「論理的思考」の社会的構築 - フランスの思考表現スタイルと言葉の教育

個数:1
紙書籍版価格
¥4,620
  • 電子書籍
  • Reader
  • ポイントキャンペーン

「論理的思考」の社会的構築 - フランスの思考表現スタイルと言葉の教育

  • 著者名:渡邉雅子
  • 価格 ¥4,620(本体¥4,200)
  • 岩波書店(2024/02発売)
  • 夏休みの締めくくり!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~8/24)
  • ポイント 1,260pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784000026062

ファイル: /

内容説明

国内外で活躍するための必須スキルとされる「論理的思考」.だが実は,「何を論理的・説得的と感じるか」は普遍的なものでなく,ある国(文化)で論理的とされるものが,ほかでは非論理的だと受け取られることも.本書では,日や米とも異なるフランスの「論理的思考」と,それが社会的に構築される様相と背景を読み解く.

目次

序章
1 思考表現スタイルと論理的思考
2 学校の特別な役割
3 小論文の型と「論理的である」と感じる根拠
4 なぜフランスなのか
5 本書の構成
第一部 論文構造から生まれる論理と思考法――哲学と文学のディセルタシオン
第1章 論文の構造と論理の型――エッセイとディセルタシオン
1 「論理的」であることの探求
2 ディセルタシオンの構造と論理――エッセイとの比較から
3 構造から導かれる米仏の論理の特徴
第2章 哲学のディセルタシオンと哲学教育――吟味し否定する方法を教える
1 哲学のディセルタシオンの特別な地位
2 哲学教育の目的,内容構成と方法
3 哲学のディセルタシオンを書く
4 哲学のディセルタシオンを分析する
5 小括――哲学のディセルタシオンに見る思考表現のスタイル
第3章 文学のディセルタシオンと文学教育――文学鑑賞と論理的思考
1 高校のフランス語(文学)教育――目的と構成
2 文学の論述問題
3 文学のディセルタシオンを書く
4 文学のディセルタシオンに見る弁証法の論理
第4章 ディセルタシオンの歴史――新しい社会の論理の模索,伝統と革新の接点
1 伝統的な教育――フランスの論理的文化と三つの形式主義
2 フランス革命とディセルタシオンの創造
3 哲学教育とディセルタシオン――自由に自律して考えるための訓練の創造
4 小括 ディセルタシオンは教育を刷新したか――変わったものと変わらなかったもの
第二部 論理的思考の段階的な訓練――ディセルタシオンを目指した言葉の教育の全体像
第5章 小学校で教えられる論理――言語の内的論理と視点の一貫性
1 文法・描写・物語を通した論理的思考
2 作文(r daction)――形式による論理的一貫性を学ぶ訓練
3 物語の創作における二つの訓練――視点による論理的一貫性と物語の「定義と型」の習得
第6章 中等教育で育まれる論理――「論証」から「弁証法」へ
1 中学校における「論証」――自然の配置から論理の配置へ
2 高校で育まれる論理――弁証法という思考の飛躍
3 小括――高校で育まれる論理と論理的思考
第三部 判断し行動するための論理――推論する,討論する,合意するための教育
第7章 歴史教育――過去の解釈と未来予想に見る推論の型,「合理性」の判断基準
1 フランスの歴史教育の構成――教科書に見る時間の概念と歴史認識
2 フランスの歴史教科書の構造と授業の構造
3 過去はどう語られるか――フランスの歴史授業の五つの特徴
4 視覚イメージで教える効果――見えるものから「見えないもの」を読み解く
5 いかに評価するか――良い説明(歴史の語り)と求められる能力
6 未来はどう捉えられているか――歴史教育に見る過去・現在・未来の構造
第8章 歴史教育の歴史に見る思考法の変遷
1 歴史教育の転換点(一九七〇年代の改革)――新教育とアナールの歴史研究の方法
2 揺り戻しと新たな発展――公民教育としての歴史と年代史・政治史の復活(一九八〇年代)
3 史料から構築する歴史へ――生徒の多様化とデカルト的方法(一九九〇年代から)
4 グローバル化・情報化への対応――共通基礎の導入
5 二〇〇〇年以降のディセルタシオンの大衆化と歴史教育――理想と現実,断絶と継承,批判と実像
6 教育の大衆化とテーマとイメージによる歴史
第9章 市民性教育――合意形成の手続き
1 言葉の定義を通した合意形成と共通の文化の構築
2 学級の規則作り――手続きの遵守と形式主義(公民科)
3 言葉の定義から「判断の基準」を学ぶ
4 「社会は変えられる」――フランス革命の遺産を伝えるプロジェクト
5 哲学による前提の合意形成――歴史に学び,共同体の文化を形成する討論
6 討論から政治的行動へ
7 政治教育としての市民性教育――言葉の定義と手続き遵守の社会生活への適用
終 章 フランス社会の〈論理〉の構築――ディセルタシオンが導く思考表現スタイル
1 思考表現スタイル――思考・判断・表現の型
2 社会の利益か,個人の目的達成か――共和主義と民主主義
3 民主主義型の思考表現スタイル――補助線としてのアメリカ
4 結語 小論文の〈論理〉から考える社会の未来――フランス,アメリカ,そして日本
あとがき
参考文献
資料

