岩波現代文庫<br> 排除の現象学

個数:1
紙書籍版価格
¥1,760
  • 電子書籍
  • Reader

岩波現代文庫
排除の現象学

  • 著者名:赤坂憲雄
  • 価格 ¥1,760(本体¥1,600)
  • 岩波書店(2024/01発売)
  • ポイント 16pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784006004620

ファイル: /

内容説明

〈かれら〉を攻撃し,かれらと異なる〈われら〉であることに安寧を求める社会に,未来はあるのか.いじめ,ホームレス殺害,障害者施設設置反対運動,宗教集団への批判,超常現象への傾斜――80年代に世間を賑わせた数々の事件から,異人が見出され生贄とされる,共同体の暴力を読み解く.時代を超えて切実に響く傑作評論.

目次

はじめに いま,暮れなずむ黄昏の異人たち
陽だまりの老人は異人である
現代版・姥棄て伝説
少年たちが老人を襲う時
汝の隣人は汝自身である
序章 さらば,寅次郎の青春
棺桶のなかの寅次郎
寅次郎はパンツを脱がない
植物的異人としての寅次郎
寅次郎という古さびた生の様式
第一章 学校/差異なき分身たちの宴――いじめの場の構造を読む
学校に追われる子どもたち
冗談関係あるいは全員一致の暴力
教室のなかの異分子たち
抽象化または規則なきゲーム
強迫的なるものとしての学校
供犠という分身たちの宴
排除にむけたあらたな差異の発見
差異の戯れとしてのファッション
第二章 浮浪者/ドッペルゲンガー殺しの風景――横浜浮浪者襲撃事件を読む
浮浪者とはだれかという問い
市民たちの浮浪者狩り
野にある異人たちの風景
交易の不在としての浮浪者
浮浪者という禁制の鏡
境界とその侵犯者たち
かぎりなく日常化された供犠
第三章 物語/家族たちをめぐる神隠し譚――イエスの方舟事件を読む
供犠の現場としての物語
神隠し譚という内なる眼差し
神隠しをめぐるいくつかの物語
マス・メディアのなかの物語
拡散する家族たちの風景
イエスの方舟という異界
妖術師または供犠という主題
コムニタスとしての方舟
第四章 移植都市/鏡の部屋というユートピア――けやきの郷事件を読む
いま逐われる異人たち
カオスを排除した移植都市
ニュータウンという危うい日常
ユートピアとしての鏡の部屋
親密な関係世界への回帰
全員一致にあらざる供犠
第五章 分裂病/通り魔とよばれる犯罪者たち――精神鑑定という装置を読む
舗石の下の異人たち
通り魔が分裂病と出会う場所
外部としての精神分裂病
精神分裂病?了解不能性?動機なき犯罪
負の物語の産出メカニズム
物語を拒む犯罪者たち
第六章 前世/遅れてきたかぐや姫たちの夢――1/2の少女マンガを読む
ここではない,どこか
前世への旅または自殺ごっこ
ダライ・ラマの転生
定型としての転生の物語
異界と交信する彼岸の人
少女らの転生譚のはてに
たそがれのかぐや姫たち
終章 失われたヒーロー伝説
丁稚どんはどこへ行ったのか
異形のヒーローたちの黄昏
乞食と祭りの失われた都市にて
シンちゃんをめぐる風景
補章 『童夢』を読みなおす
あとがき
筑摩書房版あとがき
ちくま学芸文庫版あとがき
岩波現代文庫版あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

てつ

26
原典は少し古く、テーマも少し古いが取っつきやすく読みやすい評論。2024/05/06

モルテン

9
読んでる間、ほとんどずっとムカついていた。どうしてこんなに腹が立つんだろうと思いながら読んでいた。本書は、排除されるものたちが、どのように、何故どうやって排除されるのかを書いたものである。もとは80年代に出版された本らしい。著者は新聞記事や雑誌記事など、すでにフィルターを通した事件をさらに自身のフィルターに通して語るため、事件を著者の語りたい物語に形を変えているように受け取った。排除の構造を語りながら、著者自身も新たな排除の物語を作ってしまっている。言説分析に徹底していないので、排除の構造の解説→ 2023/04/25

どら猫さとっち

7
いじめ、ホームレス殺害、宗教団体の批判、通り魔など、何故「異人」が見出され、標的にされやすいのか。差別、忌避、憎悪が渦巻くなか、事件が起きる。80年代に起きた事件から、共同体の暴力を読み解く社会評論。80年代に起きた事件の根源は、今も残っている。ヘイトスピーチもそのひとつだ。今、本書が二次文庫化されたことは、ささやかながら確かな希望になるかもしれない。2023/04/23

おやぶたんぐ

3
〝異人“だから排除するのではなく、排除するために〝異人″の役目を押し付ける。自身を、共同体(社会)を維持するために排除を行う、という本書の指摘はおそらく正しい。もっとも、本書は、現代(80年代だが)の悪性故に状況は悪化している(〝昔は良かった″と紙一重)と述べているように思われるが、賛同できない。上記の構造は本質的、普遍的なものであって、それが時代とともに様相を変えているにすぎないのではないだろうか。あと、第5章は素朴な反精神医学に寄りかかりすぎていて、とんでもない誤解や誤謬を招きかねないように思う。2023/04/29

kentaro mori

3
●秩序は差異の体系のうえに組みたてられている。差異が消滅するとき、成員たちは模倣欲望の囚人となり、たがいに模倣しあい均質化してゆく。いわば、分身の状態。この分身化こそが、差異の消滅のさけがたい帰結のかたちである。そのとき、秩序は安定をうしない、カオスと暴力の危機にさらされる。自己とその影、あるいはオリジナルとコピーが殺戮劇を演じはじめる。このような分身の普及、憎悪を完全に相互交換しうるものにするいっさいの差異の完璧な消失は、全員一致の暴力の必要かつ十分な条件となる。●排泄物はなぜ臭いのか。それはバタイユの2023/04/12

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/20838759
  • ご注意事項