グローバルな物語の時代と歴史表象 - 『PACHINKO パチンコ』が紡ぐ植民地主義の記憶

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グローバルな物語の時代と歴史表象 - 『PACHINKO パチンコ』が紡ぐ植民地主義の記憶

  • 著者名:玄武岩/金敬黙
  • 価格 ¥3,080(本体¥2,800)
  • 青弓社(2024/02発売)
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  • ISBN:9784787235329

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内容説明

在米コリアンのミン・ジン・リーの小説『パチンコ』とそれを原作にした「Apple TV+」のオリジナルドラマシリーズ『PACHINKO パチンコ』は、海外で大きな反響を巻き起こし、ドラマは第2シーズンが2024年に公開を予定している。

本書は、『パチンコ』が描く1910年代から80年代までの在日コリアン家族の波乱に満ちた人生を読み解くことで、戦前から戦後までの日本の風景、在日コリアンの苦難や差別、物語に通底する植民地主義の暴力性や記憶を掘り起こす。

また、『パチンコ』の歴史表象や在日表象から、日韓の歴史認識問題、歴史修正主義の台頭、グローバルなメディア市場で歴史が物語として流通するポリティクスを検証する。

表象にとどまらず、生産・消費・規制・アイデンティティという5つの文化の回路からドラマ『パチンコ』を精緻に分析して、東アジアでの歴史対話とコミュニケーションの新たな可能性を指し示す。

目次

序 章 グローバルな物語としての『パチンコ』――小説からドラマへ 玄武岩
 1 ドラマ『パチンコ』の世界――移動・交差・因業
 2 『パチンコ』は誰の物語なのか
 3 「記憶と和解」のポリティクス

第1部 国際シンポジウムの記録

第1章 基調講演『パチンコ』と在日コリアンの「社会資本」――歴史とフィクションのはざま テッサ・モーリス=スズキ
 1 小説『パチンコ』に関する読者の反応
 2 小説とテレビドラマ
 3 歴史に対する真摯さ
 4 ラムザイヤー論文と在日コリアンの歴史
 5 映画『否定と肯定』で語られている歴史に対する真摯さとフェイク
 6 在日コリアンの過去と現在――歴史とフィクション

第2章 座談会 ドラマ『パチンコ』から考えるグローバル・メディア時代の記憶と忘却 テッサ・モーリス=スズキ/鄭炳浩/姜信子/金敬黙

コラム1 『パチンコ』第1シーズンの歴史考証の諮問団に参加して 李成市

コラム2 複数の声が集まる現場から 伊地知紀子

コラム3 私が『パチンコ』を制作したくなかった理由 スー・ヒュー

第2部 『パチンコ』を読み解く

第3章 ドラマ『パチンコ』の「在日」表象を可能にしたもの ハン・トンヒョン
 1 韓国メディアの「在日」表象
 2 戦後日本映画の「在日」表象
 3 ドラマ『パチンコ』の「在日」表象からみえること
 4 ドラマ『パチンコ』の「在日」表象の背景

第4章 植民地時代を描くことの難しさ――創作者の立場から 深沢 潮
 1 日本の小説や映像の在日コリアン
 2 忖度の問題
 3 『パチンコ』の植民地統治下の朝鮮と日本の情景の描き方――新しさと従来の踏襲
 4 とくに注目する描き方の新しさ
 5 学知と社会の中間を描くことの難しさ
 6 四世代ものが「良質な物語」を構築しえるか
 7 作品のリアリティーと歴史のリアルのはざま
 8 「在日」の表象としてのパチンコ

第5章 ドラマ『パチンコ』が映し出す世界と「Zainichi」の生――猪飼野の路地からみえる「世界」 伊地知紀子
 1 個人の生と植民地支配という暴力
 2 猪飼野という町と朝鮮人
 3 路地からみる「世界」

第6章 二つの『パチンコ』の歴史の語り方――登場人物と警察の関係に注目して 宮地忠彦
 1 ドラマ版での登場人物と警察の関係の描写や歴史の語り方
 2 小説『パチンコ』の警察官像と歴史の語り

第7章 描かれた朝鮮人虐殺と描かれていないこと 小薗崇明
 1 「日本人」と「朝鮮人」をどのように区別したのか
 2 朝鮮人虐殺は九月一日?
 3 悪いのは自警団だけ?

コラム4 コ・ハンスはどのように済州島から日本へ渡ったのだろうか 高鮮徽

コラム5 徳寿丸で自決したソプラノ歌手と尹心悳 武藤 優

コラム6 朝鮮人社会とキリスト教、そしてパチンコ玉の人生 藤野陽平

第3部 『パチンコ』と歴史表象のポリティクス

第8章 世界は『パチンコ』をどう観たか――三言語・アジア・移民の物語 李美淑
 1 三言語のドラマが表象する植民地主義
 2 アジアンの物語であり、グローバルな物語
 3 移民の物語であり、普遍的な物語
 4 交差する物語と親密性――つながりの未来へ

ほか

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

二人娘の父

6
1つのドラマおよび小説作品について国際的シンポジウムが開催され、研究者や作家など実に多彩な識者によって多角的に作品が論じられること自体、「PACHINKO」の与えた影響とインパクトの大きさを示している。グローバルな広がりをもった中心点は「移民」という視点ではないだろうか。世界各地に歴史的に存在してきた「移民」のなかに「在日」を位置付けることで、その存在が表象するものが浮かび上がる。同時に「この物語は誰の物語なのか」を理解するきっかけ、ヒントにもなる。日本で本作がヒットしない理由を指摘する論考も必読だろう。2024/09/05

クァベギ

0
2022年に開かれたセミナーとシンポジウムを土台につくられた本。『パチンコ』(小説版とドラマ版)について論じるが、ドラマ版の分析にウェイトを置く。小説を読みっぱなし、ドラマを観っぱなしだった私は、この本を読んだおかげで、いろんなことを発見できた。豆知識のレベルでは、ある登場人物(コ・ハンス)の出身地はどこである可能性が高いか、とか。⇒2024/03/02

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