内容説明
電子版は本文中の写真をすべてカラー写真に差し替えて掲載。
一五七五年、織田信長・徳川家康の連合軍と、武田勝頼率いる軍勢が激突した長篠合戦。足軽鉄砲隊の一斉射撃という信長の新戦法により、武田の誇る騎馬隊が潰滅した、画期的な戦いとして知られる。小説や映像で繰り返し描かれるこの鮮烈なイメージは、どのように形作られてきたのか。伝来する合戦図屏風ほか、様々な関連史料を検証し、虚飾に彩られた決戦の実像に迫る。最新研究をふまえて提示する、長篠合戦論の総決算。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
130
長篠合戦について客観性のある史料では鉄砲への言及は少なく、酒井忠次率いる別動隊による長篠城救援作戦が中心だったという。それが江戸時代には参加武将の子孫による先祖顕彰もあって次第に物語化され、戦国の歴史が一変する大会戦とされていった事情が見えてくる。家康絶対視が浸透した江戸期に、武田に圧迫され続けた徳川が信長の支援を受け窮地を脱した歴史的戦争と位置付けられたのだ。徳川支配の正当性を強調するため、鉄砲3千挺で武田軍を壊滅させる信長の軍事的天才ぶりが強調されたのが逆に今日まで至る英雄信長像を確定したのは皮肉だ。2024/02/09
HANA
62
馬蹄を轟かせ攻め寄せる武田軍に対し、馬防柵の内側から鉄砲三段撃ちを浴びせかける織田徳川連合軍。従来長篠合戦というと脳裏に浮かぶのはこのようなイメージである。現在では三段撃ちは虚構であることが明らかにされているが、本書は実際の合戦の推移から時代を経るに従って変化するその内容と、何故それが生まれたのかまでを丹念に追った労作。前半の推移は信長が合戦に消極的だった事や武田が前に出るしかなかった理由等、意外な事実が明らかになり一気読み。後半の時代を経て三段撃ちが成立するまでは、歴史ミステリを読む趣さえしました。2024/06/25
よっち
40
小説や映像で繰り返し描かれる長篠合戦の鮮烈なイメージはどのように形作られてきたのか。伝来する合戦図屏風や様々な関連資料を検証しその実像に迫る1冊。どういう戦いとされてきたのか、長篠合戦像はどう作られてきたのか。武田勝頼、織田信長、徳川家康それぞれの視点から考察するこの戦いの意図。長篠合戦をめぐる記述の変容、当事者・同時代人の証言、江戸時代における長篠合戦の物語化、鳶巣砦攻撃や長篠城籠城、子孫たちの顕彰や合戦屏風図による図像化などを踏まえて改めて考えると、また違った長篠合戦像が見えてきたような気がしました。2024/01/22
bapaksejahtera
23
そもそも貧弱な馬に防具さえ装備しない我が国において騎馬戦闘なる物があった訳はない。長篠合戦における信長が編み出した新戦法の鉄砲三段撃ちにより、武田の騎馬部隊が壊滅したという言説が怪しい限りであるとは、最近の読書からも納得していた。しかしこの説は学校教科書にも今尚掲載されていると読み、喫驚した。本書はこの説がどのような経緯でそのイメージを形成してきたのかを中心に述べる。極めて強力な武田勝頼軍の襲来に危機感を覚えた家康が、本願寺攻めに没頭する信長に手練手管を以て合流を求める等、興味深い説も多く披露されている。2026/04/07
ぽんすけ
22
長篠合戦というと織田徳川連合軍が最強武田軍を鉄砲で粉砕した戦いというイメージだし、事実学生時代もそう習った のだが、最近の研究によると実態は少し違ってきているようで三段弾撃ちも本当は一斉斉射ではなかったらしい。そもそも合戦場が狭くて足場が悪いため一度に大軍を展開できなかったということも初めて知った。そして何より印象的だったのはそれまでおまけの子扱いだった馬防柵の存在である。戦場のあちこちに設置されたこの柵こそ、武田軍の進軍を大いに阻み、詰まった所を狙い撃ちで撃破の流れを作った一番の策だったようだ。2026/01/26
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