内容説明
太陽に抗った聚落の子孫ヌフレツンは、運命に導かれてバイオンリの奏で手を目指す。迫る太陽消失。響け、祖先の遺した禁忌の音。日本SF大賞2度受賞の異形の天才がおくる書き下ろし長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
103
長篇作。いやあ圧巻の読み応え、面白かった。神話とディストピアと異生態の世界が融合したような物語。序盤は造語の羅列で分かり難かったが慣れるにつれて読みが加速。目の前で繰り広げられる独特な別世界の運命が蠢く姿が見せ付ける魅力の虜になった。球凹面形の球地(たまつち)で生きる落人たち。天ではなく地の黄道を駆ける太陽はその者達にとって絶対的存在。しかし異変が。月と太陽、責苦と戻生、犠牲か栄誉か、継承する家族愛。二度のクライマックスに感極まり放心。生ける愛すべき者たちへの大聚奏、余韻に包まれながら世界へ思いを馳せる。2024/01/11
そふぃあ
24
球地(たまつち)と呼ばれる球体内面の世界には、落人(おちうど)という知的生命が住んでいる。太陽は天ではなく地上を定まったルートで巡る巨大な蟲のような存在で、その"太陽"を中心に落人の生活や文化が営まれている。例の如く独創的な造語を用いて描かれる世界は生々しい質感を帯び、太陽への生贄にされることを至上の喜びとする慣習や、蟹を解体する危険な仕事、落人を喰らう"月"と呼ばれる化け物と戦う"奏で手"たちが、確固たる存在感を持って描かれる。非常に完成度の高い世界観に没頭できて最高の読書体験だった。2023/12/16
ふりや
19
今年一番楽しみにしていた小説。最高でした。あまりにも面白かった…。人間のような生物が住む球地(たまつち)を舞台に、親から子へと引き継がれる絆の年代記。そして飛浩隆さんの『零號琴』と並ぶ音楽SFの傑作。独特の造語と当て字を駆使した酉島節はより読みやすくブラッシュアップされ、読者の想像力を掻き立て、まるで物語の世界に入り込んだかのような没入感を味わえました。そしてクライマックスの鳥肌が立つような興奮と静謐なラスト。酉島作品の中でも大好きな『宿借りの星』と並ぶものすごい名作でした。間違いなく2023年のベスト!2023/12/10
ひびキング
10
やはり酉島伝法さんは凄い。今作は音楽と月と太陽。うねるような生の中ち知らずに取り込まれて、自分が人間じゃなくなっていく感覚が気持ち良い。読みかけて、一旦本を置いての繰り返しで、人じゃなくなるのと人に戻る名を繰り返すのもかなりのエネルギーを消費する。世界を創造する、それは神。2024/01/23
ノベツ
9
SFで異形なのに朝ドラ! 太陽が地を歩く球状地底世界で、人だけど人じゃない一家3世代に渡る日常と死にゆく太陽が描かれる。ラストの壮大さも素晴らしいが、丁寧な日常描写こそ愛おしい。大満足の一冊。 長文感想↓ https://note.com/nobetsu/n/nc84740225590?sub_rt=share_pb 2023/12/27