内容説明
「生きることに意味はあるのか?」 この問いを分析哲学的に研究する知られざる21世紀英語圏の新しい哲学的ムーブメントを紹介し、各自の観点から実際に探究する入門書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
特盛
32
評価5/5。個人的に最近読んだ哲学読み物の中で最も良かった本。本書は、人生かく生きるべし、という形而上学な真理の提示を目的としない。分析哲学アプローチを中心に、人が人生の意味を問う時に、一体何を言っているのか?という論点が国内10人の哲学者により考察される。近年の海外分析哲学論壇での議論も多々紹介される。議論の多様性は見落としがちな自由度でもある。この呪われた問いに対しては、何かの像に延々ハマる人も多いのではないか。行先は分からないが私には展望はより開けた気がする。私も死ぬまで格闘していかねばならぬ2024/06/13
buuupuuu
21
人生の意味への問いは漠然としているが、それを明確化する試みとして読むことができる。もちろん編者森岡が言うように、スコラ的議論にふけるうちに、元来の問いを見失ってしまうこともありうるのだろうが。いわゆる分析哲学の文脈では、人生の意味を成り立たせるものは何かという問いが、中心的な問いになっているそうだ。それは成果なのか、正しい行為なのか、主観的な満足なのか。また問いによって何が求められているのかを考えることも重要だ。そのような問いは、現状が耐え難いときや、周りから承認されていないときなどに発せられるのだから。2024/08/01
YT
9
自由意志が存在しないなら、実存的な生き方はキャンセルされてしまうのか?という疑問から人生の意味意味ってなんだというところに囚われ続けている。 幸福とはを追求すればその幸福に囚われてしまうように、人生の意味とは、と問うこと自体が誤りな可能性もあるのかなぁ。まさに呪いだ... 8章の、人生の意味の問の真理条件を特定することが適切なアプローチにはならない可能性に付いて吟味するうちに、現象学的アプローチがこの人生の意味に寄与できる面があるのではないかな?と思った。面白かった章をもっと掘り下げたい。2024/08/20
袖崎いたる
5
人生の意味について考えを深めるのに、よき。人生の意味と幸福とを分けるのは実践的なアイデアに思う。幸福でなくても意味がある。この味わいに開かれるだけで、いろいろ捗るものがあるんじゃなかろうか。古田徹也のウィトゲンシュタインの哲学を参照したものと、森岡正博のフランクルとニーチェとを引き合いに出した人生肯定の思想は効いていた。森岡による吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』の紹介に、後悔こそ吟味にあたう人生へ通じるというものがあって、良かった。山口尚の人生の意味に関する著書は読みたくなったね。2024/06/17
Tanaka
4
現代哲学における「人生の意味の哲学」についての一冊。「人生の意味の哲学」の論点が整理されており、見通しを良くするのに役立つ。とはいえ、各論においては難解な部分もあり、「入門」とはあるがかなり手強い。また、著者も言及しているが、対象が西洋哲学に限定されている点は残念。東洋哲学との接続、ならびに脳科学や心理学をはじめとする自然科学分野との連携も期待したい。今後の研究の発展を願うばかりである。2024/02/24