有名大学への留学経験があったりと、基本的に上流階級に属する人だと思います。やはり庶民というか、「普通」の人の声って中々届かないのですね。2024/03/31