内容説明
電子版は本文中の写真をすべてカラー写真に差し替えて掲載。
一五七五年、織田信長・徳川家康の連合軍と、武田勝頼率いる軍勢が激突した長篠合戦。足軽鉄砲隊の一斉射撃という信長の新戦法により、武田の誇る騎馬隊が潰滅した、画期的な戦いとして知られる。小説や映像で繰り返し描かれるこの鮮烈なイメージは、どのように形作られてきたのか。伝来する合戦図屏風ほか、様々な関連史料を検証し、虚飾に彩られた決戦の実像に迫る。最新研究をふまえて提示する、長篠合戦論の総決算。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
128
長篠合戦について客観性のある史料では鉄砲への言及は少なく、酒井忠次率いる別動隊による長篠城救援作戦が中心だったという。それが江戸時代には参加武将の子孫による先祖顕彰もあって次第に物語化され、戦国の歴史が一変する大会戦とされていった事情が見えてくる。家康絶対視が浸透した江戸期に、武田に圧迫され続けた徳川が信長の支援を受け窮地を脱した歴史的戦争と位置付けられたのだ。徳川支配の正当性を強調するため、鉄砲3千挺で武田軍を壊滅させる信長の軍事的天才ぶりが強調されたのが逆に今日まで至る英雄信長像を確定したのは皮肉だ。2024/02/09
HANA
61
馬蹄を轟かせ攻め寄せる武田軍に対し、馬防柵の内側から鉄砲三段撃ちを浴びせかける織田徳川連合軍。従来長篠合戦というと脳裏に浮かぶのはこのようなイメージである。現在では三段撃ちは虚構であることが明らかにされているが、本書は実際の合戦の推移から時代を経るに従って変化するその内容と、何故それが生まれたのかまでを丹念に追った労作。前半の推移は信長が合戦に消極的だった事や武田が前に出るしかなかった理由等、意外な事実が明らかになり一気読み。後半の時代を経て三段撃ちが成立するまでは、歴史ミステリを読む趣さえしました。2024/06/25
よっち
39
小説や映像で繰り返し描かれる長篠合戦の鮮烈なイメージはどのように形作られてきたのか。伝来する合戦図屏風や様々な関連資料を検証しその実像に迫る1冊。どういう戦いとされてきたのか、長篠合戦像はどう作られてきたのか。武田勝頼、織田信長、徳川家康それぞれの視点から考察するこの戦いの意図。長篠合戦をめぐる記述の変容、当事者・同時代人の証言、江戸時代における長篠合戦の物語化、鳶巣砦攻撃や長篠城籠城、子孫たちの顕彰や合戦屏風図による図像化などを踏まえて改めて考えると、また違った長篠合戦像が見えてきたような気がしました。2024/01/22
寝落ち6段
19
火縄銃の三段撃ち、武田騎馬隊、織田信長、徳川家康!というように心躍る文言が並ぶ長篠合戦。少数が大多数を倒すという逆転劇に心が熱くなる。歴史は、誰かが語り、記録したことの集合体である。事実を事実のまま記録することは難しく、記録を残す者は必ず残す記録を選んでいる。記録者の心情も過分に加味されて、記録してしまう。読み取る側は、そういうバイアスがあることを意識して、精査しなければならない。それを丁寧に行っている本書に好感をもてる。長篠合戦の新しい姿が見えてきて、より興味をそそられた。2024/11/08
MUNEKAZ
16
長篠合戦の伝えられ方に重点を置いた構成。結局のところ合戦の詳細がわかる決定的な史料なんて無いのだから、僅かな一次史料と後世に伝えられた家譜などで、それらしいものを探っていくしかない。同時代に近い史料では、「柵」に注目した部分が多いのに、時代が下るほど「鉄砲」への言及が多くなる。屏風絵などの絵画史料でも、鉄砲に注目したものが出てきて、現代の教科書にも掲載されることで、我々の長篠合戦イメージは固まる。近世の徳川史観を、現代の信長英雄史観が乗り越えた代表例という評価が面白い。出来事は一つでも解釈は多様なのだ。2024/05/13
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