内容説明
江戸川乱歩のいわくつきの未完作「悪霊」
デビュー百年を越え、いま明かされる、犯人・蔵の密室・謎の記号の正体。
そして、なぜ本作が、未完となったのか――
乱歩の中絶作を、芦辺拓が書き継ぎ完結させる! そのうえ、物語は更なる仕掛けへ……。
1923年(大正12年)に「二銭銅貨」でデビューし、探偵小説という最先端の文学を日本の風土と言語空間に着地させた江戸川乱歩。満を持して1933年(昭和8年)に鳴り物入りで連載スタートした「悪霊」は、これまでの彼の作品と同様、傑作となるはずだった。
謎めいた犯罪記録の手紙を著者らしき人物が手に入れ、そこで語られるのは、美しき未亡人が不可思議な血痕をまとった凄惨な遺体となって蔵の2階で発見された密室殺人、現場で見つかった不可解な記号、怪しげな人物ばかりの降霊会の集い、そして新たに「又一人美しい人が死ぬ」という予告……。
期待満載で幕を開けたこの作品はしかし、連載3回ののち2度の休載を挟み、乱歩の「作者としての無力を告白」したお手上げ宣言で途絶した。
本書は、『大鞠家殺人事件』で日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞を受賞した芦辺拓が、乱歩がぶちあげた謎を全て解き明かすと同時に、なぜ「悪霊」が未完になったかをも構築する超弩級ミステリである。
【電子版特典】
「芦辺拓+江戸川乱歩特別対談 ~「悪霊」の九十年ぶり完結を記念して~」 (※芦辺拓書き下ろし)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
229
江戸川乱歩の没年に生を受けた(決して生まれ変わりではありませんが)からかどうかは解りませんが、50年程前に少年探偵団シリーズを読んでから、読書好きとなりました。江戸川乱歩は私にとって特別の作家です。乱歩の未完の「悪霊」を完結させている作品ということで読みました。芦辺 拓、2作目です。乱歩を引き継いで、乱歩らしく完結させるのかと思っていたので、少し残念な作品となりました。 https://www.kadokawa.co.jp/product/322310000776/2024/02/18
青乃108号
176
乱歩は子供時分に少年探偵団シリーズ、中学生の頃に角川文庫版「芋虫」新潮文庫版「~名作選」を読んだぐらいで決して詳しくはないので、勿論「悪霊」も、3回連載されただけで未完だった経緯も知らず。しかし3回分の原稿しか現存しないのにそれを補完して作品化しようという試みは、ブルース・リー亡き後にでっち上げられた「死亡遊戯」の様にトンデモ作品になってしまう可能性が大。それでも果敢に取り組み、怪奇な乱歩の原稿を引き継ぎ、まさに乱歩文學の世界観を損なう事なく全ての謎を解明し作品を完成させた作者の執念には感服するしかない。2025/02/12
パトラッシュ
161
未完作品を他の作家が書き継ぐのは珍しくないが、書き終わった部分から続けるのが基本だ。芦辺さんは乱歩の『悪霊』が中絶せざるを得なかった理由まで取り込んで、完成作品に仕上げてみせた。実在の人物が歴史の謎に巻き込まれるとはよくある手法ながら、日本推理文壇の鼻祖である乱歩が書けなくなってしまう理由まで納得させる力技を見せつける。語り手が何度も変わったり、原作と合作部分が入り混じるなど読みにくさも残るが、執筆時の乱歩の文体や伝記的事実とを重ね合わせることで不自然さを消している。大先輩に対する最高のオマージュだろう。2024/04/20
ちょろこ
113
感嘆の一冊。江戸川乱歩が連載三回で放置した「悪霊」を芦辺さんが想像を膨らませ創造した作品。どう完成させるのか、高まる期待とワクワク感はまさに新連載に心躍らせた昭和八年当時の読者に心重なるよう。時代を感じながら始まるあまりにも血生臭い不可解な犯罪事件。ぷつりと途絶えたその先にあるものにページを捲る手が進む。迷宮に迷い込むような感覚、きちんと乱歩の心を写しとるような組み立て方はもちろん、紙切れの考察から放置の理由までの繋げ方は感嘆の吐息。まるで血を通わせられ肉付けされ眠りから甦ったかのような令和の悪霊に拍手。2024/03/21
佐藤(Sato19601027)
106
乱歩が「悪霊」の連載を開始したのは、1年7ヵ月に及ぶ長期休筆明けのこと。親友の横溝正史が病気療養中で、無理して執筆を再開した側面もあるようだ。同時期に「妖虫」「黒蜥蜴」「人間豹」などの雑誌連載も始まり、書簡形式で書き進める「悪霊」は、横溝正史にトリックを見破られた上、編集者との確執があり、中絶してしまう。今回、乱歩ファンを自認する芦辺先生が補筆・加筆し、昭和初期の雰囲気も残しながら、江戸川乱歩自身を登場させることで、伏線を全て回収し、90年ぶりに物語を完成・完結させた。面白い、そして、この努力に感謝。2024/06/06
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