内容説明
戦争が生み出したさまざまな矛盾に切り込む。
東京で学生をしていた仲代庫男は空襲で焼け出され、列車で佐世保の実家へ向かう途上、同年輩の芹沢治子と出会う。長崎の浦上に住むという治子と庫男は文通を始めるが、“新型爆弾”により治子の消息は不明に――。
一瞬にして未来を断たれた原爆被害者、日本人であることを強いながら差別される朝鮮人炭鉱労働者、敗戦前から英語の辞書を買い漁っていた抜け目ない同級生……戦争によって生まれたさまざまな矛盾や理不尽を、富国強兵の象徴であった旧佐世保海軍工廠250トン起重機(クレーン)になぞらえてあぶり出した名作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ねこっく
6
主人公の青年が入市被爆を経たのち、これまで通名呼びしていた朝鮮人坑夫たちへの呼び方が朝鮮人としての呼び名に変わっていたのが、戦前と戦後の決定的な意識の変革を表しているように思えた。本の前半ではあれだけ治子との出会いが事細かに描かれていたのに、原爆で行方が分からなくなってしまってからはもう考える余裕もなくなったというくだりが、戦後の混迷と敗戦によって失われた感情を表現しているようにも感じた。ただ結局、虚構のクレーンとは何だったのか、SSKに絡めて描いてほしかった。最後は政治的に簡単にまとめられててうーん。2026/07/03
isbm
1
★★★2025/07/15
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