内容説明
東京から大阪へ移り住み、京都の大学で教える哲学者の「僕」。男性同士の関係である年下の恋人は、料理の好みが似ていて、僕の文章を楽しそうに読む。その穏やかな距離がもたらす思慕――。行きつけのバー、熱帯魚、故郷の家族と友人たち、折々のツイート。かけがえのない日々を鮮やかに描いて芥川賞候補作となった「オーバーヒート」。川端康成賞を受賞した傑作短編「マジックミラー」を併録。(解説・羽田圭介)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
OHNO Hiroshi
4
女女はどうなのか、気になった。 息子の嗜好を知って母親どうなるのか、と思う。2024/03/03
justdon'taskmewhatitwas
3
帯文は"究極の恋愛小説"。体の関係はあるのにLINEの返事が遅い恋人。ベースは決して特殊ではない。作者を思わせる主人公は恋人が出来/歳を重ね、ハッテン場からTwitterへ承認欲求の対象を肉体から言葉に変える。欲求解消の場は他人の目に晒される場でもあり、賛同と批判が変転する率直な世界で長年研鑽したセンスと練磨されて来たという自負が、現役40男のねとっとした恋愛依存の日々をトゲと臭みが残るも、読むと丁度いい出色の小説に仕上げている。──2編とも前作と地続きとして読んだ。前作での疑問に解答となる箇所もあった。2024/05/10
大福
3
25冊目、読了。 男でも女でも、パートナーがいることが羨ましい。 バーでも部屋でも居場所があることが大事だよね。 多分、同性愛も男女の恋愛も特別なことって普段起こらなくて、でも不安は普段からちょこちょこあって そんな日常が描かれていました。2024/02/12
にしざわ
2
「オーバーヒート」の文章は即時的(≒ツイッター的)な印象があっておもしろい。生理的な嫌悪感を論理立てて説明しようとしたり、事務仕事に向き合ったり、四十代のゲイであることを思考したり、馴染みのバーでひとりツイッターを眺めたりする様々な日常の場面ごとに思考の文章や文体というものももちろん変わるはずで、そのリアルタイム性のようなものを文章として捉えながら、徹底的に練り上げられていてすごいと思った。2024/03/12
みおりえんぬ
1
ツイ廃の主人公が「言語は醜い!」「言語は存在のクソだ!」(すごい名台詞)と煩悶し「あの男たちが跳梁する空間」に焦らされ続ける。「単純極まりない生命の方へ果てしなく戻っていきたい」のに、男が二人で生きることにゴールはなく、落下の過程を引き延ばすことしかできないのだとしても、手を伸ばし続けるんだろうという希望と美しさがあった。2024/11/12