内容説明
高校一年の夏、ぼくは彼に恋をした。
「ぼく」(羽田海)は、血の繋がらない継母の美佐子さんと二人暮らしをしている。
ぼくが高校一年の夏に、美佐子さんの仕事の都合で引っ越しをすることになった。
前の町で美佐子さんが勤めていた印刷会社が倒産したのだ。
幼いころは父さんと母さんがいたけれど
ぼくが六歳のときに母さんは家を出ていき、
その後、美佐子さんと結婚した父さんもどこかに行ってしまった。
勉強も好きじゃないし、運動も得意じゃない。
いつか美佐子さんとも離れなくちゃいけない。
そんなとき、「ぼく」は、転校先の高校で忍と出会った……。出会ってしまった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
241
窪 美澄は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本書は、BL海青春恋愛譚家族物語、感涙作でした。少し気が早いですが、本年のBEST20候補です。 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/97841639179312024/02/04
パトラッシュ
204
同性を愛してしまった少年の、繊細で壊れそうな恋の物語。その切なさ哀しさに深く感じる部分もあるが、この手の小説にありがちな展開や登場キャラが散見して、海と忍の設定も新しさがなく結末が見えてしまう。作者には「LGBTQはかくあらねば」との決めつけがあるのではないか。BL物が出版界で確固たる地位を占めている現在、むしろ古臭い話を読まされた気分だ。いっそ2人を平然とカミングアウトして交際する強い性格とし、それに戸惑ったり反抗する周囲や大人たちを描いた方が面白かったか。自分の趣味はこちらだと言われたらそれまでだが。2024/02/15
いつでも母さん
187
普通ってなんだろう・・窪美澄が紡ぐBLをちょっと歯がゆく切ない思いで読んだ。海と忍の恋が、多くの海と忍の恋心が自然にある世の中になって欲しい。いや璃子の恋心だって、沙織の思いだって叶わなくともそれはそれで尊いのだ。人が人を想う事に差はない。強そうに見えた忍の心が脆くて不安になったのは大きなお世話か(汗)とにかくこの物語に美佐子さんがいてくれて救われた感じだった。2024/02/08
ショースケ
143
これは『ルミネッセンス』の窪さんの作品⁉️いろんな顔を持つ作家さんと考えられるが、全くもって違う。文章表現から、雰囲気から、全然違う。主人公の高校生の海は実の母も父も家を出て血のつながりのない美佐子と住んでいる。子どもの頃から同性の男の子が好き。海、美佐子、忍、璃子、緑亮の立場での構成。全員に好感を持った。誰もがどうしようもない渦の中で葛藤し生きつ戻りつしている。最後が安直すぎたことが残念だった。終わり方は良かっただけに、もうひと工夫ほしかった。2024/03/08
のぶ
116
窪さんの新刊を楽しみにしていたが、ストーリーに刺激がなく、やや拍子抜けした。全体にありきたり感は否めない。そして登場人物にあまり魅力を感じられなかった。その中で美佐子さんは素敵な人だなと思った。本当の親じゃないから受け入れられたのかも、という言葉は冷静で胸が痛かった。現実、マイノリティとマジョリティの狭間で苦しんでいる人はたくさんいる。「こうでなければいけない」という枠組みから自由になれる世の中であればいいなと思う。本作にはあまり満足できなかったが、窪さんは出版のペースが早いので次作に期待しよう。2024/03/08