内容説明
鉄道は楽しい。 そして、鉄道は哀しい。
「なんにも用事がないけれど、汽車に乗って大阪へ行って来ようと思う」内田百けん
「鉄道の『時刻表』にも、愛読者がいる」宮脇俊三
日本において鉄道紀行というジャンルを示した内田百けん。「なんにも用事がない」のに百けんが汽車で大阪に行っていた頃、普通の人にとって鉄道は、何かの用事を果たすために乗るものでした。それから四半世紀後、異なるアプローチでそのジャンルを背負った宮脇俊三。彼は、時刻表を小説のように愛読していたことを『時刻表2万キロ』で告白しています。鉄道や紀行文学の歴史とともに二人の足跡をたどる1冊です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
saga
54
宮脇さんの『終着駅へ行ってきます』は2010年に、百閒先生の『第一阿房列車』を2013年に、それぞれ初めて読み二人のファンになった。内田・宮脇両氏の鉄道紀行文について、これほど愛と尊敬を込めた解説本はないだろう。私も尊敬する二人のことを深く知ることができて良かった。日本の鉄道の黎明期を知る百閒先生。鉄道の隆盛から、赤字ローカル線の廃止や昭和62年の国鉄分割民営化を経て衰退していく姿を経験した宮脇さん。それでも鉄道旅は楽しいし、文化としての鉄道が存続することを願う。2025年最初の読了。2025/01/01
piro
39
内田百閒・宮脇俊三という鉄道紀行文学の両巨頭を通じ「鉄」の世界観を掘り下げる一冊。両者の鉄道への対照的な姿勢と共通する愛情がよくわかる興味深い内容でした。変化を好まない百閒と、変化を受け入れ味わう宮脇。稚気溢れる所は変わり無いものの、百閒の方がより子供染みていると言うか、純粋と言うか…。「鉄道は移動するために乗るものではない。景色を見て、様々な音を聞き…五感の全てを刺激される乗り物。」この一節にはとても共感します。この愉しみを知っていた二人だからこそ、鉄道紀行を文化にまで昇華させることができたのでしょう。2024/07/15
ひでお
6
内田百閒と宮脇俊三を巡る作品論でした。二人の作品はたくさん読みましたが、二人の生きた時代が大きく重なっていたことは、本書を読むまで気付きませんでした。 二人とも戦前の鉄道を知り、戦後変わりゆく鉄道を見ていたのですね。本書のタイトルにあるように、常に変わりゆく鉄道に時代の移り変わりを実感します。いままた、さらに変わりつつあり各地の廃線が続いています。郷愁だけではない、鉄道紀行を書く作家が現れることを期待したいです2025/10/05
きあ
5
私が大好きな2人の作家をこれまた大好きな作家さんが解体新書してくれる。なんと神がかった書籍でしょう。文明と文化。わたしも目的もなくただ電車に乗りたいがために出かける乗り鉄なのでこの本でふむふむなるほど~がいっぱいでした。内田百閒・宮脇俊三の後に続くのは酒井順子であったみたいだ。これからも鉄道関係の本期待して待ってます!2021/12/18
agtk
5
内田百間と宮脇俊三の鉄道愛を比較し語る本。百間先生の著作は読んでいるので、大体のエピソードは知っていたが、やはりこの人は筋金入りだなぁと再認識。宮脇俊三はエッセイを一つ二つ読んだだけだったが、興味がわいた。読んでみたい。そして酒井順子さん。お二人の鉄道愛をよくまとめてある。二人への、そして鉄道への愛が伝わる一冊。なんにも用事がないけれど、鉄道に乗って出かけたくなった。2024/04/14
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