内容説明
難民児童と施設職員の交流を描くYA小説。
スウェーデンの小さな町にある灰色の建物。高校を出たばかりの「わたし」は、保護者のいない難民児童が暮らす収容施設で働いている。職員は規則と指示に従うことを求められ、帰宅したら仕事のことは考えるなと言われるけれど、アフガニスタンから逃げてきた少年たちと日々接していると、それはとても難しい。「わたし」は、家族と離れ一人で逃げてきた14歳のザーヘルや17歳のアフメド、ハーミドという3人の少年たちと心を通わせるうちに、タリバンへの恐怖やトラウマに苦しむ彼ら、18歳になり施設を出なければならないことを恐れる彼らに寄り添おうとする。
静かな筆致で難民児童の現実と職員の葛藤を描いた、2021年北欧理事会文学賞(YA&児童部門)受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
75
ザーヘル、アフメド、ハーミドの3人。彼らがいるのはスウェーデンの難民童施設HVBホーム。タリバンからひとりで国を逃れてきた少年たちと施設で働く職員のレベッカとの交流を描いたYA小説。こころに傷を負った彼らに、家族のことを尋ねたいのに聞けずにいるレベッカ。「きょうは水飲んだ? 薬は要る? ちゃんと眠れる? ここにいてほしい?」と、部屋を一つひとつ訪ねまわって一日が終わる。彼らがどこで暮らすかを決めることができない状態に置かれたなかで、少年のひとりが命を絶つ。水面にかすかなざわめきを残して消える石。2024/10/06
ナミのママ
75
10代の少年が1人で生まれ育った国を離れ、海外で難民となる。こんな現実知らなかった。スウェーデンの難民児童施設を舞台に3人の少年と若い職員の「わたし」が綴る物語はとても切ない。静かに淡々と書かれたその文章の中に厳しい現実が込められている。18歳になると施設を出なければならないがどこへ行けというのか。それでも彼らは18歳まで生き延びられた。良い本なのに話題になっていなくて残念、もっと読んでほしい。【2021年北欧理事会文学賞(YA&児童書部門)】受賞2024/03/13
藤月はな(灯れ松明の火)
54
就職活動中のレベッカは「他者に指示を仰がないと動けない」という扱いやすさから移民局の運営する難民保護施設へ採用される。そこにいた子供達は大体が14歳だ。「難民である」という事から子供達は個性を最初は隠しているが、心を徐々に開いていく。但し、やむ追えなく、必死に祖国から逃げたとしても里親が見つからず、18歳=大人になれば、送還されたり、財政的理由で追い出される事もあるという不条理。その不条理に子供達に寄り添うレベッカは苦悩する。逃亡したアフメド。スウェーデンには希望がないと悟り、ドイツに行こうとするハーミド2024/07/04
星落秋風五丈原
42
スウェーデンの小さな町にある灰色の建物で、高校を出たばかりの「わたし」は、保護者のいない難民児童が暮らす収容施設で働いている。面接の時に、あるシチュエーションを告げられて対応を聞かれた時、「わたし」は、まずどうすればいいか?と聞いて採用される。自己顕示欲がなくていいと思われたという面もあるが、ただ命令に従うイエスマンを望んでいたとも取れる。しかし、少年たちと接するうちに、「わたし」は、ただのイエスマンではいられなくなっていく。2024/04/09
ちえ
31
祖国から脱出し心にトラウマを持っ子供たちを生活させ学びの機会を保証するスウェーデンの難民童施設HVBホーム。タリバンが支配する祖国から逃げてきた少年達。心に負った傷により心を閉ざしたりパニックを起こす彼らを担当するレベッカ。自分では判断できず受け身で受けた指示で動いていた彼女と三人の少年の関わり。決してハッピーエンドでは終わらず、年齢という選別、一番起こってほしくない事が起きる。抗えない閉鎖という事があるとしても、自国に来た子供達にこれほどの事をする国があるのだと。レベッカの苦悩にこの先の力になればと祈る2024/10/18
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