内容説明
年齢的にも仕事的にも後がない作家の横尾成吾。書くことを何よりも優先して生きてきたが、友人・弓子の思わぬ告白もあり、今後の自分の身の振り方を考えはじめる。一方、横尾の担当編集・井草菜種は、これまでヒット作を出したことがなく、焦燥感が募るばかり。やがて菜種は、自身同様に停滞中の横尾と本気で向き合い始める――。先の見えない時代に自分を信じて歩む、売れない作家と編集者。二人の人生が優しく迫る、再生の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カブ
36
私の好きな小野寺史宜氏らしい、優しくて悪い人がひとりも登場しないお話です。主人公の横尾さんは間もなく50歳の作家。担当編集者・井草菜種はヒット作を出したことがなく、彼女にもふられて少し焦っています。売れない作家と編集者が良い本を出そうと、そっと頑張る姿を応援したくなります。最後に、えっと驚く展開も面白いです。2024/01/28
さくら★もち
24
売れない作家と担当編集者が1冊の小説を生み出すまでを描いた1年の物語。食べて寝るのと同じくらい日常に「書く」がある横尾と、「読む」がある井草。それぞれ焦りと迷いを感じながら、ひとつひとつの出来事を受け止め、作品に活かそうと努力を重ねるふたり。最初は腐り気味だったのにタッグを組むことで新たな気付きが生まれ、前向きになっていく展開がよかった。章が月ごとに区切られ語り部が交互になっている構成も好き。淡々とした日常にもドラマはある。しんどい時あるけど頑張ってればきっと良いこともある、と信じさせて貰える1冊だった。2024/03/31
すみっちょ
15
終始取り止めのない感じがやっぱり小野寺さんという気がしました。私はとても好きな感じの本です。横尾の誠実なところと、自分を大きく見せることはないけれど、かといって必要以上に卑下することもないところがいいなと思いました。最後にこの本全体の仕掛けがわかって、おぉ〜ってなりました。気分よく読み終われる本でした。2024/02/15
イシカミハサミ
12
編集者は筆者と読者を マッチングする仕事。 小野寺さんが本屋大賞でピックアップされていなければ、 このタイトルの本に手が伸びることはなかったかもしれない。 (小野寺さんを知ったのは「ひと」ではない作品だけれど) 1作品が売れても作者名が売れるわけじゃなかったり、 出版の苦しいところが描かれている。 最近の出来事にからめて、 やっぱり映像化はもっと原作者に還元のある形になってほしいな、と思ったり。2024/03/08
こばゆみ
11
今作も小野寺さんらしさ全開!といった感じで面白かった(^^) 独身中年作家・横尾と、横尾を支える編集者・菜種、それぞれの目線で各章が綴られていく構成。これが最後に活きていくのだな(笑)。横尾の女友達・弓子との関係は女性としてもやもやしたのでした…2024/01/18