内容説明
地獄から生き延びよ!
脱出不可能な孤島
足抜け厳禁の遊廓
追手だらけの深山
絶体絶命の窮地を
罪人は逃げきることができるのか!
歴史小説の第一人者が描く江戸の闇
唯一無二の逃亡短編集
勘定奉行の不正の証である帳簿と書付を時機が来るまで隠すように主・依田政恒から頼まれた杢之助。だが捕らえられてしまう。罪人となり送られた先は、生きては出られぬ地獄の島・佐渡金銀山だった――島脱け
江戸吉原から大見世の花魁・春日野が足抜けした。誰一人抜け出せない吉原からどのようにして春日野は逃げたのか。追捕を任された力蔵は行方と足抜けの方法を探るが、夢を売る町は一筋縄ではいかず――夢でありんす
領内で重罪を犯した召人を放逐し、手下に討ち取らせる放召人討ち。放召人となった罪人の鷹匠を、マタギが追うこととなったが、山深くには腹を空かした熊もいて……。それぞれの逃亡が始まる――放召人討ち
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
201
佐渡金山からの島脱け、吉原からの足抜け、出羽国久保田藩からの山中逃げ。3話とも読み応えある逃亡追跡劇。佐渡送りで坑内の水替人足に使役されたり、逃げた女郎を探す追捕仕事人がいたり、放召人討ち(罪人を放ち藩士に狩らせる)があったり、マタギの教えに感心したり。江戸時代の知られざる行いが興味深いです。2024/04/27
パトラッシュ
131
政治腐敗の犠牲となった主家の没落に巻き込まれた中間。親の借財で吉原に身を沈めた絵師の娘。故意に放した罪人を狩り立てる藩主の狂気から逃げるマタギ。無実でありながら世の理不尽で追われる身となった三者が、必死の逃亡劇を展開する。佐渡島から真冬の海に飛び込んだり、狩りの獲物として冬山を逃げ惑う描写は、いずれも「死んでたまるか」という意地と復讐の念が心に迫ってくる。逃亡不能なはずの吉原から消えた遊女の物語は、小泉八雲を思わせる。長編が主力の著者だが、世の断面を鋭く切り取り鮮やかにまとめる短編でも見事な力量を示した。2024/04/05
タイ子
84
3つの逃亡物語。佐渡金山からの逃亡、江戸吉原からの足抜け、領内で罪を犯したものを放逐して追跡させ手打ちになる前に逃亡者は逃げ切る。どれも面白いが、吉原の遊女が誰の目にも止まらず外に出た方法が謎。最後の最後に見せたもの、さすが吉原と唸るのみ。一番面白かったのは最後の召人を放逐して追跡させるという惨い仕打ちの物語。何せ、追跡を命じる藩主が狂っている。逃げる者は命がけ、マタギの経験を生かしてもなお熊に襲われ、寒さと飢えに苦しみ、ただ他藩に出る事のみ。サバイバルゲームと藩主の悪趣味にただ唖然。2024/07/05
ゆみねこ
79
「島脱け」主の命で勘定奉行の不正の証を時期が来るまで秘密の場所に隠した杢之助は、その後捕らえられて佐渡に。生きては出られない地獄の島からの脱出劇。「夢でありんす」吉原の花魁・春日野の足抜け、それを追う力蔵。「放召人討ち」罪を犯した召人を野に放ち、手下に討ち取らせる久保田藩主。放召人となったマタギの決死の逃避行。リアルな逃亡劇はとても読み応えあり。面白かった。2024/05/10
えみ
57
逃げないという選択肢もある。それでも逃げることを選んだ彼らの行動の真意に胸が熱くなる。逃げて本懐を遂げる。逃げるという行動には皆背景があるということを胸に刻んだ。理では割り切れない世の中。身に降りかかる思いがけない罪状。覚悟の逃亡。行き着く先に何が待つのか。追われる者の心にあるのは自分だけではない誰かのための想い。人生まるごと引っ繰り返るその逃亡劇を、その結末を、手に汗握りながら見守った。江戸時代を舞台に3つの逃亡が描かれた時代小説。絶望も希望そこにはなく、ただ決意のみ。事を成し遂げたい!その意志に脱帽。2024/03/10