内容説明
近代日本の外交官・政治家。ワシントン会議では全権を務め、後に外相として国際協調と中国内政不干渉を掲げた幣原外交を展開。満洲事変収拾に挫折し退くが、敗戦後首相に指名され日本国憲法の草案を発表した。幣原の生涯を、多彩な史料や新聞雑誌記事、議会議事録などを駆使して辿り、複雑な政治事情の中で貫き通した外交理念、信念を考える。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ジュンジュン
10
20年代、国際協調と国益(満蒙既得権益の維持確保)を追求した外相時代、戦後、日本国憲法誕生に立ち会った首相時代と、外政家として活躍。反面、党利党略を厭い、権力基盤構築に無頓着な性分はおよそ政治家に向かない。その意味でも、その本質は国のために尽くそうとした外交官だった(291p)。吉田茂とダブるが、ワンマン宰相として脱皮した吉田と違い、本質は外交官のままだった幣原。両者の違いがそのまま知名度の差になったように思った。2021/05/10
かろりめいと
3
幣原に関する日記などの一次史料はほとんどないとのことだが、そこから結構大胆にその人物像を提示。国家に奉仕する人間。政党とは距離を置く。とても面白かった。2021/04/28
バルジ
3
近年の研究を盛り込んだ最新の幣原喜重郎評伝。人物叢書らしく手堅くその事跡を辿り非常に読みやすい。本書から垣間見える幣原の姿は少々奇異に映る。何故なら戦前の外交官としての卓越した手腕と戦後政治家に転身した幣原の政治才覚に落差を覚えたからである。特に戦後の政治行動は受動的で犬養健に吉田茂と振り回される姿が目立つ。しかし①国際協調②現実主義という2点は戦前戦後と変わらず最後まで国家本位の人物であったその姿は明治人としての気概を感ずる。また人物叢書では珍しくある俗説を精緻な資料解読によって厳しく批判している。2021/03/28
wuhujiang
0
ほぼ同時期に出た中公新書の『幣原喜重郎』よりも記述は詳細。また、描く人物像もやや異なる。本書における幣原は理想論を主張してアピールするが、実際にとる政策は現実主義的。また、最晩年に至るまで国家に貢献する意気込みが人一倍強い、といった像。中公新書はセクショナリズム化した組織をまとめるのに苦慮した、といった像。痛感したのは、協調外交=軟弱という先入観がある点。ワシントンでもロンドンでも幣原が苦慮して「協調」しようとしたことを思えば、ばかげた先入観だなと思った。2021/08/12
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