内容説明
2023年夏、ベニシア・スタンリー・スミスさんが京都大原のご自宅で亡くなりました。
64歳で発症したPCA(後部皮質萎縮症)が進行し、亡くなる72歳までの8年間のベニシアさんの日々の様子を、夫である梶山正氏がつづったエッセイ集です。
徐々に目が見えにくくなり記憶が薄れてゆく中で、悪戦苦闘しながら介護を続けた正氏の葛藤の日々が赤裸々につづられています。
この日を予告するかのように、大原の古民家に暮らすことになったベニシアさんが初めて口にしたのが「私はこの家で死ぬ」という言葉。
月日は流れても、今も、ベニシアさんの高い志しに多くの人々が感動し、彼女を慕い続けています。
彼女が日本人の心の中に残したものは一体何だったのでしょうか。
本書は亡くなるまでの7年間の足跡を追う貴重な一冊です。
■内容
まえがき
Chapter 1ベニシアを介護しながら歩んだ最期のとき
ベニシア64歳/ベニシア67歳/ベニシア68歳/ベニシア69歳/ベニシア70歳/ベニシア71歳/ベニシア72歳
Chapter 2ベニシアの「おいしい」が聴きたくて僕は夢中で料理を作った
アイリッシュ・シチュー/シェーパーズ・パイ/フィッシュ&チップス/魚介のパエリア/サモサ/サンデー・ロースト
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
わか☆
16
仕事でベニシアさんについて調べる機会があり、その時に病気に罹っている事を知りショックでした。古民家でハーブを育てながら生活する姿に憧れていたのです。ベニシアさんは2023年6月21日午前6時30分に亡くなられました。享年72歳。本書は旦那さんの正さんが書いており8年の介護記録になっています。日本に暮らす外国人の多くは、老後に不安を抱えているそうです。ベニシアさんは「みなさん、どうか働き過ぎないでください」と動画で話していました。きっと働きすぎて脳の病気になってしまったのだと思います。2024/05/03
hitotak
8
ベニシアさんの夫である著者が、ベニシアさんを介護し看取るまでの記録。きれい事はなく、ヘルパーさんや介護施設、自分本位な義理の子供たちなどについてのモヤモヤした思いや、介護に右往左往する様子が書かれ、テレビ番組ではあまり存在感のなかった正さんの人となりがなんとなく伝わった。ベニシアさんの歩んだ軌跡を残したいという理由で書いたという事だが、本人は承諾していないし、何より著者が自身を癒すために書いた本と感じた。日本で暮らす外国人たちは、介護ケアを日本で受けることに不安があるというのはなるほどと思った。2024/10/27
pugyu
6
ベニシアさんが亡くなってから出た正さんの本。普通の人の介護の記録。正さんひどいんじゃないの?と思う所もあったけど、目が悪くなり認知症のベニシアさんのお世話は、逃げ出したくなる気持ちもわかる。子供がたくさんいたとしても、実際頼りになるは状況を分かってくれる友人たち。ベニシアさんも正さんも救われたんじゃないかな。でも、もしコロナ禍じゃなかったからもっと違った過ごし方ができたんじゃないか。あのパンデミックの世界で、病院や施設の面会が制限され、寂しいまま亡くなった人がたくさんいたんだろうと思うとやるせない。2025/05/17
ヨシモト@更新の度にナイスつけるの止めてね
5
異国で病にたおれ、生涯を終えるということの、なんと心細いことか。言葉を話せ、配偶者も、近くに実子がいても、自分のことを自分でできなくなった時にどんなことになるか。そのたとえようのない心細さが、正さんの文章から伝わってくる。人を支えることがどんなに大切か。どんなに難しいことか。多くのことを考えさせられた。2024/11/26
シュウ
4
誰にでも起こりうること。その時どうすればよかったのか、何が正解かはわからない。誰でも精一杯の時はあるもの。でもベニシアさんは終の棲家の大原と感じていた場所で看取られて、家族や友人が傍にいて幸せだったのではないかな。2024/07/02