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

sayan

42
今月最も刺激的な書籍の1冊。語学ができる事と論理的に伝わることは違う、それは「書く型は思考の型」に拠ることを本書は明らかにする。著者は「論理的であるとは統一性と一貫性が、読者の期待通りに必要な情報とその順番が示される事で生まれる感覚」である、と引用する。その肌感覚表現に共感する。そして仏のディセルタシオンを軸に各国の「論理的」であることは「質的」に異なる点を明らかにする展開は鮮やか。社会論として読んでも非常に面白い。ふと、言語Aの内容を日本語読者に伝わる型にする翻訳者の視点や力量は相当だな、と感じ入った。2021/11/02

kan

22
刺激的な本だった。エッセイとディセルタシオンと小論文の違い、「論理的」の定義の違い、その差異を生み出す歴史的背景や価値観が目から鱗だった。米国大学院出願の際、エッセイやGREのanalytical writingで米国の求める書き方を模索し苦労したが、フランスの書き方の根底にあるものを本書で知り、国や文化圏により論理性や創造性の定義がここまで違うかと感動さえした。人文科学や哲学的思考の重要性を認識し、抽象化を価値ある能力とし、人類の偉大な業績を学び自らの教養にすることを重視するフランスの教育が羨ましい。2022/06/04

yutaro sata

11
論理構造というものが例えば日本と、アメリカと、フランスでは全然違うのだと。そういう背景まで知らないと「論理的に話せば伝わる」と思っていた場面で見事にすれ違うことになると。いうことですね。確かネットの記事で紹介されていて興味を持ったのでした。2022/05/03

syuu0822

8
「論理的思考」とかよく言われますが、具体的にどういったことを指すのか?と前々から疑問に感じていたので手に取った本。実際の中身としては、大半がフランスの教育内容の紹介ですね。論理的と言われるものが、実はそこの文化独特の考えに過ぎない可能性もあるのだということが分かり、とても有益な本でした。2023/08/03

buuupuuu

8
前著に引き続き、授業で教えられる作文の型から、国の教育方針や文化のあり方を探っている。フランスではアメリカと異なり、革命の経験を踏まえ、理念が先行する形で文章のスタイルが定まっていったという。それは、ヘーゲル的な弁証法の「正反合」の形で、全体性を志向しながら、物事を多面的に見るよう促すものである。経験的な論拠は認められず、必ず古典等からの引用が求められるという。これが人文的教養への向き合い方の養成になっていると思われ、印象に残った。しばしば「欧米」として一括にされるが、まったく違っていて面白い。2021/12/16

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/18210442
  • ご注意事項

最近チェックした商品