スターリンの図書室:独裁者または読書家の横顔

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スターリンの図書室:独裁者または読書家の横顔

  • ISBN:9784560093597

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内容説明

血まみれの暴君は「本の虫」でもあった

スターリンの蔵書は、マルクス、エンゲルス、レーニンの著作はもとより、トロツキーなどの政敵の著作から、ビスマルクやマキャヴェッリなどの古典、トルストイ、ドストエフスキー、ゴーゴリ、チェーホフなどのロシア文学、シェイクスピア、セルバンテスなどの外国古典文学に至るまで、読書の幅はきわめて広い。また、スターリンが興味深く読んだと思われる本には、多数の書き込みが残されていた。本書は、スターリンの膨大な蔵書と書き込みを精査して、その生涯と思索の跡をたどりながら、独裁者の本質に迫る試みだ。
逸話を紹介しよう。旧ソ連首相ルイシコフは、スターリンの蔵書であったマキャヴェッリ『君主論』を入手した。頁にびっしり書き込みが残り、まるで「独裁者の教科書」のようであったという。スターリンが下線を引いた文章を全て抜き出し、整理して出版したら、スターリンによる「マキャヴェッリ概論」になるほどだったと回顧する。
なぜ「知的な読書家」が無用な血を流したのか? 本書は、独裁者の図書室に入室して、その思想と信条から、革命と戦争、国政と外交に及ぼした影響、人格と感情の内奥にまで踏み込む。英の歴史家による、新趣向の伝記。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

131
史上最悪の独裁者は大読書家であり、手を血で汚すのを厭わぬ知識人だった。読書と思索に耽りながら政敵を排除して権力を強化し、大量の餓死者や囚人が出ても共産主義政策を躊躇なく強行したのか、スターリンの本の書き込みや下線を引いた部分の解析から「読書好きの暴君」の実像に迫る。目的のためには手段を選ばぬ政治家が理想実現の手段を読書に見い出したのは、知性と正義が同義ではない明白な証拠だ。スターリンが読書家でなければ大粛清や収容所群島、日本人のシベリア抑留もなかった。読書が人殺しをもたらした現実は、あまりにも救いがない。2023/09/08

tom

31
スターリンが大量読書家だったと知って読んだ本。読書の幅が広いことに驚く。マルクス等は当然のこととして、政敵はもとより、ロシア文学の巨匠やらシェークスピアなどの古典、戯曲、詩、何でも読み漁る。書庫には2万5千冊の蔵書、多くに書き込みがある。びっしりと書き込みしたものも多々。文学者の「へつらい」を嫌い、そんな文学者をあざ笑う。彼の虐殺への道筋を知りたかったのだけど、言及はなし。これが残念。ヒトラーも毛沢東も読書家だった。大量の本を読むことと非道の行い、リンクするようなしないような。きっと関係ないのだろう。2023/11/25

紙狸

19
日本語版2023年刊行。原著(英語)は2022年。著者はアイルランドの歴史家。スターリンの蔵書についての研究に基づく。ただ、蔵書の話だけではなく、スターリンが公に発表した文章なども材料で、一種の伝記になっている。スターリンはボリシェビキが政権をとった後の1920年代には、年間500冊の書籍を注文する読書家だった。お好みの分野は歴史、マルクス主義理論、小説。書き込みからうかがえるスターリンの思想は、なんといってもボルシェビキのそれである。「生涯を通じて、他人の思想、方法論、情報を活用しようとした」。2024/04/17

Toska

19
高い教育を受ける機会のなかったスターリンにとり、読書は自己を形成する重要な手段となった。スターリンの読書について知ることは、彼自身を知ることでもある。凄まじい規模の蔵書と多彩なジャンル、政敵の著作をも読み込もうとする姿勢、そして機知に富んだ引用と、スターリンは端倪すべからざる知的能力を持つ読書人だった。書物の効能を鮮やかに体現する人物と言えるかもしれない。その一方で、読書が必ずしも人間に善なる効果を与えるとは限らない、ということも証明されてしまった。2023/10/10

チェアー

13
スターリンのように、政敵や歴史上の人物について、これほど読み込んでいた人物はいなかっただろう。それは、未知の社会を作ること、頼るもののない日々を過ごすことへの恐怖だったのではないか。だから、先人に学び、使える言葉を探し、すぐ目の前の明かりとしたかったのだろう。 2023/10/18

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