内容説明
戦争は悪だ。しかし、悪であって、なお正義であり得るのはなぜか。そして、戦争を悪だと告発することがアリバイ証明と自己弁護、他を非難するための手段として利用されるのはなぜか。「道徳問題としての戦争と平和」ほか、ギリシャ哲学の碩学が戦中・戦後の政治的問題を考察した一七篇。文庫オリジナル。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ex libris 毒餃子
8
良本。ギリシア哲学の専門家としての知識から批判する現代日本の有り様は非常に評価できる。「愛国心とナショナリズム」においてはパトリオティズムをギリシア語から引いたのちに「ナショナリズム」を行動形態と定義するところが慧眼である。また、保守論客として「反戦」を言葉の使われ始めから左翼陣営の言葉と言ってのけるのも面白い。2024/02/25
おやぶたんぐ
4
著者は、保守系論客として、“平和憲法だけで平和が保証されるなら、ついでに台風の襲来も、憲法で禁止しておいた方がよかったかも”と書き残したことが引き合いに出されるようである。もっとも、本書を読む限り、著者の信条は、精神的盲目性からの自由にあるようだ。「しかし」を繰り返す自問自答の文章からもそれが強くうががわれる。先の文もその観点からみるべきか。そして、p64「(ソクラテスの)愛国心は、憂うべき現実を美辞麗句で飾り立てたりして、国民の低調な虚栄心に阿諛するデマゴーグ的行為を許し得なかった」(以下コメ欄)2024/03/17