岩波現代文庫<br> ラディカル・オーラル・ヒストリー - オーストラリア先住民アボリジニの歴史実践

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岩波現代文庫
ラディカル・オーラル・ヒストリー - オーストラリア先住民アボリジニの歴史実践

  • 著者名:保苅実
  • 価格 ¥1,848(本体¥1,680)
  • 岩波書店(2024/02発売)
  • 夏休みの締めくくり!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~8/24)
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  • ISBN:9784006003807

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内容説明

異なる他者の営為を〈歴史実践〉と捉え,複数の声の共奏可能性を全身で信じ抜く――根源的多元性の前に立ちすくむ世界に,人文学という希望をもって対峙するための魅力的な仕掛けに満ちた畢生の名著,ついに復刊!(解説=本橋哲也)

目次

第一章 ケネディ大統領はアボリジニに出会ったか――幻のブック・ラウンチ会場より 1 フィールドワークのオーラル・ヒストリー
2 グリンジ・カントリー
3 誰が歴史家なのか?
4 僕たちの歴史実践
5 ジミー・マンガヤリとの出会い
6 もうひとつの経験主義
第二章 歴史をメンテナンスする――歴史する身体と場所
1 歴史実践とは何か
2 歴史する身体と世界の歴史
(1)注意深くある身体/(2)歴史する身体/(3)世界のありよう/(4)ドリーミング①――世界の起源について/(5)ドリーミング②――世界の維持について
3 移動の知識学
(1)移動生活民とは/(2)家(house)と我が家(home)について/(3)ドリーミング③――空間移動の倫理学/(4) がりの網目について/(5)開かれて可変的な知識体系
4 グリンジ社会の時間性
5 グリンジ・カントリーの歴史実践
第三章 キャプテン・クックについて――ホブルス・ダナイヤリの植民地史分析
第四章 植民地主義の場所的倫理学――ジミー・マンガヤリの植民地史分析
1 時間と空間,歴史と場所
2 場所の倫理学
3 「正しい道を歩みなさい」
4 正しい道を「歩む」
5 キャプテン・クックはどの方角から来たか
6 倫理の世界地図
7 場所を志向する歴史
8 グリンジ・カントリーにおける方角の意義
9 白人(カリヤ)の法は,どこに由来するのか
第五章 ジャッキー・バンダマラ――白人の起源を検討する
1 オーストラリアにやってきた最初のイギリス人
2 ジャッキー・バンダマラは「猿」から進化した
3 ジャッキー・バンダマラの植民地主義
4 ジャッキー・バンダマラの生き方
5 すべての悪い思想はジャッキー・バンダマラに由来する
6 多元的な歴史時空へ……そして共有の可能性は?
7 白人(カリヤ)は猿から,アボリジニ(グンビン)はドリーミングから
8 北部海岸からの伝承
9 ヨーロッパ人の形成
10 方法としてのドリーミング
第六章 ミノのオーラル・ヒストリー――ピーター・リード著『幽霊の大地』より
第七章 歴史の限界とその向こう側の歴史――歴史の再魔術化へ
1 歴史の相対性について
2 グリンジが語る歴史物語り
3 「地方化された歴史」について
4 ポスト世俗的な歴史叙述
5 クロス・カルチュラライジング・ヒストリー
6 歴史経験への真摯さ
第八章 賛否両論・喧々諤々――絶賛から出版拒否まで
1 草稿もってグリンジ・カントリー再訪,二〇〇〇年七月
2 博士論文の査読報告(抄訳),二〇〇一年六月
(1)査読者1/(2)査読者2/(3)査読者3
3 『シドニー・モーニング・ヘラルド』紙より,二〇〇一年一二月
4 某出版社からの査読報告(抄訳),二〇〇二年某月
(1)専門家A/(2)専門家B
5 ○○書店K氏からの電子メール(日本語),二〇〇三年四月
著者によるあとがき……………保苅実
もうひとつのあとがき――幻ではないブック・ラウンチを……………塩原良和
ミノ・ホカリとの対話……………テッサ・モーリス=スズキ
開かれた歴史学へ向けて……………清水 透
〈岩波現代文庫版解説〉危険な花びら――保苅実と〈信頼の歴史学〉……………本橋哲也
英文目次
地図,写真,図リスト
オーストラリア先住民アボリジニ史略年表
事項リスト
人名リスト
著者研究業績

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ほし

15
読むと自らの歴史観、ひいては価値観が揺さぶられる一冊。アボリジニの長老が、ケネディ大統領が過去に村に来た、という明らかに「史実」と異なる歴史を語る時、それをどう聞くことが出来るのか。筆者はアボリジニがいかに日々の中で身体を媒体とした「歴史実践」を行っているかを明らかにし、そこには近代実証主義とは異なる仕方での「歴史への真摯さ」があるとしています。ギャップごしのコミュニケーションを志向する筆者の姿勢は、エビデンスがしばしば他者の排除に使用される現代において、ひとつの希望として見出させるように思います。2024/11/09

かんがく

15
素晴らしい一冊。歴史を専門にしてきた人間だからこそ、著者によって伝えられるアボリジニの歴史叙述には大きく揺さぶられた。自分のいる座標が大きくズレるような読書体験は気持ちが良い。史実、事実、真実などの前に極めて「誠実」な本と著者。その誠実さに親しみと好感を持っていただけに、後書きを読んで癌で夭逝したことを知り、友人の死のように衝撃を受けた。次はスピヴァクに挑戦しよう。2021/07/06

柳田

13
つぶやきに書いたが、刺激的な本だった。オーラル・ヒストリーの試み自体は、歴史学の中でも行われていたらしいが、著者は、アボリジニの語る歴史を人類学のように神話として包摂するのではなく、近代歴史学の実証的歴史記述と同じように位置づけることができないか、と問う。博士論文をもとにした本で、博論の書評とか、「幻のブック・ラウンチ」とか色々載っているが、博論の中身は二章分くらい。具体的な分析も載っているのだけれど、本書は新しいプロジェクトの「序説」であって、単行本は2004年だが、後続の研究状況はどうなのだろう。2018/04/22

Mentyu

4
本書は相対主義による断絶を乗り越えるための、誠実な傾聴を軸とした、コミュニケーション・ツールとしての歴史学の、実践の書ということになるだろう。もっとも、西洋の合理的歴史学と異なる、人間以外の様々なアクターが介在する歴史実践については、アボリジニ同様、西洋ではない日本でも伝統的に存在してきたものとも言える。そこに煩悶したことが、日本の近代化だったはずである。本書にあった違和感としては、筆者の立場性が完全に西洋に立脚しており、筆者自身を構成するはずの、非西洋である日本が感じられなかったところだったかと思う。2025/02/14

Ñori

4
本書は歴史学の存在論的転回であり、転回前と転回後の対話の可能性を示唆したものである。フィールドに出れば、必ず史実としては成立していない「語り」と出会う。しかし、史実性を伴うものだけが「歴史」であるとして客観性のみを追求するのではなく、「尊重」という多文化主義的ゆえに新植民地的な思考に陥るのでもなく、サバルタンの歴史実践に真摯に向き合うというのはどういうことなのか、本書は語る。 保刈氏と自分が重なるように感じるところも多く、終盤にいくにつれ、胸が詰まった。今年出会った本の中で最高の1冊。 2019/11/02

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