内容説明
1925年に成立した治安維持法。歴史の闇の中であっても輝きを放つ、「敗れざる者たち」の矜恃とは――?
『蟹工船』の取材と執筆に熱中するプロレタリア文学の旗手・小林多喜二。
反社会的、非国民的思想犯として特高に監視される反戦川柳作家・鶴彬(つる・あきら)。
同業他社の知人たちに不可思議な失踪が続き、怯える編集者・和田喜太郎。
不遇にありながら、天才的な論考を発表し続ける、稀代の哲学者・三木清。
己の信念を貫く男たちを、クロサキと名乗る内務省の男が追い詰めてゆく。
彼らはなぜ罪なく裁かれたのか?
累計130万部突破「ジョーカー・ゲーム」シリーズの著者が令和の世に問う、もう一つの傑作スパイ・ミステリ!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
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21
戦時下に起きていたかもしれないスパイ小説。全4話に共通して登場するのは内務省の役人クロサキ。始めに『蟹工船』の小林多喜二。特高に目を付けられていたことや銀行員だったことなど知らなかった。その他川柳作家・鶴彬、哲学者・三木清なる人物もウィキペディアで調べたところそれぞれが実話に基づいたフィクションだった(先に見るとネタバレになるので要注意)。匿名の密告、特高の凄まじい拷問、治安維持法の取り締まる側に都合のよい解釈など、戦争によって正常な判断を放棄し残虐になれる人間が恐ろしい。2024/02/28
ちさと
20
治安維持法の犠牲となった実在の文化人に光を当てた連作集。直接的には接点のない4つの事件を取り扱っているが、全編を通して国家権力が狂った様に暴走していく様が苦々しいほど描写され、そんな時代にあっても信念を貫く個々人の生き様を丹念に描いている。「我々の尊厳のすべては考えることの内にある」。最後にわずかな希望の光を与えて終わっていることが救いだ。ミステリとしては「カサンドラ」、個人的には三木清が題材になっている「赤と黒」に引き込まれた。紹介してくださった読友さん、とても興味深く読みました。どうもありがとう!2025/06/08
ぶぅすけ
18
戦時下の日本は共産党や反政府思想が厳しく監視・罰せられた。取締りの数にノルマが出来、でっちあげや拷問が横行する。そんな恐怖政治の中、小林多喜二、鶴彬、三木清など自分の信念を貫く『敗れない者たち』がいた。同調圧力に屈せず自分の頭で考え、行動することの大切さを教えられた気がする。三木清について調べてみたい。2025/06/30
み
18
新刊棚で見かけて、D機関のようなお話しかと勝手に思ってました。ちと異なる空気でした。戦争はヤですね。2024/03/06
ソラ
14
【読了】C スパイ小説とあってジョーカーゲームの続編かと思って購入したがシリーズものではない。ただ、この作者のスパイ小説に外れはないし、今作はスパイ小説というよりはあの時代に立ち向かった人々の小説といった印象を受けた。2024/02/03