光文社新書<br> 大江健三郎論~怪物作家の「本当ノ事」~

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光文社新書
大江健三郎論~怪物作家の「本当ノ事」~

  • 著者名:井上隆史
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  • 光文社(2024/02発売)
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  • ISBN:9784334102234

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内容説明

「奇妙な仕事」以降、常に文学界の先頭を走り続けてきた大江健三郎。「飼育」で芥川賞、『万延元年のフットボール』で谷崎潤一郎賞、『「雨の木(レイン・ツリー)」を聴く女たち』で読売文学賞、そして九四年には、川端康成についで日本で二人目のノーベル文学賞受賞者となった。「民主主義者」「平和主義者」と捉えられている大江。だが、大江をそうした物差しだけで測ってよいのだろうか。従来の大江像に再考を迫る。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

106
ノーベル賞講演で日本を「あいまいな国」と定義した大江健三郎は、『沖縄ノート』での沖縄戦集団自決を巡る訴訟に引き出された。黒白を明確にする裁判から影響を受けて、大江は晩年の長編『水死』を書くに至ったと見る。そこで大江に相当する人物は自決を強要した軍人側に同一化しており、戦後民主主義者たる大江を否定する自己批判だと分析する。こうした著者の分析は、あいまいさを許さない強固な文学思想の持ち主と大江を見ているからではないか。少なくとも私は人間らしい弱さのない偶像など、作家としての能力が高くとも読みたくはないのだが。2024/03/26

hasegawa noboru

21
大江作品を順次網羅的に取り上げ、その評価基軸を明確にしつつ、大江にとっての「本当ノ事」はどの作品のどこでどう顕現しているかを追求していく作品分析過程はスリリングで圧倒的。新書本というスペースであるにもかかわらず。<大江はついに、その怪物的な本性を現わし>たという『万延元年のフットボール』と最晩年の『水死』。この二作品を世界文学レベルの最高傑作であると著者は言う。やや抽象的言い方のまとめだが、『水死』が<世界文学として、もっとも価値ある一冊>である所以について述べている箇所をそのまま引用してみる。<決して2024/04/17

ザビ

17
昨年逝去されたとはいえ、なぜ今大江健三郎!?昭和の文芸評論臭ただようこの本が、書店でchatGPTと並んでいることにビックリ。大江さんはまさに"天才すぎて変な人"。この本でも大江さんの政治主張とぶっ飛んだ性的嗜好(小説での)との矛盾や偽善性などが考察されてるけど、そんなややこしい話は抜きにノーベル賞受賞理由が簡潔明瞭でとてもいい。「詩的な力を駆使して想像の世界を生み出し、生と神話を凝縮して、ギョッとさせるようなやり方で現代人の苦境を描き出した」戦争が二つも同時進行している今ゆえの大江健三郎…なんだろうか。2024/03/06

タイコウチ

12
「平和主義者・戦後民主主義者」としての大江健三郎に内在するある矛盾が、創作上の契機(原動力)となり、失敗を重ねつつも、いくつかの傑作(「万延元年のフットボール」「同時代ゲーム」「水死」)を生み出したという見立て。その背後には大江の最良の理解者の一人であった三島由紀夫からの問い(=「本当ノ事」)があるとされる(三島は川端康成のノーベル賞受賞時に、次の受賞者は自分ではなく大江だと言ったそう)。すべてに納得がいくわけではないが、気になっていた「大江健三郎」の自分の中での座りの悪さが少し解消されたのは間違いない。2024/02/23

ほんままこと

10
作家も一般人も、現在進行形で生きている間と、死で人生が完結した後では評価は違ったものになるのは当然なのだろう。死によって人生の流動性が止まるからだ。大江健三郎の小説に微妙に感じていた違和感が解消された読後感だった。ノーベル文学賞選考にCIAの「文化自由会議」が関わり、サイデンスデッカーもそこに関わっていたというのは驚き。三島由紀夫の悲劇性も少し理解。戦後民主主義者とか「立派な人」とか思われて、本人もそれに応じて生きるって大変だろう。でも鈍感力で大丈夫だったのかも、と私は勝手に考えた。2024/04/07

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