内容説明
鉄道は楽しい。 そして、鉄道は哀しい。
「なんにも用事がないけれど、汽車に乗って大阪へ行って来ようと思う」内田百けん
「鉄道の『時刻表』にも、愛読者がいる」宮脇俊三
日本において鉄道紀行というジャンルを示した内田百けん。「なんにも用事がない」のに百けんが汽車で大阪に行っていた頃、普通の人にとって鉄道は、何かの用事を果たすために乗るものでした。それから四半世紀後、異なるアプローチでそのジャンルを背負った宮脇俊三。彼は、時刻表を小説のように愛読していたことを『時刻表2万キロ』で告白しています。鉄道や紀行文学の歴史とともに二人の足跡をたどる1冊です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
agtk
3
内田百間と宮脇俊三の鉄道愛を比較し語る本。百間先生の著作は読んでいるので、大体のエピソードは知っていたが、やはりこの人は筋金入りだなぁと再認識。宮脇俊三はエッセイを一つ二つ読んだだけだったが、興味がわいた。読んでみたい。そして酒井順子さん。お二人の鉄道愛をよくまとめてある。二人への、そして鉄道への愛が伝わる一冊。なんにも用事がないけれど、鉄道に乗って出かけたくなった。2024/04/14
Ayumi Shimojoh
3
なんにも用事がないのに鉄道に乗っていた百間、文明ではなく、文化としての鉄道が立ち現れている。より速くより、より深くその地を感じるために鉄道に乗る、という鉄道趣味を育てた百間と俊三の著作を読み返すことで、レールに身を委ねる幸いを思い返したい2024/02/04
らみゅね
2
近年人気再燃の二人をフィーチャーした作品。 両者の作品を読んでから、読む前に、どちらでも楽しめるようになっている。 著者酒井順子が推す二大巨星。 著者自身が将来中興の祖となって三大巨星と謳われるのではと常々思う。 大好き。2024/01/03
古墳くん
2
内田百閒と宮脇俊三についての鉄道を中心にした評伝を、引退を前にしたSL人吉号の中で読む。染みた…。 宮脇氏の、「ロングシートで(酒を)飲むと住所不定のアル中の趣を呈してくる」に笑ってしまった2024/01/08
かわくん
1
病気療養中に読み終えた。鉄道好きの2人の作家を対比させながらその作品を読み解く。内田百閒と宮脇俊三。2人に直接の接点はない。宮脇が内田の「阿房列車」シリーズを読んだ宮脇が、自らの趣味を題材に作家へと歩み出した。その2人の旅は対照的である。内田は目的無く汽車に乗る。そ宮脇は乗ってみたい路線を探して乗る。当然、その作品は違った色合いになるが、鉄道好きにはどちらの心情も分かる。全国の路線は廃止などで短くなってきたが、2人とは違う視点で作品をつくる人が出てきてほしい。2024/01/25