内容説明
夫とは職場の友人を通じて知り合った。口数は少ないし、ぶっきらぼうだけど、優しい。結婚して智晴(ちはる)が生まれ、慎ましいながらも幸せな3人生活が始まった。しかし生活はなかなか立ち行かない。息子を預けて働きに出た由紀子は、久しぶりの仕事で足を引っ張りながらも何とか食らいつき、家庭と両立していく。そんな矢先に発覚した、双子の次男と三男の妊娠……家族が増えてより賑やかになる一方、由紀子の前に立ち塞がる義母の死、夫との不和、そして――。「家族は時々、形を変えることがあるの。だけど、家族はずっと家族なの」。どんな形をしていても「家族」としてどれも間違ってない、ということを伝えたかったと語る直木賞作家・窪美澄が放つ、渾身の家族小説。文庫版には家族のその後を描いたスピンオフ短編「ははのけっこん」も収録。解説・白石一文
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆいまある
80
窪美澄さん大好きなんだけど、これは合わなかった。無口な女と男が家庭を持ち子供が産まれ、無口な男は他に恋人を作る。いらん事ゆいの異名を持つ言いたいことは倍にして言う私は、言いたいことを言わない主人公由紀子にもー、モヤモヤする。2年間揉めて離婚。しかも男の再婚相手の連れ子が長男と同じクラスになる(いや、クラス分けるだろ。学校だって)。男が家庭を捨てたあと、長男は弟達を育て母を守りヤングケアラーとして生きる。「家族の形は変わっていく」と言い男の再婚相手の一家とも仲良くなる。いや、綺麗事やろ。うーん。KU2025/06/22
はる
30
[kindle unlimited] 久しぶりに家族ものの小説で泣けました。田舎町に住む平凡な主婦の結婚から始まり、子育て、夫婦間の問題、義家族とのつながりと進んでいくがやがて離婚。そこまでは話がどう進むんだろうと思いながら読めます。後半からは、長男「智晴」の目線がメインになって進んでいく。何度も涙を誘う優しい書き方がさすが窪さんですね。2025/05/30
ソフィア
13
まるでホームビデオを見終えたかのように清々しい気持ちになれる本です。始まりは、妊娠しながら夫と義父母とともに家業の縫製を手伝う由紀子がミシンに向き合うところから。よくある「小さな幸せが大事」系のお話かと思いきや、変わりゆく家族の形が物語の本筋で、目が離せなくなります。視点が息子の智晴に変わる第二部からが特に良かったです。10年後くらいに読み直したい本。2025/05/24
MINA
12
数年ぶりに再読。去年からちらほら窪美澄作品文庫で購入するのにハマり気味。形を変えても家族は繋がっていける。それはある意味理想形なのかもしれない。離婚等々で縁が切れてしまうことも往々にしてきっとあるのだろうし。最初は「はは」の孤独や苦労に憂慮し夫の不甲斐なさに腹立たしかかった。けど、徐々に皆それぞれ弱くて情けなくとも必死に生きてくしかないのだと思えるようになり、気付けば彼らの幸せを願っていた。白石一文の解説も良かったな。窪美澄自身も波乱万丈な人生みたいで驚き。文庫描き下ろしその後の掌編もうれしい。2024/02/28
まつこ
11
みんな悪い人ではなく、でもちょっとした一言や態度でモヤモヤするのがリアルです。智久みたいなタイプはイヤだー!由紀子はよく頑張ったと思う。2025/03/28