内容説明
「聞いた音がどのように私たちを形作るのかについての、 最も美しく、刺激的で、啓発的な本のひとつ。永遠に読んでいたかった」
――メアリアン・ウルフ(『プルーストとイカ――読書は脳をどのように変えるのか?』著者)
言葉、音楽、都市の騒音、大自然の静寂、愛する人の声。聴覚は常にオンになっていて、私たちは音から逃げることはできない。人はみな生まれた時から、音と意味を結びつける経験を幾度となく重ね、音と脳の協調関係――独自の《サウンドマインド》――を磨き上げている。
言語障害、自閉症、難聴、バイリンガル、加齢や脳震盪、音楽療法……聞くことは、感じ、考え、動くことにどう影響するのだろうか? 音の持つ力と可能性を説く、聴覚神経科学のトップサイエンティストの集大成。ルネ・フレミング、ミッキー・ハート、ザキール・フセインら世界的ミュージシャンも絶賛!
2022年 米国出版協会 専門学術出版賞(生物医学)、ノーチラス・ブック・アワード金賞(科学・宇宙)受賞作。
《トピック》
音楽家の脳/音のリズムと脳のリズム/リズムと社会化/音と「読む脳」/自閉症/言語障害に性差はあるか?/音楽療法/バイリンガルの脳/貧困と言語環境/鳥のさえずりは言語か、音楽か?/「安全な」騒音の影響/聴覚の老化を食い止める/スポーツにおける脳震盪 ほか
目次
序章 サウンドマインド――音と脳の協調関係
過小評価されている音と聴力/音は私たちを世界と結びつける/「聞く脳」に含まれる感覚・運動・思考・感情/「聞く脳」は経験によって形作られる/境界はない/サウンドマインド
第Ⅰ部 音の働き
第1章 頭の外の信号
音を構成する要素/ピッチ/音色/時間(タイミング)/その他の音要素/頭の外と中の信号(シグナル)を用いて音要素の処理を見る
第2章 頭の中の信号
頭の外の要素、中の要素/上りと下り/上りの旅――求心性/下りの旅――遠心性
第3章 学習――頭の外の信号が頭の中の信号に変わるとき
地図/フクロウの話/「聞く脳」における学習/私たちは注意を払うものを学習する/私たちは関心があるものを学ぶ/意識的な処理から無意識的な処理へ
第4章 聴く脳――探究
頭の中の信号を頭の外から測定する/音の変化に気づく――ステップ1/音の要素を処理する――ステップ2/聴く脳を聴く――芸術と科学/経験は音の処理を変える/聴覚処理のスナップ写真と中心地(ハブ)
第Ⅱ部 音は私たちを形作る
第5章 音楽はジャックポット――感覚・思考・運動・感情の大当たり
音楽家の脳/音楽は、感覚・運動・感情・思考の脳とかかわる/音楽を医療に取り入れる
第6章 頭の中のリズム、頭の外のリズム
速いリズム、遅いリズム/リズムは私たちの中にある/リズム知能/脳のリズム/リズムは言語にも聴くことにもかかわる/リズムと発声学習/リズムと動き/リズムと社会化/健康のためのリズム/章の結びに
第7章 言語のルーツは音
音と「読む脳」/オールマイティな「da」/サウンドマインドによって未来の読む能力を予測する/クリアな音を耳に届ける/言葉の 奪/自閉症/言語に困難を抱える脳の利点/言語障害に性差はあるか/音で言語能力を向上させる
第8章 音楽と言語の協調関係
音楽と言語とのかかわり/読字と音楽家の脳/聴覚の情景分析――騒音下での話の聞き取りと音楽家の脳/音楽による神経教育学/自然な場面における音楽/音楽家になるのか、音楽家に生まれつくのか?/音楽教育がもたらすもの/教育と音楽/サウンドマインドの観点から見た音楽教育
第9章 バイリンガル脳
サウンドマインドはどのように言語に同調するのか/バイリンガルの脳≠モノリンガルの脳の二つ分/悪い面――バイリンガルは何を手放すのか?/良い面――バイリンガルにはどのような利点があるか?
第10章 鳥の歌
歌う鳥、歌わない鳥/鳥はどのようにして歌うのか?/鳥の歌は「言語」か?/鳥の歌は「音楽」か?/発声学習/性差とさえずり
第11章 騒音――大騒ぎしないで、脳が壊れるから
「騒音」とは何か?/「危険な」騒音がもたらす生物学的影響――耳に与える損傷/「安全な」騒音がもたらす生物学的影響――脳に与える損傷/頭の中の騒音/環境の騒音が生物にもたらす影響/騒音について何ができるだろうか?
第12章 加齢とサウンドマインド
加齢する「聞く脳」のしるし/聴覚の老化を食い止める/加齢を受け容れる
第13章 音と脳の健康――アスリートと脳震盪にスポットライトを当てて
スポーツの良い面――アスリートのサウンドマインド/スポーツの悪い面――脳震盪/音による脳の評価――歴史を手短に/脳震盪と「聞く脳」/大切なこと
第14章 私たちの音が作る過去、現在、未来
音はいたるところにある――思いもよらない場所にさえも/メタファーの言葉/音は私たちを生きた世界と結びつける/文脈とサウンドマインド/私たちの「音の個性」/サウンドマインドは音の未来のための選択をする