岩波新書<br> 感染症の歴史学

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岩波新書
感染症の歴史学

  • 著者名:飯島渉
  • 価格 ¥946(本体¥860)
  • 岩波書店(2024/01発売)
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  • ISBN:9784004320043

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内容説明

パンデミックは世界を変えたのか――新型コロナの大流行を経験した私たちには,疫病と人類の関わりを問い直すという重い課題が突きつけられている.最新の知見をふまえて天然痘,ペスト,マラリアの歴史を振り返り,ポスト・コロナ社会への教訓をさぐる.パンデミックの記録と記憶を掘り起こし,未来を考えるための疫病史入門.

目次

序 章 パンデミックが問うていること
はじめに
ロックダウンと「自粛」
新型コロナの「起承転結」
感染症は世界を変えたか?
第一章 新型コロナのパンデミック――二一世紀の新興感染症
「開発原病」としての新型コロナ
SARS,新型インフルエンザ,MERS
新型インフルエンザのレッスン
新型インフルエンザは,いつ,どのように収束したか?
「感染症のゆりかご」としての中国
中国政府の初期対応
武漢市のロックダウン
二つの武漢日記
ダイヤモンド・プリンセス号の長い航海
日本の緊急事態宣言(第一回)
感染の世界的拡大
「自粛」と日本モデル――緊急事態宣言(第一回)の解除
新型コロナと福祉国家
二〇二一年,再度の緊急事態宣言
東京五輪・パラリンピック
ワクチン接種の開始
保健所という現場
オミクロン株の出現
新型コロナの二〇二二年
ワクチンの光と影
新型コロナの衝撃
コロナ文学の可能性
ポスト・コロナの時代
パンデミックの資料,記録,記憶を残す
公衆衛生と人権,自由
日本社会への問題提起
国際社会への問題提起
第二章 天然痘のパンデミック――「世界の統一」から根絶への道のり
天然痘の現在
天然痘の世界史
日本列島への伝播
「コロンビアン・イクスチェンジ」と「細菌による世界の統一」
人痘という試み
琉球王国の人痘戦略
種痘(牛痘)――ジェンナーの挑戦
種痘のネットワーク
日本への長い道のり
「壬生の蘭学」
天然痘と「疱瘡神」
種痘という近代化――強制種痘の開始
種痘とGHQ
予防接種の時代
天然痘の根絶
天然痘のレッスン
第三章 ペストのグローバル・ヒストリー――パンデミックの記録と記憶
ペストの現在
シゲリスト『文明と病気』
新石器時代のパンデミック
ユスティニアヌスのペスト
黒死病の流行
黒死病の起源とマクニールのモンゴル帝国媒介説
黒死病のDNA解析
中国史上のペスト――開封の疫病はペストか?
ロンドンの大ペスト
ペストの「発見」
ペストのグローバル化と日本
一九〇〇年,ハワイ黒死病事件
ペストの中国史――伍連徳とポリッツァー
細菌戦をめぐる記録と記憶
ペストのレッスン
第四章 マラリアは語る――「開発原病」というリバウンド
マラリアの現在
マラリアの世界史
マラリアの日本史
北海道のマラリア
台湾におけるマラリアとの遭遇
森下薫のマラリア研究
戦争とマラリア
「しょうけい館」の世界
ウィラー・プラン――GHQのマラリア対策
マラリア根絶計画の系譜
レイチェル・カーソン『沈黙の春』
蚊取り線香の歴史
「橋本イニシアティブ」――国際寄生虫戦略
マラリア対策の政治化
世界のマラリア対策と中国のプレゼンス
マラリア対策の現在
マラリアのレッスン――「ワンヘルス」という課題
終 章 疫病史観をこえて
「開発原病」としての感染症――エンデミックからパンデミックへ
感染症は世界(歴史)を変えたか?
医学・公衆衛生の博物館
新型コロナをめぐる資料,記録,記憶
「小さな歴史」をすくい取る
「歴史総合」と感染症
感染症の歴史学のレッスン
文献一覧
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

kinkin

84
新型コロナがようやく収束気味だ、新型コロナの始まりから現在に至るまでを解説、また過去に流行した感染症である天然痘やペスト、マラリアについてもその歴史を振り返る。マラリアについては現在も流行している地域がありペストも散発している。それぞれ原因は究明されワクチンや特効薬はあるもののエボラ出血熱などはギリギリのところで食い止めているようだ。世界は疫病でせいで様々な事由を歴史に残している。コロナもワクチンで安心しては行けないと思う。またどこかで大流行するような気がする。図書館本2024/02/17

さとうしん

11
新型コロナとの対比から天然痘、ペスト、マラリアの流行や対策を読み解こうという試み。第一章はコロナ禍の簡潔にしてよいまとめとなっている。しかし新型コロナに関する記憶や記録は急速に失われつつあるとして、「デマ」とされた動画なども含めて保存の必要を訴える。新型コロナが中国政府によって人為的に開発されたという言説から731部隊の話などウイルスや細菌の兵器利用の試みを話題に出したり、日本による橋本イニシアティブの発想が中国に継承されているといった点を面白く読んだ。2024/01/24

馬咲

4
天然痘、ペスト、マラリアの流行と人類の対応の歴史を概覧しながら、新型コロナウイルスをそうした感染症の歴史の文脈に位置づけていく必要性を示す。感染症の歴史化とは、感染症の衝撃を受けて人間がどう社会を変容させたかを問うことであり、コロナ禍以降散見される「感染症は世界を変えた」といった言説の正確な理解のためにも重要となる。人類と感染症の関係は、全貌解明に尽力した科学者達の功績のような光の面だけでなく、植民地支配や差別の歴史にて、感染症の流行とその対策がしばしばそれらの正当化理由になったといった陰の面でも根深い。2024/03/09

Mealla0v0

2
本書は新型コロナウイルスのパンデミックを歴史化する試みだ。コロナ禍は世界中の人々に大きな影響を与えたにも拘らず、コロナに関する資料や記録を残す努力は特段なされず、むしろその記憶と記録は忘却と変形を余儀なくされている。そこで、著者は歴史学者としてコロナ禍での出来事を書き留め、資料を残し、他の感染症とを比較する。それは感染症が歴を変えたというような大文字の歴史だけではなく、人々が日々をどう過ごしたかという「小さな歴史」を掬い取ることでもある。2024/04/22

転天堂

2
『感染症の中国史』の著者による、新型コロナウイルス感染症の歴史化に向けた取り組みの必要性を、天然痘、ペスト、マラリアのかつてのパンデミックとその対応などを手がかりにしながら論じている。たしかに4年経ったところでいくつかの物事は忘却されてきているのに我ながら驚くが、この経験を歴史学の検証に耐え得る形で記録を保持し分析していくことはこれからの人類にとって不可欠であるのと思う。2024/03/12

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