内容説明
貧しい家に生まれたひとり息子は,両親の愛情をまっすぐに受けとめて育ち,働きづめの母親を懸命に支えた.大好きな体操,個性的な先生たち,つらかったクリスマス,大金持ちになったおじ,母親との徒歩旅行……軽妙かつ率直に語られる数々のエピソードが胸に迫る.ケストナーのエッセンスがつまった傑作自伝,待望の新訳.
目次
まえがきのない本なんて
第1章 ケストナー家とアウグスティン家
第2章 小さなイーダと兄弟たち
第3章 将来ぼくの親になるふたりがついに出会う
第4章 トランク,腹帯,ブロンドの髪
第5章 ケーニヒスブリュッケ通りとぼく
第6章 先生,先生,先生ばっかり
第7章 大車輪と入学式のお菓子の袋
第8章 だいたい八歳の男の子がだいたい一日にすること
第9章 人生のささいなことがらについて
第10章 深刻な結末をむかえたふたつの結婚式
第11章 子どもの悩み
第12章 フランツおじさん,大金持ちになる
第13章 アルベルト広場の邸宅
第14章 レーマン先生のふたつの顔
第15章 母,水を行き,陸を行く
第16章 一九一四年
最後にあとがき
訳者あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たまきら
38
あっ、ケストナーにこんな本があったんだ!とビックリして手に取りました。初版は1957年。絵も懐かしい感じ。昔子どもの頃読んだ本のかおりがします。この作家さんがどうしてこんな作家さんになったんだろう?という私の好奇心は、裏切られませんでした。思わず笑ってしまうようなエピソード、皮肉たっぷりな世間の描写はまさにケストナー節!…そんな中でお母さんを語る言葉には深い愛と悲哀が感じられてどきっとしました。彼は自分の中の子どもにも文章を書いていたのかなあ…。2023/11/29
スター
33
著者のケストナー自身が15歳になり第一次世界大戦が始まるまでの子供時代を書いた自叙伝。ケストナーの本を読むのは初めてだったけど面白かった。 第一世界大戦前のケストナーの故郷であるドイツのドレースデンの様子が生き生きと描かれている。2024/08/03
Roko
27
子ども時代のいたずらや体験が彼の作品に大いに生かされていたということが、この本を読んでよくわかりました。馬を売買してお金持ちになった伯父さん夫婦のこと、体罰をする先生のこと、働く子どもたち、母親と山を歩いたり、お芝居を見たりしたこと、父親がランドセルを作ってくれたこと。ドレースデンという美しい街で育ったこと、1945年の空襲でこの街が破壊されてしまったこと。エーリヒ・ケストナーという人の繊細さも強さも、すべてがこの子ども時代に培われたものなのです。様々な経験を彼に与えてくれた両親や町の人たちに感謝です。2023/09/26
あや
23
子供の頃ケストナーの児童文学を愛読したけど、ストーリーの面白さもさることながら、文体が面白かったことを思い出させてくれた。父方、母方の先祖の話から両親の生い立ちから、自身の誕生、15歳までをわくわくするような筆致で描く。35歳で美容師の技術を身に着け美容院を自宅で開業する母イーダ。一人っ子として育ち、優秀な成績を納め、自慢の息子だったに違いない。美しい街ドレスデン。ホルスト・レムケさんの挿絵と池田香代子さんの翻訳もこの本をさらに面白いものにしている。2025/07/04
北風
16
ロッテや点子ちゃんが好きなので、ケストナーのエッセイということで興味津々。他の作品には、やはり彼の人生が詰まっていた。探偵エーミールに、アントンなど、彼自身が反映されているのがわかる。あとは、飛ぶ教室とかね。基本、貧しくても頑張ってるのは、ケストナーの子供時代も同じなんだな。つか、犯人を尾行するって、実際にしていたなんて! 彼は、親戚のおじさんたちみたいに金持ちになろうとはしなかったのか。お母さん頑張り過ぎ。息子のために、献身的すぎて追い詰めていたのが、なんか、…いつの時代も母親の愛情は強し。2023/08/27