内容説明
原田マハ3年ぶり長編アート小説がついに単行本に!
「ワぁ、ゴッホになるッ!」
1924年、画家への憧れを胸に裸一貫で青森から上京した棟方志功。
しかし、絵を教えてくれる師もおらず、画材を買うお金もなく、弱視のせいでモデルの身体の線を捉えられない棟方は、展覧会に出品するも落選し続ける日々。
そんな彼が辿り着いたのが木版画だった。彼の「板画」は革命の引き金となり、世界を変えていくーー。
墨を磨り支え続けた妻チヤの目線から、日本が誇るアーティスト棟方志功を描く。
感涙のアート小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鉄之助
284
面白くて面白くて、一気に読み終えた。まず、津軽弁を文字にした時の再現率が完璧!「ったぐ おメは、なんでいぢいぢそったらに面白(おもへ)んだよ」、(まったくお前は!なんでそんなに面白いんだよ)ネイティブ津軽人が聞いてもそん色なし。棟方志功とその夫人チヤの夫婦漫才を見ているような筋立てで、チヤさんがいなかったら「世界のムナカタ」も存在していないだろうと、実感できた。そして装丁が良い。タイトルも「原田マハ」の文字も、志功の板画作品にあった文字を切り張りして作ったという。このこだわり”志功愛”が、この一冊の魅力。2024/04/01
starbro
192
原田 マハは、新作をコンスタントに読んでいる作家です。 棟方志功は、知っていますが、その物語は初めてです。棟方志功夫妻の愛の物語でした。ゴッホに憧れて世界のMUNAKATになった棟方志功は、大谷翔平に通ずるものがあります。 棟方志功の息子は、元祖キラキラネーム「巴里爾」でした。 https://www.gentosha.co.jp/s/bansaku/2024/04/27
いつでも母さん
169
『世界のムナカタ、ここに誕生。』マハさんが描くアート小説。棟方志功と妻・チヤの夫婦愛。この妻なくて・・を体感する。芸術家の孤独とか業とかではなくて、地に足のついたと言うか・・ひと肌の温もりを感じるじっくりと染み入るような感じが心地よかった。「版画こそが、あの人なのだ」妻も天晴れ。「ワぁの命にも等しいもんは板木では、ね。ーおメだ」天晴れ棟方。お薦めの愛の物語。2024/04/04
hiace9000
158
ミステリー要素を絡めた芸術家へのアプローチというマハ・アート小説にしばしば見られる手法を取らず、まさに棟方志功の純粋な生き様さながら、真っ直ぐに彼の半生を描いた今作。生涯で最も美しく板上に咲かせた花、妻チヤ。極貧のなかで苦楽を共にし支え続けた彼女の曇りなき目線で描く棟方だからこそ、そこにミステリーも謎もあろうはずがない。不器用で一途で情熱的で家族思いだった人間芸術家・世界のムナカタの実像だけがそこにある。チヤが毎夜深々と続けた墨摺りは彼女の静かなる祈り。無尽の愛と縁に支えられた棟方「板画」の世界、ここに。2024/04/12
bunmei
137
日本が誇るパッションの版画家・棟方志功を描いたマハ作品。棟方志功と言えば、モジャモジャ頭で分厚い眼鏡をかけて、版木に覆いかぶさるように一心不乱に削る創作中の映像は、芸術家としての生き様を映し出したシーンとして非常に印象的。そんな棟方志功の半生を、彼の最高の理解者であり、伴侶でもある妻チエの視線で描ききった本作。ゴッホに憧れ、身心も命までも版画となってしまう事を願い、只々純粋に版画に全てを注ぎ込んできた志功。その一方で、必死に一家を支えてきたチエの内助の功と志功への愛情が染み渡ってくるアート小説。 2024/04/01