内容説明
小5の羽美は、同じマンションに引っ越してきた細田くんの相談にのるうちに、まわりで起きた事件が気になり、 その真相をつきとめるべく犯人さがしにのめりこんでゆく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はる
59
小学5年生の羽美は、同じマンションでこっそり犬を飼っている細田君の相談にのりますが…。繊細な物語。子供だから出来ること、子供だから出来ないこと。岩瀬さんらしい、あの頃の感情に溢れた物語だと思う。いい人間でありたい。でも、それはとても難しいことだし、答えが一つとは限らない。たとえ大人であっても。難しいテーマを子供の視線で描いた佳作。細田君の飼犬トミオへの想いがいじらしい。2022/11/06
ぶんこ
40
家族の一員だった犬と離れられず、転居先のマンションがペット禁止なために心痛める小学4年の細田君。細田君の力になりたいと手を尽くす、同じマンションの小学5年生の羽美さん。細田君がとてもいい子なので、犬のトミオのことを思うといたたまれない。人間の事情でトミオにストレスを与えてしまっているのは辛いでしょう。羽美さんもなんとかしたいと一緒になって動きますが、そこで知った大人の思惑に一喜一憂。いかにも子どもらしい羽美さんの言動と、大人っぽくもある細田君の穏やかさが微笑ましい。最後はハッピーエンドでよかったです。2022/12/04
雪丸 風人
11
犬猫禁止のマンションに住む小5女子が主人公。こっそり犬連れで引っ越してきた少年に出会った彼女が、一緒に引き取り先を探すうちに、いつしか大人のトラブルに首を突っ込んでいくようになります。迷走していた主人公のひらめきが、物語の鍵になるところが良かったですね。そして、決して仲が良いとはいえなかった主人公と姉との終盤のやり取りには胸のつかえが取れたような気持ちになりました。立場が変われば正しさは違ってくるし、大人も正解を知っているとは限らない。そんなこと教えてくれる作品だと思います。(対象年齢は11歳以上かな?)2022/11/06
奏
9
5年生の羽美は、ペットを飼ってはいけないマンションに住んているが引っ越してきた細田くんは事情があり犬のトミオをこっそり飼っている。細田くんとトミオの役に立ちたい羽美だったが、預け先を探すうちに周辺でおきる事件の犯人をさがすことに夢中になっていく。正しいことが良いこととは限らず、親切がその人にとっては必要されていないかもしれない。そんなことを知ってしまうと誰かと関わることが怖くなってしまうけれど、誰かと関わることでしか知り得ないこと。決してわかりやすい物語ではないけれど、じんわりと心に効いてくる。2023/01/30
バジルの葉っぱ
7
普通大人が子供に示す分かりやすいかんじの勧善懲悪の価値観を壊すようなお話。いいことをしてもいやがられることもある。正しいことを言うことがいいこととは限らない。いい人も悪いことをする。悪そうに見えてもいい人。先生はいい人のはずなのに嫌なことを言ってくる。等等。これを読んだ小学生は足元が揺らぐような、不穏な気持ちになりそう。でも、それがいいんだろうなと思う。2022/11/11