内容説明
「悪魔」の正体は局地風(ゴッホ《星月夜》)、描かれた雲から降水確率もわかる(フェルメール《デルフト眺望》)、天気の表現でわかる作家の出身地などなど、古今東西の名画やマンガを天気という視点で見直すと、意外な発見に満ちている。画家たちの観察眼は気象予報士よりも凄いかも!? さらに、同じ地域でも時代の異なる作品を比較することで、温暖化などの変化に気づくことだってできる。現役気象予報士による美大の人気講義を再現。
1章 低地・高緯度のオランダが育んだ「光の絵画」
2章 島国イギリスの気象が生んだ「風景画」
3章 温暖なフランスだからこそ印象派が花開く
4章 豊かな日本の雲と雨
補章 漫画、アニメで描かれる気象現象
気象用語解説
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コットン
71
洋画、浮世絵、マンガ順で絵の中の天気情報を読み解いていくことで画家の新たな魅力がクローズアップしていく仕掛けが良い。ターナーのイタリアとイギリスの空の光の差による見え方の差であったり、モネの同じ大聖堂を描いても時間や光量による色味や空気感の差、北斎と広重の天気の活かし方の差など新たな視点がある。そして何と言っても表紙カバーのフェルメール『デルフト眺望』の上に天気記号か書かれていてインパクトがある。これで気温、風向き、風の強さ、気圧、直近3時間の気圧変化傾向、雲の形と空全体を占める雲の量が示されている。2024/04/29
yyrn
18
大学の教養課程で教えられたら十分に楽しく、よく知られた有名な絵画から当時の気象を考え、そこから読み解けるものは?という新たな視点が示され、物事を違う角度から見ることの面白さやその有効性を教えてくれる本だった。名画解説は中野京子や原田マハ、山田五郎ばかりではないこと、テレビやwebでの露出が出版の機会につながる世の中になったことを知るw(著者は現役気象予報士で、東京造形大の特任教授。44歳)。▼フェルメールの「デルフト眺望」はなぜあんなに空が明るくて広いのか?神秘的な薄明光線はどのような時に見られるのか?⇒2025/06/03
冴子
18
絵画にはその背景に映り込んだ空や雨を解読していくことで、時代背景やその国の特徴が表れる。イギリスは夏が短いというが、島国なので日本とよく天候が似ている、というのを初めて知った。気象予報士の作者が絵画、浮世絵、漫画を読み解くのは大変面白かった。フェルメールの「デルフト眺望」は大好きな絵だが、これはまさにオランダという国と天気をよく表しているらしい。これを読んでから、よく空を見上げるようになった。2024/08/23
瀧ながれ
18
絵画を見ることは好きだけど、こんなふうに見たことはなかったなあ。これからは、風景画や、人物画の背景に注目して、陽の光の加減とか、雲の流れをじっくり観察しなければ。たいへん興味がわく読書でした。絵画と地理と歴史はつながるとは思っていたけれど、こんなふうにお天気を介してつなげるのは新鮮です。2024/03/14
フク
13
#読了 気象予報士によるアート解説。 異なる視点が増えることでさらに楽しめる。 〈印象派が生まれた背景には、イギリスとフランスの気候の違いに加え、小氷期が終わりを迎えていったことも一因かもしれません〉 図書館2024/06/19