内容説明
一九六〇年代に登場し、熱い支持と批判を浴びつつ孤高の文学世界を創造した倉橋由美子。その多彩な短篇群から、桜庭一樹が厳選し紹介する。「パルタイ」他初期作品、「移転」他文庫初収録の後期幻想作品、人気を博した「残酷童話」シリーズ、エッセイまでを網羅した新たなベストセレクション。〈対談〉桜庭一樹・王谷 晶〈解説〉小平麻衣子
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
阿部義彦
19
最近肩入れしている中公文庫の50周年記念企画の1冊。副題が掌の読書会となってます。桜庭一樹さんが選者となり倉橋由美子さんの作品世界の概要を紹介します。『パルタイ』は姉の本棚で見かけたし、私がトーハンでアルバイトをしてた頃には『大人のための残酷童話』がベストセラーになってました。いつかまとまって読みたいと思ってた作家です。SF風味の『合成美女』多重人格『亜依子たち』観念ゲーム『ある遊戯』そして『パルタイ』などどれも好みでした。あの『砂糖菓子~』の桜庭さんと似て、人間嫌い、デカダンスに溢れ、精巧な彫刻の様。2024/01/02
marumo
18
大人のための残酷童話しか読んだことがないのに、すごく好きっ、かっこいい、くーっ痺れるう…と思っていたのが倉橋由美子です。やはり「人魚の涙」はイカしてます。けれど、こうして初期作品から初めて読んでゆくと何というか思ってたのと違う…。けっこうスカしてますね。学生運動世代のアイコンだったようで、それは何となくわかるかな。「パルタイ」はまさに学生運動のさなかが舞台、徐々に冷めていく女の子の語りは面白かったです。桜庭さんと王谷晶さんの対談が興味深かった。いずれ、サラな気持ちで再読しようかなと思います。2024/02/12
Porco
10
私は『酔郷譚』しか読んだことがなく、デビューの時制柄学生運動に多大な影響が出てたり筒井康隆チックなSFも書いていたりと抽象的な表現が多いにしろジャンルを選ばない作家なことを知って驚いた。女流作家らしい全能感と蠱惑感満載で翻弄する少女に惹かれたりもしたが、何より『バルタイ』の文体や表現が学生が書いたものとはとても思えないほど完成度が高く、出典を見て度肝を抜かれた。2024/02/11
ペンギン
4
「パルタイ」が読みたくても絶版でなかなか読めなかったので、この機会での出版に感謝!時代別にさまざまな作品が収められているので、倉橋由美子入門としてもぴったりな1冊。初期の頃の硬質な文章や、豊饒なイマジネーション溢れる短篇など、いろいろ楽しめる。女性性を主題に置きながらもフェミニズム的ではない側面から作品を構築しているのが素晴らしい。今読んでも、まるで色褪せていない。2024/01/24
Cちゃん
3
大学生の頃ハマって読んだ倉橋由美子、特に「暗い旅」が大好きだった。今改めて読み返してみても全く古臭く感じないし、何かとてつもなくエネルギーが「爆発している」のではなく、「こもっている。」骨のある文章、独特の世界感。 もう一度「暗い旅」を読んでみよう。2024/03/30