内容説明
32歳のピアノ講師・田口琴音は、さいきん仕事も恋人との関係もうまく行っていない。そんな中、ひさびさに連絡をとった友人との再会から、事態は思わず方向へと転がっていく――。静かな日常の中にひそむ「静かな崖っぷち」を描き、心ゆすぶる表題作(第170回芥川賞候補作)。
選考委員の絶賛を浴びた文學界新人賞受賞作「アキちゃん」を併録。「すべての結果としてこの作品は、新人離れした堂々たる手腕を示すことになった」(川上未映子氏の選評より)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
199
第170回芥川賞候補作・受賞作第四弾(4/5)、初ノミネート正に新人、三木 三奈、初読です。才能は感じられますが、第167回受賞作「おいしいごはんが食べられますように」に似た不穏な感じのため、受賞はなかったのかも知れません。 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/97841639181292024/02/21
fwhd8325
105
表題作と「アキちゃん」の2編収録。両作品とも面白く読みました。2つの作品に共通する感情の波は、私自身にも覚えがあるような、嫌な感情でした。あらためて言うことはないけれど、小説は本当に面白い。そして作家先生は凄いと思いました。2024/02/26
シナモン
103
文學界2023年10月号で読了。会話で埋め尽くされた文章にリアリティを感じた。とどまることを知らない不安定さや危うさ。読みやすくてあっという間に読了だったけどその不穏なパワーにどこかやり切れなさを感じる一冊でした。2023/12/24
花ママ
63
第170回芥川賞候補作。32歳のピアノ講師琴音。会社を辞めて、親に家賃を出してもらう暮らし。ピアノ講師だが、ピアニストの技量はない。友人との関わりも自分本位にしか見えず、ここまで人物の生の姿を描くのかと。文学界新人賞を受賞した「アキちゃん」も複雑な人間関係や、小学生特有のカースト制がシビアに描かれていた。2024/03/03
いっち
62
「アイスネルワイゼン」は夜想曲「ツィゴイネルワイゼン」をもじった曲。どうしてもじったのか、わからない。主人公は32歳女性で、フリーのピアノ講師。以前は会社に所属し、大人にもピアノを教えていた。今はフリーで収入が減った。母親にお金をもらって生活している。友人から演奏のバイトを紹介されたが、バイトは散々だった。前情報が不足していた。自分のいないところでは、自分がどんなふうに言われてるか、わからない。発言者を否定できる人がその場にいなければ、人は好きなように言えてしまう。都合の悪いことを隠すことができてしまう。2024/01/03