時代小説文庫<br> おたふく物語

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時代小説文庫
おたふく物語

  • ISBN:9784758433235

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内容説明

町人たちの暮らしの姿、現実を生きてゆく切なさに焦点を絞り、すぐれた「下町もの」を数多く遺した山本周五郎。本書は、自分たちを“おたふく”と決めこんでいる明るく元気のいい姉妹をいきいきと描いた「おたふく物語」三部作(「妹の縁談」「湯治」「おたふく」)をはじめ、身分の垣根を越えた人間の交流を情愛たっぷりに綴った「凍てのあと」、女性の妖しさと哀しさを濃密に綴った「おさん」の全五編を収載。江戸に暮らす女性たちの姿を見事に切り取った名作短編集。文庫オリジナル。
(編/解説・竹添敦子)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

じいじ

114
山本周五郎傑作の一つ、短篇『おたふく』を含むシリーズ三部作。美人で生真面目でユーモアに富んだ姉おしずを主人公にした連作三篇は、文句なしの面白さです。とにかく、この姉妹のキャラが秀逸。同じ親から生まれてもこうも性格が違うものなのか…。周五郎の筆の巧さが光ります。二人の会話に腹の底から笑いがこみ上げてきます。人情とユーモアにあふれる江戸下町の温かい風情が描かれていて、ほっこりした気分を味わえる、たいへん読み心地の好い一品です。2019/02/21

じいじ

80
お気に入りな噺家の落語は、何べん聞いても飽きません。まさに山本周五郎は、わたしにはそんな作家の一人です。ここに収載されている人情味あふれる「下町モノ」は、彼のなかでもとくに大好きです。とりわけ「おたふく」シリーズの三篇は、ほんのり笑えるその読み心地が何とも言えません。主人公のおしずさんは、少しばかり肥って小柄ですが、もって生まれた気立ての良さと明るい性格が魅力です。自分を「おたふく」だからと謙遜する彼女がいじらしく、私は大好きです。この小説は何度でも読み返したい一冊です。2024/12/17

タイ子

68
おたふくと言えば想像したのが、京都のおたべちゃん。彼女は舞妓さんなんですけどね。本作に登場するのは江戸に生きる明るい姉妹。おたかとおしずの物語。自らおたふくと言ってはいるけど、人から見ればめっちゃ色白で器量よしの2人。お嫁にいけない、いや行かないわけがあるっていうのが気になり止められない。いずれ嫁いだ2人なのだが、そののちに起こるおたか夫婦の話がいい。うーん、じれったい。妬いて妬かれて…恋物語の展開にキュン!「おさん」の情欲の深さに逃げだす男の話も面白い。江戸に生きる女たちのたくましさをまた一つ読んだ。2025/03/31

ココ

38
人情の機微が優しく、温かく描かれ、安心感を覚える。山本周五郎、未読の作品がまだまだ沢山あることが、何故か嬉しい。2019/03/13

キムチ

29
生涯2人の女性と連れ添った周五郎。どちらも彼の作品に色濃く影響を残しており、この連作は、まさにその日々の在り方を登場人物の言葉・容姿・しぐさ等で彷彿とさせている。若干名前を変えて登場するが、いずれも下町の元気がいい2人姉妹。自分をてらわず、男に身をゆだねる妖しさ、そして自らの立場を噛みしめて後ずさりしようとしてしまう哀しさを併せ持つ姿が平易な言葉で綴られる。てらった言葉が一つもないのに、日本人の原点の姿が浮かび上がる1冊。 兄として登場する栄二は「さぶ」の栄次と面影がだぶる。2014/01/04

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