内容説明
デビュー作で思わぬ反響を呼んだ作家。次作の契約が決まるも原稿は一文字も進まず、前金は旅行に消えた。ある物理学者の回想録ゴーストライターの仕事が決まるも学者は失踪。このまま消えるかサイケデリック療法か。窮地に立たされた作家の精神世界を巡る長篇
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ジョンノレン
54
素晴らしい作家に出会った翻訳も秀逸、読友に感謝。 一度短編集が売れたことのある作家が20年来患ってきた「自殺性うつ病」と対峙しつつ創作の生みの苦しみなどと葛藤しつつも、パートナーの支えもあり、これを乗り越える悪戦苦闘の物語。うつ的不安要素をはらみつつも、目を見張るほど率直かつ濃密でスケール感もある独白は即興音楽のように滑らかに流れ、吸い込まれる。イタリアへの新婚旅行の途上から自叙伝のゴーストライティングを依頼してきた物理学者と会うまでに家族との葛藤や有害化学物質流出事故、うつ対症等の回想が豊かに語られる。2024/08/16
ヘラジカ
39
語り手と共に思索の迷宮で迷子になる。決して読みづらくはないが奇妙な小説。鬱病と戦いながら瀬戸際を生きる主人公の独白は焦燥感でヒリヒリしているが、何故かあまり重たさは感じられない。形容し難い読み心地である。幸いなことに作中で重要な存在であるマイケル・ポーラン『幻覚剤は役に立つのか』は既読だったので後半はとても興味深く読めた。ただし、ラストの量子重力論を交えた「ある対談」の内容は、正直に言って殆ど意味不明であった。本当に浮遊感を残す着地。「とりとめがない」と言ったらそこまでだが、それも癖のある味わいで面白い。2024/02/01
R
27
ほとんど理解できなかった。うつ病を克服するのに幻覚物質を使ったという体験記という一面もあるそうだが、そのせいなのか、現実と幻想と妄想と物理と哲学がまさにごたまぜになった内容に、ある面は共感や納得を得るのだが、全体通してなんだとは理解できないという大変難しいものだと感じた。私には難解すぎた。時間概念と、他人の過去をたどるうちにその区別が曖昧になるという話しが興味深く面白かった、自分のことのように書き換わっていることはままあるな。最終的にうつ病を寛解したように読めたのだが、どうなんだろう。2024/05/20
Ai
9
SF味を楽しむよりも、重度の鬱病の主人公の視点からのパートナーと家族の話に鬱々としてしまった。どうも著者本人の体験をもとにしているようなので、エッセイとしてなら受け入れられるかもしれない。2025/01/06
GO-FEET
6
《様々な読みを可能とする本書であるが、(中略)『幻覚剤は役に立つのか』(マイケル・ポーラン著、亜紀書房、2020)などの書物にあたってから読み返したなら、読後感はジャンルを左右するほど異なるもの になるはずだ。そこでは、『幻覚剤は役に立つのか』という書物があたかも幻覚剤のように働いて読後感/世界観を変化させることになる。 しかし改めて考えるなら、読書というのは本来、そうした世界観の変化を引き起こす(危険な)行為だったはずであり、薬の効きすぎには警告をしておくべきであるかもしれない。》(円城塔) 2024/04/22
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